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163話 ナツの彼氏


「ナツがどうなるか楽しみだね彼氏くん!」

「本当に……楽しみです」


 なんか凄い噛み締めてる。ちょっと見てて面白い。

 他人の恋愛ってなんでこんなウズウズするんだろう。


「フロムくんって、ナツのどんなところが好きになったの?」

「なんてこと聞くんですか!? あっ、申し訳ございません」

「良いよ気にしないで? んでんで?」

「うっ……えっとですね……」


 ナツと過ごした日々を思い出しているのか、少し目を泳がせる。


「ナツって、関わりやすいんですよ。新しいクラスでも凄く馴染んでるし」

「おぉ、ナツ凄い」


 僕なんて公爵の人間に保護されて生きてるのに。


「貴族の人間にも臆せず話すから、かなり好かれてるけど凄く嫌われてて」

「……」


 そういえば昔、ユアン様にも似たようなことを言われた記憶がある。

 ナツの場合は絡まれに行っている構図だろうけど、それでも絡まった糸の中心にいる存在だろう。


「僕のクラス、平民少ないから、せめて僕だけは、絶対に味方でいたいなって思ってたら、いつのまにか……」

「好きになっちゃったんだ」

「はい…………なんか恥ずかしい」

「そんなことないよ! 素敵な理由じゃない!」


 なんか、聞いててムズムズする。

 正直顔は好きとかじゃなくて良かったって安心感は凄いある。


(ちゃんと性格が好きなんだ)


 そんな話をしていたら、メイ様とナツがVIPルームから出て来た。


「どう? 凄く似合わない?」

「フ、フロム、どうかな?」

「…………」


 出て来たナツに、フロムは魅入っていた。

 白のワンピースというシンプルスタイルだが、そもそも平民がこんな服にオシャレを見出すこと自体、未だ少ない。


「ほらほら、早く感想言ってあげなさい!」

「はっ……!」


 僕が肘で小突くと、魂が戻って来たように息を吹き返す。


「凄く……似合ってます……」

「あ、ありがとう」

「「……」」


 湿度高っ!?


 メイ様も困ってるし、店員さんたちも居た堪れなさそうだし、どうすればいいの!?





 あれからメイ様がナツを着せ替え人形にして、今度はフロムさんが着せ替え人形にされています。


「なんか、公爵様に買っていただく日がくるなんて……」

「あはは……」


 あれはメイ様だからなんだよな……。


「そういえばヒカリ様」

「どうしたの?」

「ヒカリ様って、今何してるんですか?」

「……どういうこと?」


 あまりに脈絡のない質問に首を傾げるしか出来ない。


「私のクラスにモモちゃん『モモ・ナデシコ』がいるんだけど、ヒカリちゃん部活動頑張ってるって」

「モモさんと同じクラスなんだね?」

「はい! モモちゃん本当に可愛くて人気者ーーじゃなくて!」


 脱線しそうになった話を無理やり軌道修正して続ける。


「新・音楽部と新・ダンス部行き来してるって言ってたし、ヒカリ様これから王妃教育だし、なんか、パンクしちゃいそうだなって」

「……うーん、そうだね」


 確かにやりたいことが多過ぎて、色々手をつけてる感じはする。


 シャイナちゃんは『元気が取り柄、そのままでいて欲しい』って言ってたけど、自分が気付かぬうちに、夢中になれることを探していたのかも。



「私も、わかんない」

「自分のことが?」

「うん。でも、とりあえず『新・音楽部』は続けたいな?」


 正直もうダンスは懲り懲りだ。アイドルダンスやり終えたらもうお終いでいい。


「……ヒカリ様でもわからないことってあるんですね?」

「当たり前よ! 私だって人間一人、ナツと大して変わらないわ?」


 貴族だの身分だの色々あるが、僕もナツも悩める乙女だ。


「こういう話してると、ヒカリ様と同じ学年だったら楽しかったかもなって考えちゃいますね?」

「それはわかるわ! ナツと同じ歳だったら、ルカとアリアちゃんも同い年になるし、楽しくなりそうね!」

「ヒカリ様とアリア様がユアン様の王妃争いするのかしら?」

「ユアン様は…………いいかな?」

「え!?」


 そんな風に話をしていたら、フロムさんのマネキンも終えたようで、ばっちり決めた姿にまたナツが照れていた。


「ヒカリちゃんはどうする?」

「私は……帰ります。ちょっと、やりたいことが出来たので」


 なんとなく町歩き始めたけど、今は部活動を頑張る時だ。


「そう? また今度着せ替えさせてね?」

「はい! ありがとうございました! またねナツ!」

「はい、またお会いしましょうヒカリ様!」


 僕はそのままの足で店を出て家に戻り、残りの時間、自分で定めた課題の『アイドルダンス』の練習に時間を費やした。

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