175話 婚約者候補のきまり
翌日。ヒカリちゃんとっても元気になりました!
「行ってきます!」
「馬車の手配は済ませてあるから、ちゃんと乗って行きなさいね?」
「はーい!」
有り余っている元気を声に乗せ、軽い足取りで正面玄関まで向かい、停留している馬車を見つける。
「今日から馬車か……」
なんだかんだ歩いていくのが楽しかったから、少しショックではあるけど、リョウ・ミドロに遭わずに済むのは少し嬉しい。
そんな気持ちで馬車に乗り込もうとした時、何故か突然扉が開いた。
「おはようヒカリ」
「………………え、へ!?」
そして中から顔を見せたのは、レオンだった。
「なんで…………え!?」
「あれ、ヒカリのお母様から聞いてない?」
「何が!? 何も聞いてないよ!?」
本当になんでいるの!?
思わず振り返って屋敷の扉を見つめると、お母様がニコニコしながら手を振っており「ヒカリをお願いね!」と大きな声で叫んでいる。
「お母様!!」
マジでこういうサプライズ多すぎる!
「僕じゃ役不足かな?」
「そんなことない! よし行こう、今すぐ行こう!」
少し寂しそうな声をしたレオンに罪悪感が刺激され、そんな気持ちを振り払うように勢いよく馬車に乗る。
「なんか、スーちゃんとシャイナちゃん出し抜いてるみたいで嫌だな」
「そんなことないよ? というか、お母様とスティアとシャイナの三人が、ヒカリの護衛は僕にしろって、一昨日話し合ったんだ」
「あ……なるほど……」
王妃様だけでなく、二人もしっかり噛んでいた。
昨日の手紙で『二人の許可も得ている』って書いてたけど、流石に発案者だとは思ってなかった。
そんなことを思っていたら馬車が動き始め、歩きとは比べ物にならない速度で学園を目指す。
「スーちゃんとシャイナちゃんって、なんでこの状況良しと思ってるのかな……」
「どういうこと?」
「だって、一応婚約者候補だし……」
いくら歪み合いがない婚約者候補たちでも、どう考えても二人にメリットがない気がする。
「ヒカリちゃんって、もしかして婚約者が誰になるか、決めるのが僕だと思ってたりする?」
「………………違うの!?」
いや寧ろなんで自分の婚約者を自分で選べないの!?
「王族が私欲で伴侶を決めると、王妃教育を受けてない人を選ぶ可能性があるから、最終的にはお父様が決めるんだ」
「な……なるほど?」
要はどこの馬の骨に一目惚れをしても、王族の義務を全う出来ないから、陛下自身が正式に婚約者を決めますよってことか。
そのために幼い頃から婚約者候補を決め打って絆を深めていたのだろう。
「そもそも、スティアもシャイナも、僕がヒカリに恋してること知ってるしね」
「なんでぇぇぇ!?」
その上で王妃の座をちゃんと狙いに来てるの凄すぎだろ!?
「勿論僕はスティアもシャイナも好きだよ。最終的に誰が婚約者に選ばれても『本当はあの人がよかった……』なんて思ってしまったら、選ばれた人に失礼極まりないからね」
「それはそうだけど……」
「けど、親愛と恋愛が違うように、僕はヒカリを異性として好きなんだ。スティアより、シャイナより、ヒカリが好きなんだ」
「なっ……なっ!?」
僕は行き場のない感情が心内で暴れ始め、言葉を返せない。
隠れる先のない馬車で、僕は何故か愛の告白に近い言葉を受け取っていた。
「だから正直、一昨日婚約者候補を外れないって言ってくれて安心したんだ」
「じ、自分から言っておいてそれぇ!」
「好きな人が自分のせいで傷ついたって知れば、誰だって同じことをすると思うよ?」
「それはそうかもだけど!」
なんかもう色々わけがわからない。
考え方と言葉と行動が食い違い過ぎてる。
いやいくら王族とはいえ、十三歳の子供に合理性ばかりを求めるのも難しいけどさ。
ヒカリちゃん、もうだいぶ元男の部分がなくなっているようで、普通にときめいていますよ今。
「全く……」
急に気持ちが荒ぶって途端に落ち着いて、体調戻ったのに妙に疲れてしまった。
「なんか、元気そうで安心した」
「ありがとね本当」
有り余ってた元気が発散され、ようやくいつも通りのヒカリちゃんに戻りそうです。




