166話 大真面目でヤバいやつ
今日は王妃教育二回目。
前回の顔合わせと違って、しっかり授業があります。
「やばい……何もしてない……」
そんな中、僕は教室で机にへばりついていた。
部活動に夢中になり過ぎて、完全に王妃教育のことを忘れていた。
マジで一ページも開いてない。
「私も何もしてないよ?」
「シャイナちゃんも?」
「私もしてないわよ?」
「スーちゃんもなんだ、なんかホッとしちゃった」
ただ文字を覚えるだけだし、難しくも何ともないだろうけど、王妃教育だから無駄に張り詰めてしまう。
「ねぇ、その王妃教育の冊子見せてくれない?」
「え……」
隣で座っているリョウさんがグイっと近づいてきてそんなことを言い出した。
「ちょっと無理……かも」
「少しくらいいいじゃん!」
「っ……」
いや無理、どう考えても大事な冊子ってわかるでしょ。
「俺興味あるんだよね? ヒカリちゃんがどんな勉強するのか」
「ごめん嫌だ、これはーー」
結構本気で嫌悪感を抱いて言葉を吐く。
「えぇ、少しくらい良くね?」
「そうだよ、別に取るわけじゃないんだしさ」
「そうだよな? 王妃教育って何やってるか気になるし」
すると、リョウと親しい取り巻き男女六人が、好奇心に任せて集合する。
学園は始まって一ヶ月ちょい、もう派閥の中心にいるんだ。
厄介過ぎる。
「ごめんなさいね「王妃教育は王族の秘密だから誰にも見せるな」って言われてるのよ?」
「……そっかぁ」
そんな中シャイナちゃんが助け舟を出してくれ、リョウの派閥の人が残念そうな顔になる。
まぁ「誰にも見せるな」なんて完全な嘘っぱちなんだけど。
「ならさヒカリちゃん、今度俺に隣国の文字教えてよ!」
「え……?」
「冊子見せるのはダメでも、王妃教育の内容はいつも同じらしいし、俺も気になるんだよね!」
「それ……は……」
やばい、何も逃げ道思い浮かばない。
「無理ね?」
「……俺は別にスティアさんには聞いてないんだけど?」
「無理よ? 隣国の言葉覚え終わる頃には、婚約者が決定して王妃教育が『終わる』か『本格化』するもの。あなたに入れ込む時間なんてないわ?」
「…………」
もの凄い喧嘩腰で話しているが、王妃教育始まったということは、既にそういう時期に差し掛かっているということだ。
「えっと、そういうことだから、ごめんね!」
僕とスーちゃんとシャイナちゃんは、三人で仲良く会話を終わらせた。
本当にこの人とした話し合いって何だったんだよ……。
*
その日の昼休憩中。
いつものように、レオンとユアン様、アリアちゃん、スーちゃんとシャイナちゃんで食堂の一角を使っていた時。
「ちょっと席外すね?」
「わかったわ!」
お花を摘みに食堂を出て、お手洗いに向かい、そのまま食堂に戻る予定だった。
そう、予定だったんだけど……。
「ん?」
お手洗いの外で、見たことあるようなないような人が一人僕を見つめていた。
(何だろう)
それでも僕は特に気にせず出て食堂へ向かおうとした。
「ちょっと待ちなさい」
「え? わっ!?」
しかし、相手は僕に用事があったようで、強く手首を掴まれ、そのまま強引に手を引かれていった。
特に話すとかもせず、ずるずると引っ張られる。
何かされても、ちらほら人はいるから目撃証言は取れそう。
そんなことを思いながら引っ張られた先はーー
「体育……倉庫……?」
「えぇ! ここならちゃんと話し合い出来るでしょ? シャイナ・ミクロライトもいないことだし」
「……セイナ・スカラ」
「『侯爵様』をつけなさい、伯爵」
傲慢にも、連れ去る仕事を取り巻きに任せた『セイナ・スカラ』がいた体育倉庫だった。
そして、その取り巻きも数人。
「久しぶりね、会いたかったわ?」
「私は会いたくなかった……」
ヒカリちゃん、学園に入って、二度目の監禁危機に瀕しています……。




