16話 教育過程
あれから一週間。
家庭教師の契約が決まり、四歳の内は一週間のうち三日。
本来なら五歳から一週間で五日契約なのだが。まだ四歳なので、様子見がてら三日だそうだ。
「ヒカリ様は、教育過程をご存知ですか?」
「きょういく……かてい?」
言葉はわかるが、理解が追いつかない。
「貴族の子供は、五歳からお勉強、七歳から音楽教育というものがあり、十歳から淑女教育というものがあります」
「なるほ……ど?」
七歳から音楽頑張らなきゃいけないのか。完全に前世アドバンテージゼロだからしんどいかもな……。
そして元男に淑女教育が待っているという事実が辛い。
「こうして一通り教育を終え、十二歳から学園生活が始まります」
「がくえんせいかつ?」
「はい。王族、貴族の子供や商人の子供、優秀な平民が勉学のために通う場所です」
お堅い言葉を使っているが、要は学校だ。
「ここでは地位や身分は完全に意味をなさない、完全平等制です」
「あいっ!」
まぁそうでないと意味ないよな。学ぶために来てるんだから。
「あれ? まほうは?」
「魔法は学園で学びます。十歳で魔力測定がありますが、淑女教育と被るので、向上心の強い者しか余程家庭教師を取りません」
「えぇぇ?」
淑女教育はきっと大変だろうし、いくら魔法でも流石に並行してやりたくないかもな……。
「ヒカリ様の場合、理解力がありますし、教育が前倒しになって、十歳で魔法を学ぶ時間があるかもしれませんね」
「はっ! がんばる!」
一気にやる気が出て来ました! 元高校生の四歳児は単純なのです!
そんなわけでお勉強を、小学一年生みたいな文字の読み書きを始め出した。
「……」
正直、ヒカリちゃん、かなーり物足りない!
いや日本語もといポーンロンド文字はヒカリちゃんの脳には新鮮だし、どんどん学びが深まってく感じはある。
でも、理解力が高校生だから、この程度直ぐ覚えられるんだよ!
そんな物足りない時間を過ごす事一時間。
「……凄いわね」
ユース先生はガチトーンで感心している。
「ヒカリちゃん、このお勉強物足りないでしょ?」
「あい」
ヒカリ様と言うことすら忘れ、僕の真意を当てて来た。
「オズワルド様とフィリア様はヒカリ様にどんな教育したんだろう……」
「……」
なーんにもしてません! 家族と水入らずの時間をたくさん過ごしていただけです! 前世の僕に感謝してよねヒカリちゃん?
「ヒカリ様は、どうして勉強したいのですか?」
「どうして?」
「はい。勉強は嫌いな人が多いのですが、ヒカリ様は楽しそうにされています。今日は物足りなさそうでしたけど……」
何か気になことでもあるのか、それとも純粋な好奇心かわからない。
だから何も偽らずに答えることにした。
「アリアちゃん、アリア・セルライトちゃんと本をよみたいの!」
「セルライト……セルライト公爵様!?」
ユースが目を見開いて声を荒げる。
「アリアちゃんしってるんでしゅか?」
「勿論です。セルライト公爵と言えば、ポーンロンド王国の四大貴族の一角です。ご存知……でしたでしょうか……」
「よんだい……きぞく?」
普通に聞いたことのない単語が出て来たが、令嬢系ラノベとかだとテンプレなのだろうか。
「四大貴族とは『オーラライト公爵』『セルライト公爵』『テンライト公爵』『ミクロライト公爵』の四つの公爵からなる貴族です」
「はぇ〜」
数秒後には忘れてそうだけど、僕も伯爵令嬢だから覚えておかないといけないよな。
アリアちゃんだけで完結したい。
「じゃあ、おうじさまのおくさんも、よんだいきぞくの人なの?」
自分は除外されてますように! と、淡い期待を込めて質問する。
「いえ、王妃候補は公爵、侯爵、伯爵の三貴族から選ばれます。ヒカリ様も王妃候補に入っておりますが、ご興味がありますか?」
「にゃいっ!」
「……へ? ないのですか?」
「ありましぇーん!」
元男が男に惚れるだと? それはない!
ジェンダーが嫌いなわけじゃないけど、自分は同性愛者じゃない!
いや今は伯爵令嬢だから……あれ? 今の僕ってどういう状況?
「珍しいですね。ヒカリ様のご年齢だと、王妃に憧れるものなのですが……不思議です」
ユース先生、世の中不思議なことばかりなんですよ?
転生とか、転生とか! 転生とか!?




