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174話 護衛を務める人は


「…………暇だ」


 翌日。相変わらず熱があり、ぼーっとしているだけで時間が過ぎていく午前。


 昨日同様、お母様とシャルは僕の部屋で経営について話しあっている。


 まぁ何話してるかさっぱりなんだけど。


 きっと講義で習う経営学基礎とか習い終えたら解るようになるんだろうな。



 そんなことを思っていたら、ノック音と共にミューゼが一枚の手紙を持って入ってきた。


「失礼いたします。ヒカリ様宛に王族から手紙が届いております。恐らく護衛の件かと思われます」

「ありがとうミューゼ!」


 寝た状態のままミューゼから手紙を受け取り、印を取って手紙を開く。


「ヒカリ、私にも見せて頂戴?」

「うん」


 お母様がベッドに座り、僕も身体を起こして読み始める。


「「…………」」

「奥様?」


 固まる僕とお母様を見つめるシャルも、思わずと言った様子で手紙を覗く。


「…………随分と、思い切ったことしますねトワ様」


 手紙に書かれていたことは、護衛のことで間違いない。


 ただーー


『学園での護衛は、レオンに一任するわ! 婚約者候補一人守れないようなら、そもそも国王として相応しくないから、それの練習も兼ねて、ね! 安心して、スティアさんとシャイナさんも意義なしって言ってるわ!』


 とのこと。



「まぁ、トワも護衛に関しては反対だろうし、妥協に妥協を重ねてレオンに任せたのかもね?」

「相変わらずですねトワ様……」


 なんというか、僕を虐める侯爵的には、完全に逆効果になったな。

 意趣返しというのか、付け入る余地がないとの見せしめというか。


 頭が切れる王妃様だこと。


「レオンが護衛か」


 せいぜい今までより四人でいる時間が増える程度だろうけど、一人の時間が減るより、なんかよっぽど嬉しく感じる。


「ヒカリ、よかったじゃない! 顔が綻んでるわよ?」

「へ!?」


 嘘!? にやけてたマジ?


「顔も赤いですね」

「熱あるからね!」


 顔が赤いのは絶対発熱のせいだよ! にやけてたのは多分気のせいだ!


「ヒカリ様、昔はレオン様に全然興味を示さなかったのに、いつの間にか絆されていますね」

「そんなわけないでしょ!」


 なんなんだこのメイドは! そんな深い仲のわけないでしょ!


 確かに僕は婚約者候補だけど、スーちゃんとシャイナちゃんもだし、それにーー


「……」

「なんか爆発音聞こえましたけど」

「気のせい!!」


(それに……好きな相手にしか……キスってしないよな……)


 ダメだ、熱が出てるからか変な思考に行ってる。


 沸騰しそうなほど赤くなった顔を隠すように布団に潜り、うずくまって目を閉じる。


「って何してるのマジで、こんな行動恋する乙女しかしないでしょ!」


 マジで落ち着け僕。色々キャラが噛み合ってないぞ。



「ヒカリったら、レオン様が護衛になってくれて余程嬉しいみたいね?」

「いつのまにレオン様を慕うようになったのでしょう」


 僕の葛藤など気にもくれず、お母様とシャルは布団で踠く僕を微笑ましそうに眺めていた。





「んん……」


 バカみたいにもがき苦しみ、気付けば少し寝ていたようで、部屋でお母様とシャルがティータイムをとっていた。


「あらヒカリ、起きたのね?」

「おはようママ」

「ママ?」

「あっ……」


 ヒカリちゃんになってから初めてママなんて言った。これまで、幼い頃からずっと「お父様」「お母様」って呼んでたのに。


 やっぱ本調子とは程遠い。


「ヒカリ、熱が出て凄く甘えん坊になったわね?」

「えっと、今のは違くて……」


 本当にどうした僕……。


「今更ですが、ヒカリ様は愛嬌がありますね。貴族の人間にしては珍しいですね」

「えっと……そうなの?」


 シャルは何故か関心したように見つめてくる。


「そうですね。大抵、自分が世界の中心と思い込んでいる人か、権威のあるものに媚を売る人ばかりですから」

「酷い言い様だな……」


 スーちゃんとシャイナちゃん、アリアちゃんがそうとは思わないけど、セイナ、ルージー、ミカを見ると大いに納得出来る。



 多分アリアちゃんたちが少数派なんだろうな。


「トワが王妃になってからの手の平の変え仕様はすごかったわね? 今更媚売っても遅いのに」

「あはは……」


 やけに生々しい話を聞いてしまったが、仮に僕が王妃になったら、セイナたちはどんな反応するんだろう……。



 まだ先の見えない未来は、案外『ザマァ』物語になっているのかもしれない。

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