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196話 好きってなんだろう


「ただいま」

「ただいま!」

「ただいま戻りました」


 アリアちゃんとカルラくんと遊び終わり、夕方頃三人で帰宅。


「お父様とお母様は?」


 帰ってきたと言うのに誰からの返事もなく、閑散としている。


「あ、ヒカリ様、コウ様、メイド長、おかえりなさいませ!」

「ただいま戻りました。丁度よかった」


 偶々玄関に来た一人のメイドにシャルが近づき、両親とミューゼの居場所を尋ねる。


「旦那様と奥様はお二人で外食です。執事長は仕事が概ね片付いたからと、旦那様がお帰りさせました」

「わかりました。そうなると……オズワルド様のことですし、残ってるメイドと執事は殆どいませんね」

「はい。旦那様が全員退勤させました」

「わかりました。あなたも上がっていいですよ」

「承知いたしました。お疲れ様です」


 シャルとの会話を切り上げ、僕とコウに一礼して去って行った。


「と言うわけで、今この屋敷は、実質私とヒカリ様とコウ様の三人です」

「そっか………………ねぇシャル」

「どうされましたヒカリ様」

「シャルって既婚者だよね」

「そうですが、それがどうかされましたでしょうか」

「…………あのさーー」


 自分一人で上手く消化しきれないので、今日カルラくんに言われたことをシャルに話した。



「カルラ様、ヒカリ様のこと凄い好きじゃないですか」

「あ……あはは……」


 人からそう言われると、自意識過剰じゃなくて、おおマジなんだなって実感する。


「それで、ヒカリ様は私に何を聞きたのですか」

「えっと…………人を好きになるって、なんだろうなって」

「随分と哲学的な質問ですね」

「うん……」


 カルラくんが僕のことを好きなのは、アリアちゃんどころか、コウも知っている。というかメイドであるシャルですら知っている。



「ねぇシャル」

「コウ様?」

「なんでお姉様ってそんなにモテるの?」

「えっと……コウ?」


 なんか凄い大真面目に不思議そうな表情している。


「お姉様、凄いはしたないし」

「うっ……」

「あまり清楚じゃないし」

「うぐっ!」

「全然優しくないのに」

「うがっ!?」


 やばい、今凄く倒れそう。ダメージがデカ過ぎる。


「コウ様、容赦ないですね」

「シャル、関心してないで擁護してくれると嬉しいな……」


 このメイド長、笑いを堪えてやがる、許せねぇよ!



「話を戻しますと、私はそもそもヒカリ様はレオン様がお好きなものかと思っていました」

「え、なんで?」

「言動が好意を抱く相手にするそれなので」

「へ?」


 本当に記憶にないのだけど、シャルはどこにそう感じる要素があるのだろうか。



「ヒカリ様、初めて魔法を習った時のことを覚えていますか?」

「うん、十歳の時よね?」

「はい。あの時、レオン様にキスされたって言ってましたよね」

「うっ………………そうね」


 あの日のことを思い出し、思わずシャルから視線を逸らす。


「そのあと『様』を外して呼ぶようになって、どう考えても好きじゃないですか」

「いやでもあれは、レオンも私のこと呼び捨てだったし……」

「タルト作りに凄く本気になったり」

「あれは入学祝いだし……」


 なんだろう、シャルはさっきから何を言っているんだろう。


「そういえば、学力テストのあと、レオン様とキスしたって言ってましたね」

「あれは………………ちょっと精神的に参ってて」

「ちょっと精神的に参ってて、なのにキスされたら気持ちが落ち着いたと」

「………………」

「ヒカリ様、何をどう考えればレオン様好きじゃないですか。それで「人を好きになるってなんだろう」は無理がありますよ」

「そ…………そんなこと……」


 そんなこと……ある、のか?


「とりあえず一旦広間にいきましょう。話の続きはお食事の時にでも」

「待ってコウ! シャル!」


 シャルはコウの手を引いてせっせと歩いて行ってしまった。


 僕の気持ちはますますぐちゃぐちゃになったと言うのに……!

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