27話 新しい家族
それから数日、勉強しながら日々を過ごしていたがーー
「ううっ!」
「フィリア大丈夫だ! 僕がついてるよ!」
「フィリア様!」
ついに出産の日が来ました。
しっかり栄養を摂り続け、ちゃんと医師を雇い、今までのソワソワした雰囲気から一転して緊張が走る屋敷。
部屋には夫のオズワルド、専属メイドのシャル、そして雇った医師が籠り、必死に声をかけて出産のお手伝い。
え、ヒカリちゃんはどこにいるかって?
そんなのーー
「おかぁさまぁぁ!」
「ヒカリちゃん大丈夫よ、大丈夫だから」
部屋の外でボロ泣きして中にいられなかったよね……。
出産を聞きつけ、何故か大急ぎで来てくれたセルライト公爵の婦人、メイ様にあやされ、時間の限り泣いています。
「ヒカリちゃん、フィリアさん今凄い頑張ってるから、沢山祈っててあげて」
「うわああぁぁん!!」
マジでメイ様いなかったら心細くて終わってたよね。
アリアちゃんも来たかったらしいけど、メイ様が出産した子供のお世話をお願いされ、メロード様とお留守番しているそうだ。
「ヒカリちゃん、大丈夫!」
「わあああぁぁぁん!! おかあさまぁぁ!!」
そんな風にボロ泣きすること数分。
扉の奥から赤子の泣き声が聞こえだし、お母様の痛みを訴える声が止む。
その瞬間、扉が『バタン』と開き、お父様が半泣き状態で現れた。
「ヒカリ」
「おとうしゃま……!」
「男の子だ」
「おかぁしゃまは?」
「大丈夫だ!」
「うん……うわぁあぁああぁぁん!!」
そして再び泣き出した。
「メイさん、ヒカリを見ててくれてありがとうございます」
「いいのよ。それよりご出産おめでとう! 私はいいからヒカリちゃんに見せてあげて?」
「ありがとうございます。ヒカリ、赤ちゃん見に行こう」
「んん……」
お父様に抱かれ、必死に涙を拭ってぼやけた視界を戻す。
中には疲弊したお母様と、お母様の汗を拭き取る医師、そしてーー
「ヒカリ、新しい家族よ?」
必死に笑みを浮かべる母の隣で泣いている、小さな赤ちゃん。
「んん! おかあしゃま……すごい!」
「ふふっ!」
「三人で名前決めないとな?」
「んん……!」
こうして無事にお母様は出産を終え、急遽駆けつけてくれたメイ様との別れを告げ、屋敷全体が疲れた今日をなんとか乗り切った。
*
「さて、名前どうしようかな」
翌日、家族全員と、シャルとミューゼがお母様が横になっている部屋に集まり、まるで家族会議みたいになっている。
「生まれる前に決めてるものかと思っていましたが……」
「旦那様が皆様と決めたいとおっしゃったので」
「生まれる前に集めるべきかと……」
「ホッホッホ!」
なんかシャルとミューゼが漫才をしているけど一旦置いておくとして。
「折角生まれてくる子ですもの、流石に屋敷全員ってのは無理だけど、代表者たちで決めたいじゃない?」
寝たきりのお母様がクスリと笑う。
隣で寝ている赤ちゃんはすやすや眠っており、ほっぺをつつきたくなる可愛さをしている。
「あなた、何か案はある?」
「僕とフィリアの名前を合わせてーー」
「却下」
「まだ何も言ってないよ!?」
「あなたねぇ! ねぇヒカリ? 子供の名前がフィリワルドっていいと思う?」
「え……いや……」
「ヒカリ!?」
何そのクソ酷い名前。キラキラネームの方がマシに思えてくるんだけど……。
「良かったわね、ヒカリの名前がフィリワルドにならなくて!」
「……ん?」
なんか……聞かなかったことにしよう。
「シャルとミューゼは何か案ないの?」
「私は…………ありません」
「そう」
凄い必死に考えた間はあったが、絞り出せなかったようだ。
「ミューぜは?」
「私は妻にセンスがないと言われておりまして」
「そう……」
まぁ理由はどうあれ、伯爵の子供に名前を託すのは荷が重いよな。
「ヒカリはどう?」
「わたしは……」
僕は小さな脳を必死に回転させる。
「お母様、どうして私の名前は『ヒカリ』なの?」
「輝いてほしいからよ?」
「かがやく……」
そんな綺麗な名前を……。
前世で早く死んだ転生者には勿体無い名前だ。
(っていかん、自棄るな!)
急に久々に前世を思い出してナイーブになったが、そんな気持ちじゃいい名前はつけられない。
「かがやく……」
僕は令嬢もののラノベは殆ど読んだことないし、貴族関係がどうとかも知らない。
そもそもアリアちゃんしか知らないから、もしかしたら悪い貴族が沢山いるかもしれない。
そんな中でも、僕には輝いていて欲しかったのだろう。
だから、この子にもきっと、そんな名前がよく似合う。
「……輝」
「ヒカリ?」
「コウ・ウィンガートがいい!」
「いいじゃんヒカリ!」
お父様は僕を抱き上げ、赤ちゃんの顔を見せる。
「決まりね?」
お母様は赤ちゃんの頭を優しく撫でて微笑む。
「今日からあなたは『コウ・ウィンガート』だよ? おねえちゃん、大切にするからね?」
今日、ウィンガート伯爵家に、新しい家族の名前が刻まれた。
これからは四人家族で、異世界生活頑張ります!




