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210話 不器用な性格


「急いで!」

「これでも急いでるんだ!」


 始業の鐘が鳴り響く中、僕とリョウさんは廊下をダッシュしており、急いで教室へ駆ける。


「セーフ!」

「おいどけ! 俺が遅刻扱いになる!」

「どけ?」

「どいてくださいお願いします」

「しょうがないなぁ!」


 ゆっくり扉の前からどき、鐘がなり切る前にリョウさんも到着。


「リョウさん遅刻」

「いやセーフだろ」


 そんなやり取りをしている中だが、クラスの人の視線がやけに驚きに満ちている。


「こら二人とも、早く席に着きなさい」

「はーい」


 既に痛みが引き始めて自由が効く足を軽々動かして席に着く。


「リョウさんも席に着きなさい」

「は……はい」


 中々の理不尽を感じながらもゆっくり席に着く。


「ねぇヒカリちゃん」

「ん?」

「隣のやつと何かあった?」

「うーん」


 スーちゃんのボソッとした呟きをどうにか聞き取り、そっと後ろを振り向く。


「擦り合わせた?」

「擦り合わせ?」

「多分まだ仲直りは出来てないけど、お互い落ち着いたって感じ」

「ヒカリちゃんは大丈夫なの?」

「うん!」


 ここから先はあんまり拗れることはないだろう。


 無視しようって決めた次の日にはこれだから、僕は不器用に正面衝突して人間関係邪突破するしかないのかもしれない。


「それじゃあ講義始める」


 そんな考えを一蹴させ、講義に集中し始める。



*



 淡々と講義が終わり、ようやく全講義終了。


「超眠い……」

「ヒカリちゃんずっとウトウトしてたわね?」

「ちゃんと聞いてノートは録ってたけど、ちょっと疲労が……」

「私もちょっと疲れたわね、ふぁ〜」


 僕とシャイナちゃんは揃って口に手を当ててあくびをする。


「情けないわねって言いたいけど、私も流石に疲れたわ」

「おぉ、スーちゃんが弱音を」

「弱音? そんなもの吐かないわ? まだまだ元気よ?」


 キラリと笑ってみせるが、中々瞼が重そうだ。


 そして隣ではーー


「…………」


 リョウさんが机にへばりついて眠っている。というかリョウさんに限らずクラスの半数が睡魔に負けて眠っている。


「これ……学年上位クラスの風景か……」


 まぁ社交の講義で全員疲労困憊だったからしょうがないんだけど。



「じゃあちょっと早いけど私は帰るわ?」


 スーちゃんは誰よりも早く教材をカバンに詰めて立ち上がる。


「スーちゃん早いね? ダイアくんのこともあるからしょうがないけど」

「ううん、最近はダイアのことは心配してないわ?」

「ん?」


 僕とシャイナちゃんは同時に首を傾げ、スーちゃんは二人の様子を見てニヤリと笑う。


「お母様、もう直ぐ出産するのよ!」

「「出産!?」」

「えぇそうよ! 私にもう一人弟が出来るわ!」

「え、凄い!」


 もう性別まで分かっているのか。ってことは大分お腹も大きくなっているはず。


「お母様が寝たきりになって、お父様が本当に情けないから、私とダイアでお父様の世話をしてるわ?」

「お母様の世話じゃなくて?」


 いやまぁコウが生まれて来る時もお父様どころか、屋敷全体がソワソワしてたし、きっとスーちゃんのところもそんな感じだろう。



「そんなわけだから、早いうちに帰らせてもらうわ!」

「分かった、また明日ね!」

「何かあったらいつでも呼んでね? 直ぐ駆けつけるから!」


 そんなわけでスーちゃんはせっせと教室を出て行ってしまった。


「それじゃあ私たちも部活動に行こっか!」

「うん、護衛お願いします!」

「待って」

「「ん?」」


 そして僕とシャイナちゃんで部活動に向かおうとした時、ようやく目が覚めたリョウさんに呼び止められる。


「嫌じゃなかったらさ、俺と行かね?」

「…………」

「いや、嫌だったら良いんだ。ただーー」

「……良いよ?」

「だよな…………いいの?」

「うん」


 前みたいに無理やり誘っている感じは一切無いし、数時間前にようやく腹を割って話せたばかりだ。


 強引なことは出来ない。


「という訳だからさ、シャイナちゃん、今日は帰りだけで大丈夫」

「本当に? 無理してない?」

「うん、何かあったらシャイナちゃんに全部話すから!」

「わかったわ! その時はどんな手を使ってもミドロ侯爵家を没落させるわ!」

「うん! お願い!」

「怖過ぎだろ……」


 シャイナちゃんの柔らかい脅しに怯えているが、その程度の好感度なんだぞ?


「じゃあまたあとでね!」

「うん! 部活動頑張ってね!」


 そしてシャイナちゃんも教室を去っていく。


「じゃあ私たちも行こうか」

「うん」


 若干気まずい空気だが、前みたいな嫌悪感は一切感じない。


 まぁ生理的に無理だった気持ちは易々と抜けないけどね。


 そんなわけで僕とリョウさんは、人二人分ほどの距離感を保って教室を出た。

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