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168話 行方不明


「ヒカリちゃん、帰って来ないね?」

「うん……」


 ヒカリちゃんが食堂を出て二十分。


 流石に講義再開の鐘も鳴りそうな時間だし、全員解散してクラスに戻ったは良いけど。


「大丈夫かな? また地下室に閉じ込められてーー」


 シャイナが言葉を紡ごうとした時、講義開始の鐘が響き、ジョン先生が「席につけ」と声をあげて教室を静かにさせる。


「先生! ヒカリちゃんが戻って来てません!」


 私は思わず声を上げるが、少し考え込んだあと「新学期早々サボりか……」とため息をつくだけ。


「ヒカリちゃんはそんなことする人じゃーー」

「わかった、とりあえず講義始めるぞ」

「っ……」


 私の意見は取り合って貰えず、そのまま講義が始まる。



 シャイナもかなり不安なようで、講義に集中出来ていない様子だ。


「……少し席を外す。その間にこの問題解いておけ」


 少ししてジョン先生は教室を後にして、クラスはペンが擦れる音だけが残る。

 そんな中でも私の頭はヒカリちゃんで一杯で、心配で講義に集中出来ない。


 だってヒカリちゃんは講義をサボるような人じゃない!



「スティア、シャイナ少し良いか」


 少ししてジョン先生が戻って来たと思えば、私とシャイナを廊下に呼び出した。


「お前ら講義集中出来てないだろ」

「はい……」

「だってヒカリちゃんが…………サボりなんてあり得ないわ」


 そもそももしサボるなら、ヒカリちゃんは私かシャイナも誘うはず。


「さっき保健室に行ったが、ヒカリは来てなかった。あいつがサボるような人じゃないってのは一ヶ月見てればわかる」

「先生……!」

「講義内容はあとで教えてやるから、探してこい」

「あ……ありがとうございます!」

「スーちゃん行こう!」

「うん!」


 私とシャイナはジョン先生に頭を下げ、二人で講義中の廊下を駆け出した。





 とりあえず私たちは二手に分かれて探すことにした。


 地下一階〜二階がシャイナ、三階〜最上の六階が私。


 探し終えたら下駄箱集合にして二人で駆け出す。



 どの教室も講義中だから大声を出して探せないけど、逆に言えば入れる教室は限られるから探しやすい。


 本当は走っちゃいけない廊下を疾走し、講義をやっていない教室を開けては閉じ、また走り出しーー



「何で……いないの……!」


 切れる息もお構いなしで探し回り、気付けば最上階。


 見渡しの良い社交界会場の最上階も、この時間は人っ子一人ない。


「ヒカリちゃん……」


 もしかして、また地下に監禁された?


「早くシャイナと合流しないと!」


 不安な気持ちに駆られながら急いで階段を駆け下り、一階の下駄箱に向かう。


「スーちゃん!」

「シャイナ、いた?」

「ううん、何処にも……」


 既にシャイナは集合場所の下駄箱におり、残念ながらヒカリちゃんを見つけることは出来なかった。


「あと探してないのって……」

「グラウンドと屋上だけど……」


 屋上は常時施錠されており絶対にいけない。


 そうなるとグラウンドだが、こんな見晴らしがいいのに監禁なんてどうやってーー


「スーちゃん、体育倉庫……」

「あっ……!」


 丁度いいタイミングで講義時間終了の鐘が鳴り響く。


「スーちゃん急ごう!」

「うん」


 再び二人で廊下を駆け、二階にある職員室へ向かう。



「失礼します!」


 私はノックすることすら忘れて扉を開く。


「こら、入る時はノックしなーー」

「先生、体育倉庫の鍵貸してください!」


 シャイナも慌てているようで、先生の声に被せて手をだす。


「あのな、聞いていーー」

「人が閉じ込められてるかもしれないんです! 早く!」

「何なんだ君たちは!」


 多くの先生が動揺している中、一人だけ落ち着いた声で私たちに声をかけてきた人がいた。


「落ち着きなさいスティアさん、シャイナさん」


 シン・オリスティナ。国王陛下であり、この学園の校長先生だ。


「シン様、ヒカリちゃんが!」

「ヒカリちゃんが居なくなっちゃって!」

「…………そう言えば、社交界の日にも監禁未遂があったってユアンから聞いてたね」


 シン様は顎に手を当て、少し考えたのち、引き出しから鍵を取り出す。


「少し外出してくるよ。念の為、誰か保健室にコンタクトを取ってくれないか?」

「わ、わかりました」

「それじゃあ行こうか」

「「はい」」


 シン様の後をついて、下駄箱で靴を変え、小走りで体育倉庫へ向かう。


「今日、五限と六限は、グラウンドを使うクラスはあっても、体育倉庫を使うはなくてね」

「シン様?」

「こんなことを言いたくはないけど、監禁するにはもってこいの時間なんだ」


 鍵を弄りながらそう語り『カチャン』と鍵が開く。


 そして、重くて軋む扉を開くとーー


「ヒカリちゃん!?」


 中には、水をかけられてビシャビシャのヒカリちゃんが、苦しそうに倒れていた。


「ヒカリちゃんしっかりーー熱っ!」


 私とシャイナはなりふり構わず駆け出し、急いでヒカリちゃんの肩を揺するが、濡れた制服からでもわかるほどの高熱が出ていた。


「まずいね……二人とも、ヒカリさんは僕が運ぶから、職員室から予備の制服貰ってきてくれ」

「わ……わかりました!」


 シン様はぐったりしているヒカリちゃんを背負い、私とシャイナは、大急ぎで職員室に向かった。

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