177話 悲劇のヒロイン?
「席につけ、ホームルーム始めるぞ」
「「はーい」」
ジョン先生が教室に入ってきて、生徒がぞれぞれ席に着く。
「今日は少し大事な話がある」
普段より張った声が教室を響かせ、全員の背筋が伸びる。
「一昨日だが、とある生徒一人が監禁事件にあった。中には誰が監禁に遭ったか察している人もいると思うが、決して憶測だけで名前を出して話さないよう心がけなさい」
きっとこのピリついた空気を纏うクラスで、容赦なく名前を出すバカはいないだろう。
凄く有難い。
「それから自警団ごっこなんてバカな真似もするな。事件の調査は君たちの仕事じゃない。新聞部も、あまり大々的に記事は出すな。これは校内ゴシップじゃなくて、れっきとした事件だ。しっかり弁えるように」
「はい」
新聞部の二人は少し応えたのか、力無く返事した。
「それじゃあ講義を始める」
重要なことを端的に伝え、いつも通り講義が始まる。
*
今日の講義の一コマの体育の時間。
「ヒカリちゃん?」
「……シャイナちゃん?」
ぼーっと体育倉庫を眺めていた時、シャイナちゃんがポンと肩を叩いて意識を呼び戻す。
「大丈夫?」
「え? 大丈夫だけど……」
「本当に? 真剣に体育倉庫見つめてたから……」
「うん……」
身体は全然大丈夫だけど、少し気持ちが不安に襲われる。
「何も心配いらないわよ! 自警団も動いてるし、レオンがいない時は私とシャイナがヒカリちゃんを守るから!」
「スーちゃん!」
「そうね? お父様が幾つかスカラ侯爵を潰す手段持ってるし、それ使うのもありかしら?」
「シャイナちゃん落ち着いて……」
とりあえず僕の周りは今、非常に頑丈だ。変にトラウマ植え付けられそうになっているけど、安心安全なのは間違いない。
「ヒカリちゃんあそこで監禁されたの? 可哀想……」
「……憶測で話すなって先生言ってたよ、リョウさん」
残念、安心安全なのは間違いだった。
「でも事実なんでしょう?」
「知らない」
まるで確信しているように詰め寄ってくる。タイムリーな話題だから話のきっかけにしやすいのだろうけど、凄く嫌。
「何々、リョウどうしたの?」
「いや? ヒカリちゃんがずっと体育倉庫見てたから、あそこに監禁されたのかなって?」
「あのさぁ……」
もう普通にイライラしてきた。
「おいおいリョウ、憶測で話すなって先生言ってただろ?」
「そうだけど、気にならん?」
「超気になる!」
「だよな? ねぇヒカリちゃん…………あれ?」
僕は二人が会話に夢中になっている間に、スーちゃんとシャイナちゃんを引き連れて離れて行った。
「もう本当無理!」
シンプルに不愉快。嫌すぎる。
「ヒカリちゃん良いことないわね?」
「本当にそう……」
二度の監禁に、倫理観のない人に目をつけられて、学園の外ではルージーに暴力を振るわれ……。
「悲劇のヒロインだなぁ……」
まぁ悲劇のヒロインは最終的に幸せを掴むから素敵な話になるわけで、僕は未だどうなるかわからない。
「そういえば、プライベートの護衛はどうするのヒカリちゃん」
「うーん……」
そっちに関してはマジで全く決まってないんだよな。
まぁそもそもあんまり外出しないから、親やメイド、執事と一緒に出掛けるのも手段ではある。
「考えておくよ」
「万が一の時は、私を頼ってね? お兄様を護衛に派遣するわ?」
「ブラインさんが護衛……贅沢だなぁ……」
「レオンが護衛なのに今更よ?」
「王族が護衛か……贅沢だなぁ…………」
伯爵なのに、王族よりVIP待遇受けている気がするな?




