202話 無駄な話し合い
あれから特に何事もなく、ようやく昼休憩。
「ねぇリョウさん」
「うん、場所は教室でいいよね?」
「良くない」
とりあえず相手のペースに呑まれるのは嫌。まぁ完全に二人きりも嫌なんだけど、これはしょうがない。
「スーちゃんシャイナちゃん、少しリョウさんと話し合ってくるから、先食堂向かってて?」
「え、私たち一緒じゃなくても良いの?」
「うん、大丈夫」
シャイナちゃんは心配そうに僕を見つめるが、今回ばかりは不要だ。
まぁいてくれた方が心強いけど、無条件で僕の味方してくれる二人がいると話し合いにならなさそう。
「それじゃあ場所は……まぁ中庭でいっか」
「わかった」
「じゃあちょっと行ってくるね? 話し合い終わったら直ぐ食堂向かうから!」
スーちゃんとシャイナちゃんに手を振って二人で教室を後にして、風通しの良い中庭に到着。
「それで、話って?」
「今日の朝のこと」
「あぁ、スティア・オーラライトとアイネのことね?」
「うん」
言い争い自体は二人だけど、元凶二人が達観するのはおかしな話だ。
「ねぇリョウさん、なんでスーちゃんが貴女に怒ったか分かる?」
「…………」
「分かるんだね」
まぁスーちゃんも明らかに露骨な対応だったし、僕がリョウさんをある程度避けてるのも本人解ってるはずだ。
「ねぇリョウさん、なんで私に執着するの?」
「…………それはヒカリちゃんの自意識過剰じゃないかな?」
「ならなんで避けてるって分かってるのに無理に話しかけてくるの?」
「仮にそうだとして、それってヒカリちゃんに関係ある?」
「あるよ。だってそれがなかったらスーちゃんとアイネさんが言い争うこともなかったじゃん」
「言い争いしたのはスティア・オーラライトとアイネじゃん。俺らに関係あるの?」
「………………本気で言ってるの?」
あまりに理解不能な発言過ぎて、思わず一歩後ずさる。
「…………じゃあもう今後関わらない方がーー」
「前もそうやって逃げたけどさ、それじゃあ絶対解決しないよ」
以前スーちゃんと一緒に話し合いの場を設けたけど、その時は完全に逃げられた。
だけど今回はその逃げは絶対にさせない。
「お願いだからちゃんと話し合いしよ? 私このままギクシャクしたクラスで過ごすの嫌だ……」
学園生活は凄く楽しいのに、侯爵問題だけじゃなくてクラス内でも居心地が悪くなるのは本当に嫌だ。
「ギクシャクって、一回少し衝突しただけじゃーー」
「その原因私たちじゃん!」
「じゃあ、やっぱり俺ヒカリちゃんに関わらなーー」
「だから! そういう話じゃ…………もう!」
本当に話が通じない! 本当に疲れる!
「はぁ…………じゃあせめてこれだけ答えて? なんで私に執着するの?」
「………………」
「…………答えてくれないんだね」
本当はもっと擦り合わせて話し合わなきゃいけないかもしれない。
でも、もう気持ちが限界。
楽しくないとか、話し合いが嫌とかじゃない。
生理的に無理。
「じゃあ……もう私行くね、時間取らせてごめん」
「…………おい」
「え……ちょっ!?」
僕は肩を落としてそこから去ろうとした時、突然腕を思い切り引かれて体勢を崩して尻もちをつく。
「いったぁ……」
「あ…………ごめん」
「…………」
差し伸べられた手に目もくれず、自力で立ち上がって制服に付いた土を払う。
「それで、何」
一刻も早くこいつを視界から消したいけど、話す気になったのだろうか。
「いや……その…………」
「…………」
「なんでヒカリちゃんは…………俺のこと嫌いなの?」
「入学式の日にレオンより先に社交ダンスを踊ろうとしたから。それから距離感が近いって言ったのに治ってないから。あと、話し合う気がないから」
「…………」
「また教室でね『ミドロ侯爵』さん」
「ヒカリちゃん……」
今度こそその場を立ち去り、護衛がいないので、大急ぎで食堂へ向かった。
*
「あ、ヒカリちゃん来た…………どうしたの?」
「ア……アリアちゃん……!」
食堂に来て早々、気持ちがやられ過ぎて大泣きしてしまった。
お馴染みになったスーちゃんとシャイナちゃん、そしてアリアちゃんとユアン様、更にはユウ様まで、僕の様子を見て心配そうにしている。
「上手くいかなかった……」
「そっか、よしよし、頑張ったね?」
ボロボロと溢れる涙を落としながらみんなのところへ向かい、アリアちゃんに介抱してもらう。
「泣き虫ね全く!」
そう言いながらも頭を撫でてくるスーちゃんは、なんだかんだ僕に甘々だ。
でも、上手く話し合えなかったのは本当に悔しい。どうすればもっと上手くやれたのかな……。




