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161話 当てのない町歩き


 翌日。


 部活動で定めた目標まであと六日。


 だからといって歌を頑張ったりダンスを頑張るわけでもなく、自室でのんびり紅茶を飲んで過ごしています。


「平和だ……」


 まぁシャルに叩き起こされたり、王妃教育の冊子を読まされたり、平穏とは程遠いけど……。


「そう言えば、コウ見てないけど……」


 どこかに行っているのだろうか。


 最近は学園でバタバタしててロクに関われていないし、少し遊んでやろうと屋敷を彷徨く。


「……いない」


 全然見当たらない。なんならお父様とお母様もいない。


「おやヒカリ様、どうされました?」

「ミューゼ、丁度良いところに! お父様とお母様とコウ知らない?」


 偶々通りかかったミューゼを捕まえ、探し人を尋ねる。


「あぁ、奥様と旦那様とコウ様は『オーラライト公爵家』に行かれましたよ?」

「え、スーちゃん家に?」

「えぇ。なんでも、ダイア様と遊びたいのだと」

「私も誘ってよぉ!!」


 ダイアくんが目的なら僕は場違いだろうけど、スーちゃんもいるのに置いてかれるのは癪だ!


「残念ながら、スティア様にヒカリ様は誘わないよう言われておりまして」

「なんでさっ!?」

「ヒカリ様がいると、ダイア様のための時間をヒカリ様に使いそうだと。全部手紙に書いておりました」

「ぐぬぬ……」


 言いたいことはわかるし、多分僕もコウを見てる時間をスーちゃんに使うと思う。


 残念だけど、お留守番するしか無さそうだ。



「シャルはいる?」

「メイド長なら見習いに浴槽の清掃を教えています」

「わかった! 私も出掛けるからシャルに伝えてね!」

「…………へ?」


 僕は自室に戻り、メイ様から貰った服を着て、鞄に財布を放り込み、そのままの足で屋敷を出た。


「た…………大変だぁぁぁ!!」


 ミューゼの大きな声が響いた気がするが、全部無視して下町へと駆け出す。





「久しぶりに一人で下町を歩くなぁ?」


 アリアちゃんと一緒だったり、前はカルラくんと一緒だったりで、なんだかんだ初めて一人で下町歩いた時以来だ。


 そう言えば、あの時はドーン男爵に絡まれて、スーちゃんとレオンに助けてもらったっけ。



「もう二年前か……」


 あんな思いは二度としたくないな……。


「ってダメダメ! 折角の一人歩きなんだから、楽しいこと考えないと!」


 嫌な思考を振り祓い、大きく伸びをして当てもなく町を歩く。


 そしてとある店の前で見つけたのはーー


「……ナツ?」


 久々に見た、ルカと双子のナツ・ナノディア。


 そして隣にいる男性は彼氏だろうか。二人で楽しそうにお店に入って行った。


「……」


 僕も流れに身を任せてお店に入る。まぁなんてことない服屋なんだけどね。


「どの世界でも、異性に服を見繕いたいんだな……?」


 なんというか、異世界のはずなのに前世と光景が同じだ。


 久しぶりに見たナツは、僕が見たことない華やかな笑顔をしている。


 そして隣の男性も緩みきった笑顔だ。


 ハイス子爵ももう関わって来ないってルカが言ってたし、のびのび交際を続けているらしい。


「いらっしゃいませ、どのようなものをお探しで?」

「え……えっと……」


 そして僕は危機に晒されていた。


(店員さんが……!)


 話しかけてきた!?


 おいポーン王妃とロンド陛下! なんでこの文化も持ってきてんだよ!


「いえ……特には……」


 そもそも何か買いたくて入ったわけなじゃい、ナツを見かけてつられて入っただけで……。


 待って、ただの冷やかしじゃん!?


 一人で勝手にアワアワしていると、僕に声をかける人が一人。


「あ、ヒカリ様!」

「ナ、ナツぅ!」


 にこやかに手を振っているナツは、まるで救世主のように見えた。

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