21話 両親の心配は
「ほんじつは、おこしくださり、ありがとうございました!」
気付けば帰る時間になっており、ウィンガート一家はアリアちゃんの礼に送り出される。
「アリアちゃん! またくるね!」
「うん! あたしもいく!」
まだ正式に約束は取り付いていないが、アリアちゃんならきっと近いうちに会える。
「ハンナ、お客様を馬車まで送りなさい。決して粗相のないように」
「承知いたしました。では、ウィンガート伯爵様、私が案内させていただきます」
「よろしく頼む。ではメロードさん、またいずれ」
「また」
僕たちは部屋を後にし、セルライト公爵のメイド、ハンナに案内されて馬車の前まで到着。
「改めて、本日はありがとうございました。アリア様がこんなに笑うようになったのは、間違いなく伯爵様方のおかげです」
メイドとは思えない非常に整った礼を一つ。
「こちらこそ、公爵様方に感謝しております。ヒカリも活き活きしてますし」
お父様は僕を抱え、嬉しそうに微笑む。
「では、私たちはこれで」
「はい。道中お気をつけてください」
再び一礼をし、馬車が動き出す。
「ヒカリ、楽しかったかい?」
「うん! たのしかった!」
僕は未だ治まらない興奮を全面に出してそう答える。
「アリアちゃん、おじぎじょうずだった! すくじょきょーいくすごい!」
もう淑女教育に対する嫌悪感は全くない。アリアちゃんがやってるなら、僕も今直ぐ習いたい。
「そうね? アリアちゃん、レオン王子の元にも通ってて、凄い真面目よね?」
「王子さまのところにいくとマジメなの?」
あまりにも接点のないところから名前が出てきたから思わず聞き返す。
「そうよ? ヒカリもアリアちゃんも婚約者候補だから、会いに行ってるアリアちゃんは真面目よ?」
「そうなんだ! アリアちゃんすごい!」
「……それだけ?」
「うん!」
僕はよくわからなかった話題を切り上げ、馬車の外を見渡す。
「おとぉしゃま、そとのひとのふく」
「ん?」
僕が指差しているのは、恐らく学園の生徒だろう。
「帰宅の時間と被ったんだね? どうかしたのか?」
「おようふくかわいい!」
「ふふっ、あんな服若いうちしか着られないわよね?」
そう、着ていた服がまさかの学ランとセーラー服。
ゴリゴリの、日本の中高生が着るようなセーラー服だ。
これはポーン王妃かロンド陛下やってますね。
よく見れば、平民も服の自由度が高い。
長ズボンや短パンの男性、ロングスカートやミニスカートの女性。
なんか、風景に溶け込んでない感凄いけど、きっと見慣れていないせいだろう。
何せこれまでドレス生活だったし。
「公式の場でドレス以外の服は着れないけど、ヒカリも身分隠して外出る時に着るかもしれないね?」
「懐かしいわね?」
「……」
身分隠して外出ってそれ、子供の前で言っていいの?
「話を戻すけど、ヒカリはレオン王子に会いたいとは思わない?」
「にゃいっ!」
全くありません! 元男子高校生が男児にときめいたんだぞ? 怖くて会えねぇよ! 尊厳大事!
「ヒカリ、レオン王子の誕生日に気絶したのを引き摺ってるのかい?」
「うん……」
内容は違うけど、その出来事の延長だから否定も出来ない。
「お互い謝っただろう? これ以上会いに行かないと、レオン王子が可哀想だと思うな?」
「……」
お父様は、何か他にも言いたそうにしているが、表面的な事情だけで言葉を済ませている。
「わかりまちた」
(これ以上王子に会わないのは、ダメかもな……)
明らかにお父様とお母様の心配の仕方が異常だ。
大人たち四人で話した内容など全く知らないヒカリちゃんは、渋々ながらも頷くしかなかった。
「本当に無理ならしょうがないけど、ちゃんと王城に行ってお話するといいよ」
「あい」
アリアちゃんと遊んだ帰りだと言うのに、少し気が重く感じた。
そしてーー
「すーっ……すーっ……」
まぶたも重かったようで、気付けば僕は馬車で眠っていた。




