227話 恐ろしきウィンガート家
三人で部活動の教室に向かうと、珍しいことに一年生含めて全員揃っていた。
「お、ようやく来たね?」
さっきまで一緒にいたはずのユウ様もいつのまにかここに来ており、いかにもこれから会議をする雰囲気だ。
「それじゃあ全員揃ったし、副部長お願い!」
「………………お、俺?!」
そしてフウさんに全部丸投げした。
第一王女、中々図太い性格していらっしゃる。
「ごめんねヒカリちゃんとリョウくん! 二人にも今日会議するから来てねって伝えようと思ったけど、ヴィカの件見てたら忘れちゃった!」
「ユウ様……」
なんでユウ様がここに? とは思ったけど、それが理由だったのか。
そして本来の目的を忘れて帰ったと。
第一王女様、意外とガサツ?
「まぁユウ様への注意は一旦置いておくとして、部活動停止期間までに何か一つ課題を設けようかなって思うんだけど、一年生は触りたい楽器とかあったりする?」
「…………ギターって楽器やってみたいです」
「僕は……ベースで合ってますか? ギターと何が違うんだろう」
フウさんの質問に、全員で見合わせながらもポツポツとやりたい楽器があがっていく。
そんな中、リョウさんの一言が、不覚にも流れを変えてしまう。
「俺、もう一回ヒカリちゃんの『新・ダンス』みたいな?」
「は!? なんで!?」
「だって、凄く可愛かったから。レオン様も見たいよね?」
聞き間違いか? 今レオンに話を振った? そんなの肯定される未来しか見えないが?
「そうだね。個人的にも見たいし『新・ダンス部』と繋がり続けられるから、良いんじゃないかな? ただーー」
「ただ?」
「ヒカリ一人は流石に可哀想かな」
嫌がってるから辞めようと言わないあたり、ちゃんと見たいんだな……。
まぁ一人じゃないなら良いけど。
「それじゃあヒカリちゃんは決まりとして、あと誰がやるかは…………ヒカリちゃんが決めて良いわよ?」
「モモさん!」
「私ぃ!?」
思い切り目を見開いたモモさんはそれなりに嫌そうな顔をしている。
でも逃がさないよ?
「一緒にやろ?」
「うっ……!」
ヒカリちゃんの可愛さを自覚している僕は、上目遣いで軽く首を傾げ、甘い声で一言。
「…………全部終わった後妹になってくれるならいいよ?」
「…………………………まぁそれくらいなら」
妹になるってのは良くわからないけど、とりあえず犠牲者が増えた事を喜ぼう。
「なら私もやろうかな?」
「あら、フィアが自分から動くなんて珍しいわね?」
「まぁ、あまりヒカリちゃんと話せてないから、そのためなんですけどね?」
フィアさんは僕を見てウインクを一つ。
この人、良い人だ。
そもそも自己紹介した日に沢山関わろうとしたけど、今日の今日まで関われてない人の一人だし。
僕も良い機会だと思っておこう。
「他には…………いなさそうだし、一先ず三人は決定として、後の人も今のうちに決めちゃおうか!」
「「はーい!」」
非常に部活動っぽい空気だ。前世から憧れていたことが出来ると、こんなにも胸一杯になるのか。
まぁダンスは未だに嫌だけど。
そんなこんなで、各々部活動に励む理由を作り、いつも通りの部活動が始まる。
のだがーー
「それじゃあ、モモとフィアとヒカリちゃんは『新・ダンス部』まで行ってらっしゃい!」
「「え?」」
「なんでですか?」
「なんでもなにも『新・ダンス部』と一緒にやらないとなにも始まらないじゃない?」
「「確かに……」」
三人は『新・音楽部』に居場所がなく、仕方がないので揃って部室を後にする。
「『新・ダンス部』かぁ……。知り合いいないからちょっと緊張するなぁ……」
部室を出て早々、フィアさんは歩きながら弱音を溢す。
「私もアヤメさんと会ったことはあるけど、公爵だからちょっと緊張しちゃうね? ヒカリちゃんは?」
「私? 私は……」
モモさんも少しソワソワしており、良く知らない公爵相手への緊張はそれなりにあるらしい。
そういう時、僕の存在はかなりデカい。
「私の弟が、アヤメさんの妹と婚約してるから、あんまり緊張しないかな?」
「…………ん? 婚約?」
「はい! オハナ・クリアライト公爵令嬢です! だからあんまり緊張しないかな?」
「えぇ……ウィンガート家って、凄いね……」
そしてわかりやすくドン引きするフィアさんを見たモモさんが、笑いを堪えながら楽しそうに歩いている。
なんというか、ヴィカさんの騒ぎが嘘みたいに平和だ。




