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160話 売り子で売り込み


 どうも、ヒカリちゃんです。


 現在ヒカリちゃん、露店の饅頭屋でバイトしています。


 ミカに『お灸を据えるだけ』って言われて超ビビってたんですけどーー




「それで何するんだ?」

「私は痛い目見てもらわないと嫌なのよ?」


 ミカは笑っているものの、血管が浮き出る勢いで怒っている。


「いや本当に退学になるのは嫌だぜ?」

「なら池に突き落とそうかしら?」

「どう考えてもアウトだろ」


 どうやら男の方がそれなりに良識がありそうで、意見が割れ始めている。


「なら学園戻って地下に閉じ込める?」

「今の時間人目がなぁ?」


 そんなこんなで全員意見を出し合いながら、時間が過ぎていく。


「そうだわ……?」


 そして最後にミカさんがいいことを思いついたと言わんばかりに僕を連れ去りーー




「ありがとね? こんな可愛い売り子がいてくれると、私も助かっちゃうわ!」

「いえいえ、本当に偶然の重なり合いなので……」


 現在、露店の売り子をやっているというわけで。



 ミカさん曰く「バイトなんて平民がやることよ? そんな人婚約者候補に相応しくないわ?」とのこと。



 結果、ただの慈善活動。


「どうしてこうなった?」


 本当に、どうしてこうなったんだろう。結果としては何もされずにラッキーだけど。


 あ、ミカさんたちは「こんなの見てられないわ!」って言って満足そうに帰って行きましたよ?


 ははは……。



「あれ、ヒカリさん何してるの?」

「なんか様になってるけど、本当になにしてるの?」


 そんな風にのんびり売り子をやっていると、クラスメイトの女子二人と遭遇。


「露店の売り子だよ?」


 適当にピースを作り、頑張ってますアピールしする。


「偉いねヒカリさん! じゃあ頑張ってるヒカリさんのために一個頂こうかしら!」

「毎度あり!」

「『まいどあり』?」


 饅頭を一つ渡し、その場でパクりと一口。


「あら、凄く美味しいわ! 中に入ってるのは……あんこかしら? 形が殆ど残ってないから食べやすいわね?」

「うんうんそうでしょ!」


 食べてないけど得意げに頷く。


 どうやらこし餡饅頭のようだ。


「私も一個貰おうかな?」

「毎度あり!」

「『まいどあり』ってなに?」

「『毎度ありがとうございます』よ!」

「今日初めてよ?」


 再び饅頭一個渡し、その場でパクり。


「凄く美味しいわね? 薄皮が残らないから食べやすいわ!」


 もう一人の女性のにこやかに饅頭にかぶりつく。



 そしてどうやら、女の子の学生二人が美味しそうに食べる風景は、いい客寄せになったようでーー


「僕にも一つください!」

「私は二つください!」

「只今用意しますね!」


 気付けば人が寄って来て、人気店みたいな列が出来ていた。


「おばあちゃん、饅頭が!」

「あぁ、もう売り切れちまうね?」


 休憩していたおばあちゃんがゆっくり立ち上がり、並んでいる人数を確認。


「全員一個ずつならピッタリだね?」

「なるほど……」


 僕は大きく息を吸い、並んでいるお客さんに声をあげる。


「「すみません、少し売れ行きが良過ぎてですね、今並んでいる人全員が買うには『一人一つ』が限界で、ご協力頂けると嬉しいのですが!」」


 並んでいる人の顔を見ると、誰一人困惑する様子を見せず「しゃーないか!」「危ねぇ!」と呟く人で溢れていた。


 どうやら全員に行き渡りそうだ。


 そんなわけでどんどん饅頭を一個ずつ売り捌き、最後一人のお客さんにも行き渡り、無事完売!


「って、一個余ってるよおばあちゃん!」


 数え間違えたのだろうか。


「あぁ、それはヒカリちゃんの分だよ?」

「え、私の分?」

「そうだよ? 頑張ってくれたんだから、ちゃんとご褒美はやらんとね?」

「おばあちゃん!」


 余った饅頭を受け取り、勢いのまま一口。


「甘くて美味しい!」

「当たり前だろ? 私がつくったんだからさ!」


 おばあちゃんも満足そうな笑みを浮かべている。


「なんか……いいね? 私もバイトしてみようかな?」

「ね? 家近くに出来そうなところあるかな?」


 クラスメイトの二人も感化されたようで、楽しそうにバイトの話をしている。



「そう言えば、なんでヒカリさんは売り子してたんですか?」

「えっと……流れで?」

「え?」


 まぁ経緯を話すのも面倒だし、ミカさん視点嫌がらせからだから、自発的ってことにしておいてポイントを稼いでおこう。

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