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208話 矛盾した行動


「ちょっと大丈夫!」

「無理無理!」

「保健室行った方がーー」

「保健室ってどこにあるの?」


 リョウさんのグループの人たちが一斉に集まるが、どうすればいいのか分からずに声をかけるしか出来ない。



「大丈夫ですか?」

「いてててて!」


 社交を担当する講師も駆けつけ、取り敢えず攣った足をほぐし始める。


「…………」


 すげぇ痛そうな悲鳴を上げており、思わず頑張っていた身体に鞭を打つのをやめる。


 だってあんな痛そうなのに、ちょっとこれ以上頑張るの怖いじゃん。



「取り敢えず端に寄って休んでください。皆さんはそのまま続きをしていてくださいね」


 講師に連れられて壁側まで移動し、大声で叫ぶリョウさんを横目に、講義が再開される。


「足攣るの怖い……」

「私ちょっと手抜こうかな」

「情けないわね!」


 サンとスイカが少し弱気になっているところをスーちゃんは一蹴。


「三人とも無理はしちゃダメだよ?」

「スーちゃんもシャイナちゃんも凄い……」


 凄い次元の違いを感じる。何がここまでの差を作り出したのだろう。



 そんなトラブルがありつつも講義は終わり、ゾロゾロと生徒たちが退出していく。


「もう無理ぃ……」

「クタクタです……」

「動けない……」


 そして僕とサンとスイカはまるでゾンビの如くフラフラした足取りをしていた。


「頑張ったわね三人とも!」

「まだまだね三人とも!」


 スーちゃんとシャイナちゃんは意見こそ真逆だが、二人とも労ってくれている。


「スーちゃんシャイナちゃん、置いてかないでぇ」

「スティア様、私にご慈悲を!」

「シャイナ様、どうかお力を!」


 最早ゾンビというより地獄の方が近い。


「こらそこのバカ伯爵三人! 早く行きなさい! 掃除出来ないでしょ!」

「バカって言った! スーちゃん! 先生がバカってーー」

「大バカよ! 早く行くわよ!」

「「うぇぇぇ!」」


 そんな風にわちゃわちゃしながら、ただ一人、リョウさんを残して五人で社交会場を後にする。



*



「…………」

「ヒカリちゃんどうしたの、ぼーっとして」

「へ?」


 更衣室で着替えている最中、シャイナちゃんが僕の顔を覗き込んでくる。


「うーん、リョウさんあの状況で歩けるのかなって思って」

「ヒカリちゃんすごいね、あんなことあったのにまだあいつの心配するなんて」

「え? 心配なんてしてないよ?」


 スーちゃんの言っていることが理解出来ずに首を傾げる。


「じゃあなんで?」

「うーん、同じクラスの人だし、なんだかんだ人望あるから恩を売っておきたい」

「ヒカリちゃんが打算を覚えた!? ダメだよ、純情なヒカリちゃんに戻って!」

「スーちゃんは私をなんだと思ってるの!?」


 さっきもこのやり取りしたけど、僕そこまで幼くないぞ?


「はぁ……」


 無視するって決めたのに、なんだかんだで気になるんだよな。


(前世で友達が殆どいなかった分、少しでも取り戻したいって気持ちがあるのかな…………)



「…………ちょっと行ってくるね」

「どこに?」

「恩を売りに!」


 こんな風にモヤモヤするのは嫌。だったらいっその事助けに言って謝罪させてやる。


 着替えを済ませて更衣室を出て、一階二階と駆け上がり、三階四階を疾走。


 そして五階の踊り場。



「いてぇ……」


 顔を顰めてゆっくり階段を降る間抜けを発見。


「全く、何してるの?」

「え…………なんで……?」


 そして僕を見つけるなり困惑した表情を見せる。


 そりゃそうだよね。昨日の今日で仲が一気に悪化した人が目の前にいるんだもん。



「次の講義遅れるよ? ってか、いつもいる皆んなは?」

「先に行ったよ。別に仲良い訳じゃないからね。ただのコネクション作り仲間ってだけ」

「…………」


 なんか、しれっと言ってるけどあまりに悲しくないか?


「なんか同情してる感じだけど、ヒカリちゃんたちのところが特殊なだけーーっていててて!?」

「ああもう!」


 急いで階段を駆け上がり、リョウさんの腕を肩に掛け、一緒になってゆっくり降りていく。


「全く、なんで私が……」


 自分でここまで来ておいて、なんだか今すぐ置いて帰りたくなってきた。

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