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189話 内緒の訪問


 あっという間に一週間が経ちました。


 朝食を食べた後というとても早い時間から馬車を走らせ、現在セルライト公爵家の門前。


「お二人とも、着きましたよ?」


 同行してくれたシャルが先に降り、馬車の扉を開けて、背の低いコウの降車の手伝いをし、僕ははしたなくジャンプして降りる。


「ヒカリ様はしたないですよ」

「ごめんなさい!」

「ごめんなさいじゃありません。特に今日のお姿でヤンチャするのは控えてください」

「いつもヤンチャしてるみたいに言わないで!?」


 シャルに叱咤されながらも通常運転でセルライト公爵家へお邪魔する。


 今日は出迎えのメイドや執事が庭に並んでいるなんてことはないが、代わりにアリアちゃんが出迎えに来てくれた。


 公爵令嬢直々の出迎えなんて、なんて贅沢なんだ。


「アリアちゃんおはよう!」

「ヒカリちゃんおはよう! コウくんもおはよう?」

「おはようございます!」


 今日セルライト公爵家に訪れた理由は、カルラくんの息抜きだ。



 どうやらカルラくん、今大マジで勉強や紳士教育を頑張っているらしく、コウ含めて誰とも約束を取り付けていないらしい。


「カルラのためにも、ちょっとヒカリちゃんとコウくんの力を貸して欲しいな! あとこれも!」


 そう言って一枚の紙を預かり、アリアちゃんは帰宅。


 どうして勉強を頑張っているのかは教えてくれなかったが「いつかわかるよ!」とのことなので気長に待つとしよう。


 因みに受け取った手紙に書いていた内容はーー


・カルラのためにおしゃれして来て欲しい

・ちゃんとレオン様にカルラと遊ぶ許可を取ってほしい

・カルラには内緒にしておいてほしい


 とのこと。


 庭にメイドや執事が一切来客をもてなしていないのは、三つ目のそれが理由だ。



「ごめんね二人とも無理言っちゃって」

「ううん全然! カルラくんの為だしね! なんでオシャレが必要か問いただしたいけど」

「あはは……午後から四人で出かけられたらなって思って」

「なるほど」


 因みに二つ目の『レオン様にカルラと遊ぶ約束の許可』は、少しでも蟠りの芽は摘んでおきたいとのこと。



 そんなわけで一週間前の休みの日、僕は一人で下町で平民の服を見繕いました。


 え、護衛ですか? 家族全員頭の中から抜け落ちてたよね。

 次から気をつけます。冗談抜きで。



 そんなわけで今、僕とコウとシャルは応接室に案内されており、メイドであるシャルも含めてのんびり雑談しております。


 そして少しして応接室の扉が開き、アリアちゃんがセルライト家のメイドのハンナを連れて戻って来た。


「お待たせ! それじゃあヒカリちゃん、よろしくね?」

「あはは、ほどほどに行ってきます」


 そのあと僕だけアリアちゃんに手を引かれて応接室を出る。


 今から何をするのかというと、カルラくんと二人で一緒に勉強をします。


 はい、ただそれだけです。


 ただ、それだけじゃない!


 今からやりに行くのは、好きな人が自分のために勉強を教えてくれるという、男子憧れのシチュエーションだ。


「ふふっ! カルラびっくりするかな!」

「凄くすると思うよ?」


 そもそも何故好きな人が家に来てるの? ってところからスタートだし。



 そんなサプライズを仕込んだまま『コンコン』とノックをして扉を開く。


「おぉ……頑張ってる!」

「……」


 扉が開いたのに一切反応せず、カルラくんは教材と睨めっこしている。


「ヒカリちゃん、私はコウくんと遊んでるから、カルラのことお願いね?」


 一つウインクしてゆっくり扉を閉め、この部屋は僕とカルラくん二人だけになった。



「…………」


 なんか、なんだろう、いけないことしているみたいな気持ちになるな。

 まぁそんな邪な心を抱いたところでやることは変わらない。



 そんなわけで勉強中のカルラくんに一声。


「カルラくん」

「なに姉ちゃ………………え?」


 声の違和感に気付き、思わず振り返る。


「おはよう!」

「ヒ……え!? な!?」


 驚いたような、会えて嬉しくて笑みを浮かべるような、そんな不思議な表情をしたカルラくんはーー


「久しぶり!」

「お……お久しぶり……です!」


 理解が追いついた途端、一気に頬を赤く染め、そして目を輝かせた。

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