25話 楽しいで埋め尽くした時間
カフェで過ごす時間は想像以上に楽しかった。
レオン王子が楽しそうに話す姿は見てて面白いし、アリアちゃん以外にお勉強の話が出来る相手も少ない。
それに、こんな風に遊ぶのは、ナツやルカの時以来。
気付かぬ間に鬱憤が溜まっていたのかもしれない。
「そろそろでる?」
「うん」
余程楽しかったのか、少し名残惜しそうな返事をするレオン王子。
でも、あまりのんびりし過ぎて、護衛の人を待たせ過ぎるの申し訳ない。
「ねぇ、ふたりにおみやげかわない?」
「ふたり、ゲンとコメンに?」
「うん!」
「いいとおもう!」
レオン王子も賛成してくれ、店員さんにおすすめを聞きながら、ケーキを二つ購入。
「ありがとうございました!」
優しい店員さん二人に見送られ、出て数秒で護衛と合流。
(仕事人だ! こんな直ぐ違和感なく合流できるのか!?)
「ふたりとも、これ!」
「どうぞ!」
心の中で仕事ぶりに歓喜しつつ、僕とレオン王子で、二人にケーキの入った箱を渡す。
「おれいです!」
「つきあってくれてありがとう! ヒカリちゃんが渡そうって言ってくれて、僕もいいなっておもって」
レオン王子、凄い照れて言い訳くさくなっている。
「う、受け取れません!?」
「ゲン、レオン王子の感謝を受け取れないと?」
「コメンさん、今公務中ーー」
「感謝を受け取るのも、公務の一つですよ?」
老年、コメンさんは青年、ゲンを優しく諭し、僕のケーキを受け取る。
「有り難く頂戴いたします、ヒカリ様」
「あいっ!」
シワまみれのクシャけた笑みは、不思議ととても爽やかに見えた。
「で、では、ありがとうございます、レオン王子」
ゲンさんは若干おどおどしながらもケーキをしっかり受け取り、なんだかんだ喜びを噛み締めていた。
「じゃあ、かえろうか」
「あいっ! いっちょにおこられにいきまちょ!」
こうして僕とレオン王子は「おこられるのこわいね?」なんて話をしながら王城へ戻った。
そして現在応接室。
「ほう?」
「「ひっ!?」」
陛下に今日の、二人で王城のを脱走したことを全て話し、怖いくらいの顰めっ面を拝んでいます。
「どれだけ危ないことをしたのかわかっているのか?」
「「ごねんなしゃい……」」
もうね、怖くて縮こまるしかないよね。
「何事もなかったから良かったけど、誘拐される可能性もあったんだよ?」
「「はい……」」
そんなしょぼくれている僕とレオン王子を見たコメンさんが、くすくすと笑っている。
何が面白いのかと思ったらーー
「懐かしいですね。陛下も幼い頃は何度もここを抜け出していましたね?」
「ちょっとコメン、今その事話さなくてもいいんじゃない?」
「申し訳ない、つい懐かしい気持ちになってしまいまして」
どうやらレオン王子を幼い陛下と照らし合わせていたらしい。
「あの頃はしょっちゅう誘拐未遂されてましたよね?」
「コメンさん!」
「「……」」
ついにはさん付けで呼び出したし……ってか誘拐未遂されてたの? 何度も?
「私と同じような想いをレオンにさせる必要はないのだよ。ただーー」
僕とレオン王子の顔を交互に見て、ため息を一つ。
「少し、過保護だったかな?」
そして、何故か陛下が反省しだした。
「内緒で王城を抜け出した以上、しっかり叱らないと行けないけど、ヒカリちゃん」
「ひゃい……」
陛下は僕の頭を撫でて、気の抜けた笑みを浮かべる。
「レオンを連れ出してくれてありがとう。こんなことした婚約者候補は、私の妻以来だよ」
「そうなん……でしゅか?」
「そうだよ? これからもレオンをよろしくね?」
「あいっ!」
何をよろしくすればいいのかあまりよくわからないが、数少ない友達の一人だ。大切にしよう。
気付けば僕は、ここに来る前の憂鬱感は一切なくなり、楽しかった気持ちで満たされていた。
「じゃあレオン、そろそろ行こう。二人もお疲れ様、報酬は弾ませるよ」
「ありがとうございます陛下」
「あ、ありがとうございます!」
レオン王子は陛下と手を繋ぎ、護衛二人は背筋を正す。
「じゃあ、またね、ヒカリちゃん!」
「またね、レオンしゃま!」
無邪気に手を振るレオン王子はどうしても可愛くも格好良くも見えてしまった。
そして帰りの馬車内。
僕は王城を抜け出したことが何故かシャルにバレており、馬車内でこっ酷く叱られ、家で両親に超心配された。
ヒカリちゃん、外出するときは絶対に行き先を伝えようと心に決めました……。




