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199話 大切な親友


 私『スティア』が初めてヒカリちゃんと会ったのは、六歳のお茶会。


 ではなく、レオン様の五歳の誕生日パーティーの時。



 まだお互い名前も知らない頃だけど、あの日のことはよく憶えている。


 それはレオンが格好良かったから……ではなく、ヒカリちゃんがレオンと対面して直ぐ気絶しちゃったから。


 それからもつつがなくパーティは行われ、まるで何事もなかったかのようにお開きに。



 そして、私がヒカリちゃんをはっきり認識したのは、パーティがお開きになった後の数秒。


「お父様、今日気を失われた人はどうなってしまうのですか?」


 多くの子息や令嬢が後を去る中、私はお父様に連れられて最後の挨拶回りをしていた。


 そんな時に聞こえた一言だった。


「明日か明後日にでも、ウィンガート家にでも行ってみるか?」

「「え?」」


 私とレオンは同時に声を上げた。


 王族が自ら出向くなんて聞いたことがない。その時はきっとただの冗談だろうと思った。



 それから数日後、大勢いる令嬢がレオンの婚約者候補になるべく、王城でレオンとのひと時を過ごす日々がやってきた。


 当然私もその一人なのだがーー


「レオン様、どうされたのですか?」

「あっ……ううん、なんでもないよ?」

「……」


 時折、まるで虚無を見つめるような上の空になる時があった。


 幼い頃の私は特に気にせずに話していたが、とある日を境にレオンの様子は激変する。


 それは、最初の足切りが終わり、婚約者候補が十人になった時。



「ねぇスティアちゃん」

「どうされたのですか?」

「スティアちゃんって『ヒカリ・ウィンガート伯爵』と友達だったりする?」

「え?」


 珍しくレオン様が自発的に質問してきたと思えば、会ったことのない令嬢の話題だった。


「いえ……レオン様の五歳のパーティからずっと会ってないですわ?」

「そっか……」

「…………」


 そして私が知らないと言えば、露骨に残念そうな表情をする。


 非常に面白くないという気持ちと、どんな人なんだろう興味が湧いた。


 あの日以降、関心どころか存在すら忘れていた『誕生パーティに気絶した令嬢』。


 一体、彼女の何処がレオン様を魅了するのか。



「お父様! 私、お茶会開きたいですわ! 婚約者候補全員集めて!」

「スティア、突然どうしたんだい?」

「婚約者候補の中に会いたい人がいるの!」


 公爵と伯爵の身分差があるので、一対一だと怖がらせてしまう。


 だから私は速攻でお茶会の開催の手紙を、当時の婚約者候補全員に送った。


 全ての用意を大急ぎで整えて迎えた当日。


「初めましてーー」

「こんにちはーー」


 続々と婚約者候補の侯爵が、適当に挨拶してくる中、目当ての人物を発見。



「ようやく来たわね?」


 待ちに待った伯爵令嬢。桃色の髪はドーナツみたいに丸まっており、とても可愛い白色のドレス。


 流行りなんてまるで無視した姿。


「はじめまして! ヒカリ・ウィンガート伯爵ともうします!」

「あら、礼儀はなっているようね? 私はスティア・オーラライトよ!」


 ドレスを摘み、可愛らしくお辞儀をして、にこりと笑顔を魅せる。


 私も同様にドレスを摘んでお辞儀を一つ。


 とはいえ、突出して魅力を感じる人でもない印象。


 しかし、他の令嬢からは貰えなかった一言が、私を一瞬で虜にした。



「本日は、お招きいただきありがとうございます!」

「あら! あなた凄いのね?」

「ん?」

「みんな挨拶は言うのに『お招きありがとう』って言わないのよ」


 侯爵家の人間たちは、表面上の取り繕いすら出来なかったが、この子『ヒカリ・ウィンガート伯爵』は「お茶会に呼んでくれてありがとう」と言ってくれたのだ。


 本心か体裁かはわからないけど、その言葉一つで私は舞い上がってしまった。


「あなた気に入ったわ? 特別に隣に座らせてあげる!」



*



「ねぇヒカリちゃん」

「スーちゃん?」

「寝不足?」


 馬車で学園へ向かっている最中、ヒカリちゃんは眠たそうにうとうとしている。


「あはは……昨日あんまり眠れなくて……」


 口に手を当てて欠伸をして、どうにか眠たさを誤魔化しているが、このままだと確実に講義中に眠りそう。


「しょうがないわね! 膝使って良いから少し寝なさい!」

「え、良いのスーちゃん」

「ダメだったら言わないわ?」

「えへへ、じゃあお言葉に甘えて」


 そしてヒカリちゃんはコテンと横になり、直ぐに眠りについた。



「ねぇシャイナ」

「どうしたのスーちゃん」

「あのさーー」


 少しだけシャイナと内緒の話をして、気づけば学園の校門へ到着した。

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