213話 異色の二人
「はぁ……」
色々あり過ぎて、結局護衛が必要なことを話すの忘れてしまった。
「そして今日も一人」
昨日同様、一人で出歩けないから教室でポツンと一人。
マジで夕日を眺めるしかやることない。
「明日こそ……」
明日こそ、レオンに会えるだろうか……。
体調は大丈夫なのだろうか。
昨日今日で心の準備は大分出来たし、不自然な挙動をすることもないだろうけど、改めて緊張するな……。
これが、恋心……か……。
「はぁ……ん?」
不意に扉が開き、昨日同様、ハクトさんが教室に入ってきた。
「今日もいるのか……」
「はい。色々あって一人で出歩けなくて」
「そうか……」
「…………」
「…………」
「わー、夕日がきれーだなー」
「…………」
ははは、何やってんだろうな僕……。
そんな気まずい沈黙を破るように扉の音が再び聞こえる。
「ヒカリちゃんお待たせーーって、あら? ハクトさん?」
入ってきて早々、シャイナちゃんはハクトさんの元へゆっくり歩き、顔を覗き込む。
「ハクトさん、久しぶりね?」
「…………おう」
そして無愛想に一言。
「シャイナちゃん、知り合い?」
「うん! まぁお兄様から繋がっただけなんだけど」
「…………」
そしてそんな言葉を吐いたシャイナちゃんを残念そうに見つめるハクトさん。
これって…………もしかして好き?
断定するには早いけど、ハクトさん、シャイナちゃんのこと気になってる?
「……ねぇシャイナちゃん」
「どうしたの?」
ちょっと……面白そうだからカマをかけちゃおう!
「ハクトさんって、どんな人なの?」
「うーんそうね 私が幼い時、よく一緒に遊んでくれていたのだけど、その時は『大きくなったらシャイナちゃんを守る騎士になるんだ!』ってよく言ってたわね?」
「…………」
あ、これもう大好きじゃん?
「おいシャイナ」
「なに?」
「ちょっとヒカリ・ウィンガートと二人で話がしたい」
「え? いいけど、教室の外で待ってればいいかしら?」
「そこでいい」
「わかったわ?」
「あ…………」
シャイナちゃんは手を振って教室から出て行った。
「さて、私も一緒にーー」
「おい」
「ひっ?!」
そして動こうとした僕の肩を思い切り強く掴んできた。
「あの痛いです! 乙女にそんな横暴をーー」
「この数秒でお前を女と認識しなくなった」
「えぇ……」
マジ勘弁してください! いや僕が悪いんだけどさ。
「それで、さっきのはどういうつもりだ」
「さっきのとは?」
「どう考えてもカマかけようとしてただろ」
「…………」
めっちゃバレてる……。
「えっと……ね、ほら! 恋の応援的な?」
「シャイナはもう王族の婚約者候補だ。そんなことされても困るだけだ」
「別にアプローチかけちゃいけないなんてルールはないし、そもそもシャイナちゃんが選ばれるかどうかもわからないでしょ」
流石に自ら婚約者候補を下りようと考えていることは言えないが、この人少しお堅い気がする。
「そんなに難しく考えることないと思うけどな?」
「…………」
「まぁ私から言えることは『諦めるにはまだ早い』ってことくらいかな。それじゃあまた!」
「…………」
特に話が盛り上がる相手でもないので、言いたいことだけ言い、肩の手を振り払って教室を去っていく。
「お待たせシャイナちゃん!」
「もう大丈夫?」
「うん! 話したいことは話せたし、そもそも特別仲良い訳でもないし」
「そっか。ハクトさんって寡黙だから誤解されちゃうけど、凄く優しい人なんだよ?」
「えっと……うん、そうだね?」
多分僕が変な誤解しないように釘刺ししたのだろうけど、そもそも恋愛話だったからそんな心配も必要ない。
とりあえず雑談しながら一緒に階段を降り、二人で馬車に乗り込む。
「シャイナちゃん、今は何作ってるの?」
「今は三人の平民服の終盤だから、飾りとかかな?」
のんびりお互いの進捗を話し、楽しく時間が過ぎていく。
そして気付けばウィンガート家に到着。
「シャイナちゃん、ありがとね?」
「良いのよ! ヒカリちゃんと一緒にいられるならどれだけでも付き合うわ!」
にこやかな笑顔で手を振り、ゆっくり馬車を降りる。
「明日はレオン来ると良いわね! また明日!」
「シャイナちゃん!?」
そんな言葉を残して馬車は再び走り出した。
「明日は来ると良いね……か」
気持ちが定まって二日。何を話せば良いのだろう。




