201話 不穏な空気
「ふあぁぁ……」
「ヒカリちゃんおはよう!」
「スーちゃんおはよう、ありがとね膝貸してくれて」
「構わないわ!」
大きく伸びをして眠気を吹き飛ばし、目をシャキッとさせる。
「ヒカリちゃんの寝顔可愛かったわ?」
「シャイナちゃん?!」
この子は何を言っているんだ?
「スーちゃんなんてずっとヒカリちゃんのほっぺ突いてたわ?」
「ちょっとシャイナ! それは内緒って!」
「スーちゃん……?」
「……膝貸した代償よ?」
「代償……」
まぁ僕のほっぺなんかで癒されたならそれで良いけど、なんか複雑な気持ちだぁ……。
「そんなことより早く教室に行きましょ!」
「わかった! あ、スーちゃんシャイナちゃん!」
「「ん?」」
スーちゃんが馬車を降りる前に二人を引き留め、少し考えて一言。
「私って……えっと…………可愛い?」
「当たり前じゃない」
「今更よね?」
「おぉ……」
自分で言っておいてなんだけど、凄い迷走したこと言ったな。
「…………もしかしてヒカリちゃん、レオンをちゃんと気にしだした?」
「へ!? いやそのっ!」
「あ、図星ね?」
突然シャイナちゃんが心の奥底を刺してきた。
「レオンがいなくて露骨に残念そうだったものね?」
「そう言うわけでは……」
どうにか言い訳したいけど上手く思い浮かばない。
「安心して? 少なくともヒカリちゃんはクラスで一番可愛いわよ?」
「だから違うのっ!」
「はいはい違うのね、よしよし!」
「もぅ!」
そしてまるで子供をあやすように二人が頭を撫でてきた。
なんか……屈辱だ……。
*
「おはよう二人とも」
「あ、ヒカリちゃんおはよう!」
「スティアさんとシャイナさんもおはよう!」
教室に入って早々にサンとスイカに遭遇。
「おはよう二人とも!」
「おはよう! そろそろスーちゃんって呼んでくれて良いのよ?」
「いや、いくら学園でも公爵様に愛称は……」
「ちょっと……ね?」
シャイナちゃんは手を振って挨拶し、スーちゃんは親しみたい相手に愛称で呼ばせようと必死だ。
まぁサンもミナモも僕と同じ伯爵だけど、関わってきた差だったり、婚約者候補かどうかの体裁もあるし、暫くスーちゃんの愛称はお預けだろう。
「おはようヒカリちゃん!」
「あ……おはようございます、リョウさん」
そしてあいも変わらず僕に執着してくるリョウ・ミドロ侯爵。
「「…………」」
そして、学園生活が三ヶ月経ち、ある程度グループが分かれた今、多少なりともリョウさんに好意を抱いている人からの視線が痛くなり始めている。
ほんまに嫌や……。
「今日はレオン様一緒じゃないんだね?」
「えっと……」
果たして休みのことを言って良いのかどうか。
「そうよ? レオン体調崩しちゃったから、私とシャイナが護衛してるの!」
そんな風に思考がゴネていると、スーちゃんが僕の肩をポンと叩いて前に出てくれた。
「だからヒカリちゃんの部活動も私たちで送るわ?」
「俺まだ何も言ってないんだけど?」
「あらごめんなさい! てっきり『部活動が一緒』って名目でヒカリちゃんの護衛を『無理やり』引き受けるものかと思ってしまったわ?」
そしてゴリゴリの喧嘩腰で言葉を返す。
なかなかエグいです。
「ねぇスティアさん、少しお言葉が強すぎるのでは?」
そんなスーちゃんの対応が頭に来たのか、リョウさんの派閥の女子一人が突っかかってきた。
「そうね? 普通ならこんな喧嘩腰なんてしないわよ? でも、友達が嫌がっているのも気付かずに話を強引に進める殿方の相手なんて、これくらいで充分よ?」
「それは少々捻くれた考えではなくて?」
「あら、人の気持ちを考えずにズカズカ話を進めるのは捻くれてないと?」
「そうは仰ってません! しかしーー」
「はいはいストップストップ!」
言い争いがヒートアップしそうなところでシャイナちゃんが二人の間に入り、強引に流れを止める。
「スーちゃん、一旦落ち着いて?」
「シャイナ……ごめん、助かったわ?」
ムッとした表情のままだが、一つ深呼吸をして荒れた気持ちを整える。
「スーちゃんごめん、あんなこと言わせちゃって……」
「ヒカリちゃんのせいじゃないわ? 元はと言えばーー」
「スーちゃんストップ!」
今度は僕がストップをかけて戦を止める。
「アイネもストップ。言い過ぎだよ」
「リョウ…………でもーー」
「アイネ?」
「うっ……」
リョウさんもスーちゃんと歪みあっていた子を止め、事なきを得た。
「「…………」」
こりゃ……クラスの空気が……悪過ぎる……。
「ねぇリョウさん」
「ヒカリちゃん?」
「昼食の時さ……少し話し合わない?」
「え、良いけど、どうしたの急に?」
とりあえずこの空気はどうにかしたい。僕は元凶である自分とリョウさんに速攻で話し合いを設けることにしたのだ。




