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176話 公になった監禁事件


「うおぉぉ……」


 レオンに送られて学園に着くと、昇降口には人だかりが出来ており、そその人だかりの原因を見にいく。


 そこには一枚の貼り紙が貼り出されており、皆んなの視線はその一点に注がれていた。


 その内容はーー


「監禁事件について……か……」


 思い切り僕のことだった。


 書いている内容自体はシンプルで、学生であろうと逮捕に向けて動くが、自首すれば多少温情をかけます。


 とのこと。



「監禁だって? なんでそんなこと?」

「やっちゃダメなラインもわからないやつがいるんだな」

「そもそも誰が監禁されたの?」

「どこかに名前書いてたりしない?」


 学生たちは見事にゴシップに食いついていており、登校してくる学生もほぼ全員同じように吸い込まれている。


「レオン行こう」

「そうだね」


 正直当事者である僕からすれば、いい気分がしない。

 でも、あの貼り紙が気になる気持ちをわかる。僕が野次馬だったら確実に見入るだろうし。


 本当に複雑な気持ちだ。


 どうにか混雑する人溜りを抜け、自分の教室に向かう。


「ありがとねレオン」

「それじゃあまた昼休みにね?」


 そして簡単に別れを告げて教室に入る。


「あ、ヒカリさん……」


 すると、全員が一斉に僕の方を見つめ、思わず身体が硬直する。


「お……おはよう?」

「おはようヒカリさん、昇降口の貼り紙見た?」

「あー……うん、見ました……」


 そんな中、二人のクラスメイト男女が一切臆せず話しかけてきて、逃げ方がわからないのでそのまま答えた。


 正直この話題には触れて欲しくないけど、タイムリーの話題だから今日一日は付き纏いそうだ。



「監禁事件だってさ? 朝から自警団も学園にいるの見たし、なんか嫌な感じだよな?」

「そう……だね……」

「俺、新聞部入ったんだけど、ヒカリさんは何か知ってたりする? 犯人逮捕の役立つ情報とか集めたいし!」

「えっと……」

「私も、丁度最初の活動何にしようか迷ってて、何か知ってることあったりする?」


 監禁された張本人なんだよな……。



「ちょっと、ヒカリさん困ってるでしょ!」


 どうにも答えられずにおどおどしていたら、一人の女性が助け舟を出してくれた。


「あぁごめん、ちょっと興奮し過ぎちゃって……ヒカリさんも、ごめん」

「ご、ごめんなさい! 先走り過ぎました!」

「あぁ……うん、大丈夫」


 少ししょんぼりしながら二人は僕の下を去っていき、助け舟を出してくれた女性が優しく肩を叩く。


「全く、ゴシップは娯楽のためだけにあるものじゃないのにね?」

「少し落ち着けば、ヒカリさんが困ってるってわかるのに」

「あはは……助けてくれてありがとう? 饅頭売ってる時にもあったよね?」


 よく顔を見れば、饅頭売りをしていた時に声をかけた女性二人だった。


「はい『スイカ・ミナモ』と申します」

「私は『サン・タカノ』です!」

「ミナモとタカノ…………同じ部活動にシイラギさんとソラさんいるんだけど、きょうだい?」


 二人とも、少し前に下駄箱で時間潰しに付き合ってくれた人の家名と同じだ。


「きょうだいというか、双子だね? 私もスイカも」

「家も近いから、自然と仲良くなったよね?」

「なるほど」


 だからシイラギさんとソラさん二人揃って同じ部活動にいたんだ。


 多分この二人も同じ部活動なんだろうな。


 このクラスにいないから学力には差がありそうだけど。



「というかヒカリさん、もしよかったソラに勉強教えてあげてくれない?」

「え?」


 サンは少し眉間に皺を寄せて両手を合わせてきた。


「あいつ、五組にいるんだよ今、頭悪過ぎてビックリだよ」

「あはは……」


 この学園、一組から八組まであり、成績上位者を一組から順に割り振っている。


 つまり、五組は半分より下。


「スイカと勉強するといつもいちゃつくからダメなんだよ」

「ちょっとサン!! いちゃついてなんか……」


 スイカは顔を赤く染めて俯いている。これはいちゃついているな……。


「気が向いたらでいいからさ、部活動前の一時間とかでもいいから……」

「サンが教えるのはダメなの?」

「…………わからないのがムカつき過ぎて発狂しちゃうわ?」

「あはは……」


 なんというか、きょうだいだな……。


「学園内なら派閥も身分関係ないし、この気にバカを治して欲しいわ?」

「……二人は『公平主義』なの」


 あまりにラフに話しているから、自分の派閥かどうか気になってしまった。


 もし『公平主義』なら仲良くなるのも容易だろうし。


「え? 私もスイカも『貴族至上主義』よ? でも学園はそんなの関係ないでしょ?」

「なるほど…………機会があったらになるけど、考えておくよ」

「ごめんね、変な役押し付けちゃって」


 そこからは軽く雑談しながら席に着き、スーちゃんとシャイナちゃんが来るのをのんびり待った。



「当然だけど、過激派と穏健派がいるんだよな」


 貴族至上主義だからと、全員が全員平民に怒鳴り散らかすわけでもないし、派閥って、思ってたより面倒かも。

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