221話 人気者
あれから時間は過ぎ、現在部活動開始時刻。
「あれまぁ! 随分と……!」
「何この子! 超可愛いんだけど!」
レオンと共に部活動の教室へ行くと、案の定皆んなの視線は僕の髪へ移り、一気に人が集まった。
特にモモさんは釘付けどころか今すぐ抱きつきそうなほどウズウズしている。
「いいなぁ! 私もこのくらい可愛かったらオシャレ楽しめそうなんだけどなぁ?」
「モモさんも可愛いよ?」
「…………ちょっとヒカリちゃん妹にしてきていい?」
「えぇ……」
妹にするって何? 養子縁組でも組むつもり?
「モモって一人っ子だっけ?」
「ううん? お姉様がいるけど、歳が離れてるからきょうだいって感じがしないのよね?」
「その割にはしっかりしてるな? 俺の妹ももう少ししっかりしてくれたらなぁ……」
フウさんの切実な声が聞こえてしまった。
まぁ妹のミカ・オウレンがあれじゃあ…………ね。
「フウさん。ミカさんって……その…………婚約者さんいないの?」
「残念ながらな。レオン様の執着が酷すぎて、今までの婚約も全部無効になってる」
「あぁ……」
自分で聞いておいてなんだけど、凄く気まずい。
「まぁそれは良いとして、そろそろ学力テストも近いし、部活動停止期間前に何かしたいよな?」
「……………………ん?」
「ヒカリちゃん?」
「えっと……ん?」
学力テスト? なんですかそれは?
「学力テストが近い! つまり大きな休みが近い! なんて素晴らしいのでしょう!」
大きな休み? 何それ知らない!
「ヒカリ凄い固まってるけど、大丈夫?」
「全然大丈夫じゃない! 勉強しないと!」
普通に考えてテストも存在するはずだけど、あまりに楽しい学園生活に浮かれすぎて、その存在を忘れてた。
「ヒカリちゃんってあんまり頭良くなさそうだもんね? 入学テストはどうだったの?」
「学年一位」
「そっかぁ……学年一位かぁ…………」
「モモさんは?」
「お願いだから聞かないで……」
モモさんが凄く遠い目してる。
「因みに、シャイナも学年一位で、スティアは学年二位だ」
「レオン様の婚約者候補凄いな……。レオン様も学年一位だろ? どうなってんだ……?」
フウさんが本気でドン引きしている。
なんというか……非常に優秀な世代なんです。
*
部活動が終わり、疎に人が帰って行く中、僕は同じ部活動の一年の、主に男子に囲まれていた。
理由は明白。
「改めて見ると可愛い髪型だね?」
「あはは、ありがとう?」
「少しメイクもしてるの?」
「少しだけ……ね?」
「明日も髪型変えてくるの?」
「ヒカリちゃんなら色々な姿見てみたいよね?」
「あはは……」
この髪型が、今日一日で凄く人を呼び寄せた。
「ヒカリ、そろそろ行こ?」
「う、うん! また明日ね!」
あまりの人混みから逃げるように教室をさり、ようやく落ち着いた空気が戻ってきた。
「凄い人気だったね」
「あはは……嬉しいけどちょっと疲れた……」
とは言え気分自体は悪くないと思えたし、年に一度くらいなら、こういうのも良いかもしれない。
でも暫くはマジでいい。
そこからレオンにエスコートされるようにゆっくり階段を下り、ようやく一階に辿り着いた時。
「あっ!」
「どうした?」
「あと一人!」
「ん?」
あと一人、この可愛いヒカリちゃんを魅せていない人がいた。
いつも地下室に篭っている、同じ前世を持っている引きこもり君。
「ちょっとだけ、寄り道してもいい?」
「いいけど、どこに行くの?」
「地下室に、会いたい人がいるから挨拶しに行こうかなって!」
「地下室に?」
レオンは頭にハテナを浮かべているが、取り敢えず承諾はしてくれた。
そんなわけで少し歩いた先にある地下室へ向かうため方向転換して歩き出そうとすると、丁度目的の扉から一人の男性が出てきた。
「あ、タロウさん!」
「ん? ヒカリさん……と…………」
簡単に挨拶したと思えば、今度はレオンを見つめて固まった。
「そうか。君がヒカリの言っていた「タロウ」さんか」
「レオン……第三王子……様……」
そしてタロウさんは、居心地が悪そうに目を背ける。




