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194話 悪ふざけ


 あの後四人で昼食をとり、予定通り午後からは四人で町歩きすることになった。


 何やらシャルとハンナさんは意気投合したらしく、僕たちにお供せずに語り合いたいそうで。


 まぁ四人で固まって動くし、シャルにも休息は必要だから、そっちはそっちで楽しくやってくれれば良い。



 そんなわけで現在、四人で適当にふらついています。


「これ可愛い!」

「本当だ!」


「コウくんこれ見て! ヒカリちゃんに似合いそう!」

「オハナちゃんにも似合いそう!」


 アリアちゃんとショーウィンドウに飾られているマネキンを見て一喜したり、想い人のことを想像したり。



「あれ、よく見たらカルラ様とヒカリ様じゃないかい!」

「「ん?」」


 のんびり歩いている最中、不意に若い男性に声をかけられて二人で思わず振り向く。


「こんにちは。えっと……」


 顔を見ても誰かわからず、声が詰まってしまう。


「知らないのも無理ないね? でも、二人はこの辺だと凄い有名だよ?」

「?」


 どうやらカルラくんにも思い当たる節がないらしく、一緒になって首を傾げる。



「二年前だったかな? 迷子の子を雨に濡れながら探してただろ?」

「「あっ!」」


 そっか、あの日通った場所ってここだったんだ。


「お貴族様どころか、我々平民でも躊躇うことをすれば、有名にもなりますよ?」

「懐かしいな」


 雨に濡れながら子供の母親を探して、あの時は随分とカルラくんに迷惑をかけてしまった。


「あれから迷子の子供は親元に?」

「はい、ちゃんとお母さんと会えましたよ?」

「それはよかった。こういうのは大人の男がやると誘拐っぽく見えるからどうしても出来なくてね」

「あはは、中々難しい問題ですね」


 今話している男性は大柄ではないものの、一番身長が高いカルラくんから見ても、頭一つ分の身長差がある。


 小さな子供から見たら最早巨人だ。


「あの時はヒカリちゃんが大胆過ぎだったね? 傘買うのも待たずに行っちゃうんだもん!」

「色々とありがとねカルラくん」


 迷子だった子は元気にやってるだろうか。


 確かウィンガート家のメイドの子だったし、今度様子を聞いてみたいものだ。



「そうだ、折角ならこれを」


 そう言って男性が四人全員分の割引券らしきものを渡して一言。


「うちの店、ご贔屓に!」


 そしてせっせと隣の店に入って行った。


「商売上手め」

「面白い人だったね?」

「面白い?」


 今の会話に面白い要素あったか? それともコウの感性には何かが刺さったのか。



*



「ふぁぁぁ……ポカポカだぁ〜!」


 歩いていても思わずあくびが出そうな温かい日差しだ。


 こういう時の目的のない町歩きは本当に楽しい。ましてやアリアちゃんと一緒だと尚のこと。


「災難続きだったから、こういう平和な日は骨身に沁みるね」

「ヒカリちゃんって時々じじくさくなるよね?」

「アリアちゃん!?」


 前世でも高校生だったが? まだ二十歳超えたことすらないんだが?


「でも気持ちはわかるよ? 少し眠くなってくるよね?」

「うん、さっきカルラくんの部屋で寝ちゃったけど、それでもまだ眠いかな?」

「そっか………………ん? 寝た? カルラの部屋で?」


 途端にアリアちゃんの顔が固まり、ゆっくりカルラくんの方へと視線が向く。


「違うんですお姉ちゃん、ヒカリちゃんが座る椅子がなくてーー」

「それでベッドに押し倒したの?」

「押し倒してない!?」


 カルラくんが顔を真っ赤にしてワナワナしている。完全に僕のせいだけど、面白いから暫く放っておこう。


「ヒカリちゃんもフォローを……」

「…………えっち」

「ヒカリちゃん!?」


 片目を閉じて舌を出し、ますます顔が赤くなるカルラくんをもう少しいじる。


 こうしてあわあわしているカルラくんは本当に可愛い。模範的な心をくすぐる年下の男子という感じだ。


「カルラくんってえっちなの?」

「ちょっ! コウくん違うよ! お姉ちゃんとヒカリちゃんが悪ふざけしてるだけで!」


「ごめんごめん! ちょっとからかい過ぎたね!」

「本当だよヒカリちゃん……」


 若干コウが引いているのは気のせいにして、取り敢えず慰めるためにカルラくんの頭を撫でる。



「これで許してくれる?」

「………………許します」


 ははは、現金なやつめ。

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