186話 王妃教育
「ありがとねレオン!」
「うん、また迎えに行くね?」
レオンに教室まで護衛された時、ある程度人は集まっており、スーちゃんとシャイナちゃんも教室の椅子でのんびりお話ししていた。
「おはよう二人とも!」
「ヒカリちゃんおはよう!」
「おはよう! レオンとの時間は楽しめた?」
「何言ってるの!」
スーちゃんのバカな煽りを流して自分の席に着席。
「ねぇヒカリちゃん、昨日はどうだったの? コウくんの婚約者!」
「ちょっとシャイナ!」
「うーん、なんか、知ってる人で良かったって感じ?」
「知ってる人?」
シャイナちゃんは一昨日の話が気になるようで、目を少し輝かせている。
一方スーちゃんは、ダイアという弟がいるからか、珍しくきょどっている。
「ダイアの婚約者『オハナ・クリアライト公爵令嬢』だった」
「あ、オハナちゃんね? 安心したわ、よく知らない人だったらどうしようかと」
「スーちゃん心配し過ぎだよ!」
見たことないようなへにゃりとした笑みをしている。
「あまり関わりないから知らないけど、クリアライト公爵は……」
そして今度はシャイナちゃんが心配そうにしている。
「大丈夫だよシャイナちゃん! クリアライト家の人とは縁があったし、向こうの人もコウのこと信用してるから!」
「そう、なら心配無用ね?」
あまり晴れた表情はしていないけど、僕とスーちゃんが大丈夫と言っているし、その言葉のまま受け入れたのだろう。
「はぁ……シャイナは良いな? もうブラインさんは婚約決定だし」
「寧ろブラインさんが私たちと同じ気持ちになってるかもね? レオンに『シャイナは渡さん!』って啖呵切ってたりして? ね、シャイナちゃん!」
「二人とも!!」
*
「今日の講義は以上だ。気をつけて帰宅しなさい」
「「はーい!」」
何事もなく今日の講義が終わり、あいも変わらず僕はレオンが来ないと教室を出られない。
まぁスーちゃんとシャイナちゃんが一緒にいてくれるから苦ではないけど。
そんなわけで教室で待つこと十分。
「ヒカリ、お待たせ」
レオンが扉から顔を覗かせ、綺麗な笑みで手を振って来る。
最初の頃は教室に残ってた人がキャーキャー騒いでいたけど、一週間も経てばそんなことはなくなり、それなりに温かい目や嫉妬の目だけで終わっている。
「さて、それじゃあ私たちもいきましょうか!」
「そうね? 部活動は遅れちゃうけど」
「……あ、今日王妃教育か!」
いつも二人とも一緒になって待ってくれているから忘れそうになっていた。
「ヒカリ、ちゃんと冊子は持ってきた?」
「だ、大丈夫! バカみたいに毎日持ってる!」
「それはそれでどうなんだ?」
「別に鞄に入れっぱなしじゃないよ? ただ勉強する機会あるかなって思ってずっと持ってて……」
必死になって口を回すが、果たして言い訳出来ているのかこれ。
「ヒカリちゃん、子供の言い訳みたい!」
「スーちゃん!?」
何故か三人に揶揄われながら、王妃教育が行われる四人で王城の会議室へ到着。
前回は僕が監禁事件に遭ったせいで見送りになったので、顔合わせを除くと、本当に第一回目だ。
「さて、皆んな始めるわよ?」
「「よろしくお願いします!」」
王妃教育の講師は、八年間ずっと『ハウ・オリスティナ』さん。
現陛下の母上で、老人とは思えないほど背筋が伸びて声も張って、活気に溢れている。
「それじゃあまずーー」
こうして講義は一時間ほど続いた。
隣国の文字の読み書きや、単語の理解だけなので対して難しくはない。
がーー
「意味がわからないわ……」
「スーちゃん、そういうものだって諦めるしかないわよ?」
「あはは! スーちゃんが大苦戦してる!」
「ヒカリちゃん!」
僕とシャイナちゃんはある程度やれてるが、スーちゃんだけ頭から湯気が出ている。
「難しく考える必要ないのに?」
「だよね? 国ごとに文化が違うのは当たり前なのだから!」
「ムムム……」
スーちゃんが苦戦しているのは、文字の書き方。
日本語もとい『ポーンロンド文字』は右から左文字を書くが、隣国では左から右に書いている。
「反対から書くだけなのに……やけに難しく感じるわね!」
「あはは……」
そもそも言語形態も違うし、僕もシャイナちゃんも苦戦していないわけでもない。
「とりあえず、今日の課題はこのプリントの文字を書き写すことよ! 時間も来たからお終いにするけど、ここは好きに使ってくれて構わないわ!」
「はい、ありがとうございました!」
「それじゃあね三人とも!」
それだけ言い残してハウ様は会議室を去っていった。




