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226話 別世界の人気者


「随分と荒れてるね?」

「え……ユ、ユウ様?」

「こんにちは?」

「ユウ様まで……どうしてここに?」


 未だ野次馬が去らない中、二人の王女様が人を縫って来た。


「あれだけ人混みが出来れば誰だって気になるわよ?」

「…………」


 ユウ様は苦笑いしながら、何故か僕をギュッと抱きしめる。本当に何故?



「全く、ヒカリちゃんも厄介な人に目を付けられたわね?」

「全然関わった記憶のない人なんだけど……」

「あ、そうなのね? まぁ婚約者候補ってだけで恨みを買われることも………………ヒカリちゃんが特殊ね?」

「えぇ……」


 そんな特殊要らない。


「それで、ヴィカさんって誰なんですか?」


 一番重要なのはそこだ。あれだけ癇癪起こす人がまともなわけない。どうにか回避する手段が欲しい。



「彼女は『ヴィカ・ハント』。侯爵の一人なんだが……」

「だが?」


 見事に口をぱくぱくさせて言い淀んでいる。


「まぁ簡単に言うと、溺愛されて育った我儘貴族なんだ」

「うわぁ……」


 レオンの代わりにリョウさんが続きを答える。


「男きょうだいしかいないから、ヴィカの為ならなんでもする家族なんだよ」

「よくそんなこと知ってるね?」

「まぁな。厄介な貴族は自然と情報が来るんだよ」

「…………」


 何処から情報来てんだよ。

 って思ったけど、シャイナちゃんもレオンも知ってそうな顔して頷いている。


「ただ我儘なだけなら別に良いんだけど、意外と人望もあるんだよな、不思議なことに」


 多分そこが一番厄介な点だろう。一人ならただの癇癪だけど、人が集まれば悲劇のヒロインに持ち上げられる。


 それこそさっきみたいに。



「ヒカリ、何かあったら直ぐ言うんだよ? セイナと違って、ヴィカは容赦ないから」

「…………」


 それって、監禁事件を起こしたセイナさんよりやばいんですか!?



*



「なんで侯爵ってこんなにもヤバい人しかいないの……」


 部活動へ向かいながら、トボトボと愚痴が溢れていく。


「多分だけど、ヒカリが婚約者候補に残ってるからだろうね」

「うっ……」


 確かセイナさんも『なんで伯爵のあなたが!』って言ってたし、自分より身分の低い人が王族の隣にいるのが気に食わないのだろう。



「良いんだよレオン様。いつでもヒカリちゃんを婚約者候補から外して」

「リョウ君、残念だけどそのつもりはないよ。僕もヒカリもね?」

「残念ね!」


 仮に婚約者候補から外れても、絶対にリョウさんは選ばない。

 というかその後の行き先はカルラ君が予約済みだ。


「まぁせいぜい守ると良いよ。俺の知り合いからもヒカリちゃん紹介してって結構言われてるし」

「えぇ……何それ……」


 伯爵ってそこまで魅力的でもないのに、何故そんなことに?


「凄い人気だよね? やっぱり王族の婚約者候補って魅力的だよな?」

「あ、そこなのね?」

「そこ?」

「なんで伯爵なのに紹介してくれって言われてるのかなって」


 確かに『王族の婚約者候補だった人』って文言を聞くと、それなりに魅力的に感じる。


「…………ヒカリちゃん、何もわかってないね」

「そうだね、何もわかってない」

「ん?」


 どうやら僕がまだ気づいていない理由もあるらしく、レオンとリョウさんが揃って首を振っている。


「男目線だと、可愛い子と話せると癒されるからね」

「…………」


 やべぇ、それは凄い良くわかる! 可愛い子と話してるとマジで元気出るんだよ!


 久々に元男の心が疼いたわ!


 そしてどうやらヒカリちゃん、ちゃんと男子から人気の容姿をしているらしい。


 いやまぁ我ながら可愛い容姿してるもん。

 人気も出るよね?



「ねぇレオン」

「ん?」

「レオンって私と話すと癒される?」

「それは凄く」

「えへへ、よかった!」


 素直に嬉しいのでそのままニヤける。


「マジでこういうところだよな」


 そして何故かリョウさんは右手で頭を抱えていた。

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