29話 足切り
どうも、ヒカリちゃん順調に成長しており現在六歳!
気付けばコウはハイハイしており、自分で立とうと頑張っていたり、寝たきりだったお母様はハキハキ働いていたり。
コウのいる世界が日常になった今日この頃ーー
「お父様、お母様、私ピアノ頑張る!」
僕はやる気に満ちていた。
「どうしたの急に?」
お母様は不思議そうに首を傾げ僕の頭を撫でる。
ことは一週間前、アリアちゃんの家に遊びに行った日のことーー
「ねぇヒカリちゃん」
「なぁに?」
「私、音楽教育はピアノ選んだのだけど、ヒカリちゃんはどうするの?」
「ヒカリもアリアちゃんと一緒のにする!」
「やったぁ! じゃあ私もヒカリちゃんに教えてあげる!」
「ん! お父様にピアノやりたいっていってくる!」
そんなやり取りをして、僕はアリアちゃんとピアノを頑張るお約束をしたのだ。
「なるほど、ヒカリもアリアちゃんも勉強熱心で偉いね?」
「えへへ!」
全部の原動力がアリアちゃんなのは置いておくとして、アリアちゃんのおかげで簡単にやる気が湧いてくるのは有り難い。
「ミューゼ、教育者を見繕ってくれるかい?」
「承知いたしました」
一つ礼をして、お父様の棚から資料を漁り出す。
「そういえば、レオン王子の婚約者候補の足切りが始まってね」
「足切り?」
何度か聞いたことのある単語だが、そう言えばいつからかそんなことがあった気がする。
(どうせ足切りだ)
他の人がどれだけ関わっているかわからないが、あれだけ関わりが少ないんだ。足切りなら最有力だろう。
「今レオン王子の婚約者候補は十名まで絞られてね、ヒカリもそのうちの一人なんだ」
「そう……なのですね!?」
聞き間違い? なんか残ってるんですが? もしかして頻繁に会ってる方?
少しおどおどしていたら、お父様の咳払いが響く。
「少し大事な話だ。しっかり聞いておくれ?」
「はい」
意識して背筋を伸ばし、今自分が取れる一番綺麗な姿勢をとる。
「ヒカリはレオン王子の婚約者候補だけど、他の人よりレオン王子とお茶会をしていないんだ」
「はい!」
「それでね、レオン王子が唯一、家まで来てくれた相手がヒカリなんだ」
「はい?」
それって、本気で婚約者候補を狙ってる、本気で恋してる人からすると、クソほど気に食わないんじゃ……。
「お勉強も大事だけど、もう少しレオン王子にも会わないといけないよ?」
「は……はひぃ……」
ヒカリちゃん、もしかして敵多い?
「あ、アリアちゃんは?」
「アリアちゃんは切られたよ。ユアン第二王子の婚約者候補だから、レオン王子まで気が回せなくて」
「よかった……」
これでアリアちゃんにまで嫌われたらもう生きていけない。
*
「はぇ〜、ヒカリ様大変そうだね?」
「ルカ、言葉使い!」
「ヒカリ様大変そうですね?」
わざわざ言い直さなくてもいいとは思ったが、体裁上必要なのだろう。
つくづく貴族って面倒くさい。
ここの書斎並みにお堅い雰囲気。もっと柔らかくならないのかな?
「ナツはそう言う相手いないの?」
「うーん、私はいないかな?」
「そう……」
そもそも僕は六歳、ナツとルカは八歳なのに、恋愛がどうのって歳じゃない。
「ヒカリ様、婚約者候補という言葉を気にし過ぎかもしれませんね?」
「どういうこと?」
隣で座っていたユースがクスリと笑って続ける。
「簡単に言えば、レオン第三王子の虫除けなんです。将来結婚するかは置いておいて、他国の貴族に言い寄られないための!」
「なるほど!」
「どういうこと?」
「わかんない」
ナツとルカはハテナを浮かべているが、僕はすんなり理解出来た。
確かに公爵、侯爵、伯爵は優秀な虫除けだ。
そう考えると、婚約者候補って言葉が軽く感じる。
「レオン第三王子と関わる必要はありますが、身構えすぎなくていいと思いますよ?」
「ありがとうユース!」
まだ自分のショタコン疑惑は消えないが、変に重苦しく感じていたものからは解放された。
それはそれとして、現状危うい立場なのは変わりないけどね?




