19話 アリアちゃんの部屋
「ここよ!」
「すごい、おおきいね!」
白い壁と床、ピンクの絨毯に、ピンクの……。
(めちゃピンク!?)
ベッドもピンク、ソファもピンク。マジてピンク。
これが女の子の部屋……。
「かわいいでしょ?」
「かわいい!」
不思議なことにピンク一色なのに可愛いと思っている自分がいるんだな。
「お嬢様、ヒカリ様が好きすぎて、新しいものは全部ヒカリ様の髪色と同じピンクにするんです」
「ハンナ!」
「そうなの?」
ちっとも嫌じゃないけど、ちょっと愛重くない?
「だって、みんななんか怖い目してあたしにちかづくもん……ヒカリちゃんはちがうから」
「アリアちゃん……!」
公爵って立場、超怖いじゃん!
子供の中にも、親に言われて近づく人も多数いるだろうし、本当に何も知らなくて得したんだな。
公爵って知った時、一瞬下心が出たのはなかったことにしよう。
「ピアノもピンク!」
そんなことも一切忘れて、目の前にあったピンクのピアノに駆け寄る。
「これはね? あたしが七歳になったらつかうんだって?」
「はっ、ヒカリしってる! おんがくきょーいく!」
「そう! ヒカリちゃんにも聴かせてあげる!」
「うん! たのしみにしてる!」
そんな些細で楽しみな約束を交わし、いつの間にかメイドが用意してくれていた本を手に椅子に座る。
「これ、おとーさまにかってもらったの!」
「おきぞくさまの、いきかた?」
「そう!」
題名的に貴族の子供のための教育本っぽそうだ。
意地悪な貴族が少しでも減ってくれればと言う願いが感じられる良い本だ。
しかし、メイドは他のところが気になった様子。
「ヒカリ様は四歳とお聞きになっていましたが、本当に文字が読めるのですね」
「うん! アリアちゃんと本よみたいの!」
100%本気ですよ? 一切下心なんてありません。ヒカリちゃんは純粋なんです。
「……非常に良いですね」
「でちょ?」
なんか、凄い何か噛み締めてる様子だけど、なんで?
幼子二人の戯れに? アリアちゃんにお友達が出来たから?
そんなことお構いなしに、アリアちゃんは本を開いて、一緒に読み始める。
「むかしむかしあるところに、わるいきぞくさんがいました!ーー」
まだおぼつかないポーンロンド文字をゆっくり読む。
悪い貴族は民からお金を巻き上げ、自分たちだけが何不自由ない暮らしをしていました。
しかし、それに怒った一人が、農家、大工、仕立て屋と共に力合わせ、悪い貴族をやっつけたのだ。
「もう悪いことしないから許して!」
貴族は心から反省してお金を民に返し、平和に暮らしましたとさ。
「……」
(桃太郎ver貴族って感じだな)
農家と大工と仕立て屋って、完全に衣食住を意識した構成だよな。
「へんなおはなしだね?」
「うん」
アリアちゃんの無慈悲な感想に同感。
ちょっと、無理があるお話だ。あれは桃太郎だから良かったんだな。
と思っていたらーー
「たみをたいせつにするなんて、あたりまえじゃない!」
「ヒカリもおなじ!」
模範的解答が飛んできてビックリ!
だからアリアちゃんのことが大好きなんだ。
「もっとよみたい!」
「うん! ハンナはどれがいいとおもう?」
「そうですね」
メイドは少し本の表紙を見回す。
少し悩んだ末差し出した本はーー
「こちらはどうですか?」
「ロミコとジュリオット……」
クソパロ臭満載の本だ。
(読みたくねぇ……)
僕の知ってるロミジュリのままでいたい。変に上書きしたくない。
「平民と貴族の、身分を超えた愛のお話だそうです」
「よくわかんないけど、よんでみよ?」
「うん……」
アリアちゃんが乗り気なら仕方ない。
改変が最小限であることを願い、再び読み始めるのであった。




