217話 氷の王子?
「おはようレオン! 愛しの人の可愛い姿を見て硬直するだけ?」
「はっ!」
トワ様の圧にも似た笑顔を受けて、思わず我を取り戻す。
「おはようヒカリ。どうしてここに?」
「えっと、二日間も休んでたから?」
「あぁ……ごめん」
少ししゅんとした様子で謝る姿は、不覚にも可愛いと思えてしまった。
「ヒカリちゃん知ってる? レオンってば、ヒカリちゃんとセルライト公爵の子と遊ぶのに嫉妬して、それで寝付けなくて体調崩したのよ?」
「お母様!?」
「えぇ……」
ちょっと……いくら何でもヒカリちゃんのこと好きすぎるでしょ。
というかカルラ君に嫉妬したのか。三歳も歳下の男の子やぞ?
「だって、カルラ・セルライト公爵子息でしょ? あの子、十歳なのに婚約者いないし、頭も良くて交友関係広いし、王族並みに人気なんだよ」
「カルラ君凄っ!?」
いや公爵だから絶対的に狙われる理由はあるだろうけど、王族とタメ張るほど人気なのは凄すぎる。
「『ずっと想ってる人がいるから婚約者は要らない』って聞いてたけど、まさかその相手がヒカリちゃんとはね?」
「あはは……」
トワ様が凄く楽しそうな顔をしているけど、自分の息子の恋の応援はどうなるのだろう。
「ねぇヒカリ」
「ん?」
「言うタイミング逃したから今言わせて」
「うん」
一体何だろうかと首を傾げ、一呼吸置いているレオンを見つめる。
「その髪型、凄く似合ってる」
「あ、ありがとう」
「少しメイクもしているだね。学園がメイク禁止だったらこんな綺麗な姿も見られなかった」
「も、もう大丈夫! これ以上褒めなくて大丈夫!」
朝から糖分過多だ。勘弁して欲しい。
「全く、レオンちょっとヒカリちゃん好きすぎよ?」
「だって、二日も会ってなかったし」
「『二日だけ』よ? 学園始まって歯止めが効かなくなったわね?」
トワ様はなんか微笑ましいものを見ている風だけど、僕からしたら中々たまったものじゃない。
「知ってるヒカリちゃん? レオンってば、学園では『氷の王子』なんて呼ばれているらしいわよ?」
「お母様?!」
「えぇ……」
このクソデレデレ男が氷の王子?
「なんか……何処かで聞いたことあるフレーズのような」
「まぁ王族のあだ名だし、誰だって聞いたことあるわよね」
「あはは……」
いや僕からしたら圧倒的に前世のイメージが近い。
転生する時期が違ったら、これから攻略スタートとかになっていたのだろうか。
まぁ令嬢ものなんてロクに読んでこなかったから知らないけど。
「…………」
なんか、最近よく前世のことを思い出す。学園に入学したからだろうか。
「どうしたのヒカリ」
「うーん、まだ登校まで時間あるし、朝食頂いたら何しようかなって」
「そうだね」
勉強というものがあるが、わざわざここまで来て勉強をするのもな……。
そんなことを思っていたら再び足音と共に扉が開く。
「おはようございますお母様…………と、え、ヒカリちゃん? なんだその可愛い髪型は!」
「あ、ユアン様、お邪魔してます!」
「すげぇ! どうなってんだ? アリアも同じ髪型してくれないかなぁ……!」
「ちょっと!」
僕の髪を見た途端、好奇心旺盛な少年のように四方八方動き回って観察してくる。
「ちょっとユアン、ヒカリちゃんが怯えているじゃない!」
「あぁごめんごめん!」
「もぅ!」
思わず身を固めてしまったが、トワ様の一言で直ぐ退いてくれた。
「ユアンお兄様、後でアリアさんに後で今のこと言いますね?」
「レオン頼む! それはやめてくれ!」
そして相変わらずアリアちゃんには弱いユアン様である。
「アリアちゃんに言いつけてやる!」
「ヒカリちゃん、今度アリアとダブルデートしないかい? 意地でも時間作るよ?」
「乗った! 言いつけはやめておきます!」
「危ねぇ……」
そして僕も相変わらずアリアちゃんには弱い。
「ということだレオン!」
「お兄様って世渡り上手ですね」
「十三歳が何を言ってやがる!」
まぁアリアちゃんへのチクりがなくなり、上手いこと全員が美味しい思いをすることになったし、口が達者なのは確かである。




