192話 好き……なの?
カルラくんと共に応接室へ向かい、メイドと執事の人が簡単なお菓子と紅茶を用意して下さり、二人でのんびりリラックスしています。
「それで、聞きたいことってなに?」
「いきなり話すの!? もう少し覚悟が……」
「覚悟が必要なことなの!?」
リラックス……しているはずでした。
「僕は必要……かも……」
「そっか、急かしてごめんね?」
「大丈夫、話すときはちゃんと話す。それより、ヒカリちゃんの学園生活が気になるな?」
「あー……私の学園生活……」
僕の学園生活なんて、冗談抜きで碌なことが起きていない。
社交界で監禁未遂に遭い『新・音楽部』で赤っ恥をかき、体育倉庫でガチ監禁にあって熱発して……。
「……最近は平和に過ごせてるよ?」
『監禁が公に事件として処理されてから』は平和だ。
「そっか、よかった。お姉ちゃん、ヒカリちゃんの学園の様子全然教えてくれないから気になって」
「あはは……」
そもそも学年が違うから、様子なんて中々見れない。
「カルラくんは最近……って勉強漬けか。どうしてそんなに勉強してるの?」
「それは…………今は言いたくない」
「そっか!」
「…………聞かないの?」
「『今は』言いたくないんでしょ? 言いたくなったらでいいよ?」
「ありがとう」
勉強に打ち込む理由は見えないけど、そもそも勉強頑張ること自体が良いことなのでなにもいえない。
「でも、偶にはコウと遊んでくれると、私的には安心かな? 今日ここに来た理由って「カルラくんが最近遊んでくれない」ってコウが嘆いてたからだし?」
「あはは……それは、すみません……」
少し苦笑いをして困った表情を浮かべる。
今のカルラくんにとって、コウと遊ぶより勉強の方がよっぽど大事らしい。
「…………よし、覚悟が出来ました」
簡単な雑談と紅茶のおかげで心が落ち着いたのか、話す覚悟が決まったらしい。
カルラくんは背筋を伸ばして僕を真っ直ぐ見据る。僕も思わず背筋を伸ばしてしっかり聞く姿勢に。
「ヒカリちゃん」
「はい、なんでしょう」
「……」
「……」
ん? なんか、え、告白?
僕のことが好きだってのは知ってるけど、流石に順序ってものがあるわけで!
「あのさ、レオン様のこと」
「……………………へ?」
「レオン様のこと、なんだけど」
「…………あぁうん! レオンね! あはは……」
なんか……変に意識してしまった。そうだよね、レオンの婚約者候補なのに簡単に告白なんて出来ないよね。
ははは……。
「それで、レオンがどうかしたの?」
「うん。ヒカリちゃんは、レオン様のこと、好き……なの?」
「…………」
「ヒカリちゃん……」
正直、告白であったほうが幾分かマシだった。
「…………えっと」
カルラくんが何を求めてるのかわからない。カルラくんにとっての最適解がわからない。
「…………わからない」
「わからない?」
「うん」
自分の気持ちもあまりよくわかっていない。
元男ながらレオンは格好いいと思うし、人想いだし、好意的に思うところは多い。
しかし、別にスーちゃんやシャイナちゃんと話している姿を見ても、少ししか嫉妬しない。
条件反射的にガチ照れすることはあるけど、それだけだ。
「レオンは生徒会頑張ってるし、護衛もしてくれてるし、私もよく知らないけど勉強も頑張ってるっぽいから、人としては尊敬してるけど」
「けど?」
「まだ……恋してない、と、思う」
「そうなんだ」
あくまで『まだ』だ。
元男がどうとか関係なく、恋してない。
「じゃあ、ヒカリちゃんって、王妃になりたいの?」
「うーん、それもわかんない」
「どういうこと?」
「…………」
結局、自分がどうしたいのかなんてわからない。
現状に満足してるというのもあるが、前世で『将来』を迎えずに死んだから、なおのことイメージできない。




