214話 本気の恋
「あれ! オハナちゃんいらっしゃい!」
「こんにちは! ヒカリ様!」
家に入り、大広間に向かうと、コウと婚約者のオハナちゃんが一緒に遊んでおり、僕に気付いて急いで礼を一つ。
「もしかして、アヤメさんが迎えに来るの待ってる?」
「はい!」
「お姉様なんでわかったのですか!?」
「学園帰りにうちに寄って、オハナちゃんと一緒に帰るのかなって」
まぁ一番御者の疲労も少なく済むやり方だし、もしもコウがクリアライト家に行ったら、僕も同じことをする。
そんなことを話していたら、丁度正門に一台の馬車が止まり、アヤメさんが降りてくる姿が目に入る。
「丁度話してたら、アヤメさんがお迎えに来たね!」
「お姉様が? どこですか?」
僕の声を拾ったオハナちゃんが、コウの手を引きながら嬉々と窓の外を見つめる。
すると、三人の存在に気付いたアヤメさんが、優しい笑みで手を振ってきた。
「お姉様来ました! コウくん、一緒に行こ!」
「うん! お姉様も一緒に行く?」
「うん。アヤメさんと少しお話ししたいから、二人と一緒に行こうかな?」
「それじゃあ三人で行きましょう!」
そんなわけで僕とコウはオハナちゃんに手を引かれ、勢いよくアヤメさんの待つ馬車の前まで駆け抜けた。
「お姉様! お帰りなさいませ!」
「オハナただいま! コウくん、オハナをありがと?」
「はい!」
コウはオハナちゃんの手を離しーー
「…………」
いや、オハナちゃんが離そうとしない! もの凄くシュンとしている!
「お姉様、もう帰るの……?」
「オハナ……!」
オハナちゃんの少しうるっとした目がアヤメさんを突き刺す。
「しょうがない、もう少しだけ居よっか!」
「うん! ありがとうお姉様!」
「ありがとうございます!」
どうやらコウももう少し一緒に居たかったようで、満面の笑みでお礼を一つ。
全く、可愛い弟だ!
*
そんなわけでコウとオハナちゃんは中庭でおしゃべりしており、僕とアヤメさんはのんびりお茶を嗜んでいます。
「いい光景ね? 若い二人が元気で何よりよ」
「アヤメさん、なんかおばあちゃんみたいなこと言ってるね?」
「二人からしたら私なんておばあちゃんみたいなものよ!」
「…………」
未だ十七歳のくせに何を言っているんだ。
って思ったけど、アヤメさん、前世の僕より歳上なんだ。
そう考えると、今世の僕が前世の僕の年齢を超すのも時間の問題なんだな。
なんだか感慨深い。
「ねぇアヤメさん」
「どうしたの?」
そんな人生の先輩だからこそ、聞きたいことがある。
「アヤメさんって、婚約者いますか?」
「勿論いるわよ? っていうか、フウよ? ヒカリちゃんのいる『新・音楽部』の副部長の『フウ・オウレン』よ」
「あ、そういえば……」
学園祭のことで頭が一杯だったけど、さっきその話が一瞬出ていた。
「アヤメさんって、そのフウさんの……どんなところが好き……なんですか?」
「何ヒカリちゃん? もしかしてレオン様が好きかどうかわからなくなっちゃった?」
「いえ……逆なんです」
「逆?」
「はい」
そもそも恋なんてロクにしたことなかったから、色々とわからない。
漠然としてるけど、本当に色々とわからない。
「そっか、ヒカリちゃん、レオン様に本気で恋しちゃったか! 私にもあったなそんな時が!」
「どういうことですか?」
なんか微笑ましそうな僕の顔で見ている。
「ヒカリちゃんみたいに、本気で恋に向き合おうとしたことがあったのよ、私にも」
「本気で……」
そうか。今、前世と今世で、初めて本気で恋の気持ちと向き合おうとしてるんだ。




