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158話 帰れない……です


 王城から出て、スーちゃんはそのまま帰宅。


 僕とシャイナちゃんは部活動があるので、学園に向かっていた。


「それでさ、先輩がーー」

「嘘! そんなにあるの?」


 のんびり雑談しながら校門を潜り、下駄箱に向かう途中、久しぶりに遭遇した人がいた。


「あら、図々しくもまだ『婚約者候補』に残ってる『ヒカリ・ウィンガート』じゃありませんの?」

「え………………誰?」


 綺麗なオレンジの髪を靡かせ、見下す視線で見つめてくる。


「あら、ミカ・オウレン侯爵じゃない?」

「げっ……シャイナ・ミクロライト……!」

「あ、ミカ・オウレンさん、お兄様がいつもお世話になってます」


 なんとなく反射的にフウさんのことでお礼をする。


「あ、いえこちらこそ…………って違いますわ!?」


 幼く手をブンブン振って顔をキリリとさせる。


「ヒカリ・ウィンガート伯爵さん、何故まだ婚約者候補に居座っているんですか?」

「ヒカリちゃんが婚約者候補に相応しいからよ?」


 ミカの問いかけに答えたのはシャイナちゃんだった。


「あなたに聞いていませんわ?」

「あらごめんなさいね? ヒカリちゃんが婚約者候補に残ってる理由すらわからない人だったから、反射的に答えちゃったわ? 聞きたいことが聞けて満足でしょ? どいてくれないかしら?」


 あなたとは話すことはないと言わんばかりに、会話を切り上げ、僕の手を引いてミカさんを横切る。



「なっ! まだ話は終わっていませんわ!」

「私たちは終わったわ?」


 ミカさんはハッと我に帰って追いかけてくる。


「えっと、私が知ってる情報だと、しつこい人は嫌いだってレオンが」

「なっ! そ、え!?」


 僕が最後に適当吐かしたら、ミカさんはその場で固まって言葉を失った。


 その間に僕とシャイナちゃんはせっせと靴を変えて上の階へと上がっていった。





「お、ヒカリちゃん偶然! それと、シャイナ・ミクロライト公爵令嬢か! とんだ大物と会ったな」

「フウさん、こんにちは!」


 シャイナちゃんと階段を登っている途中、ミカ・オウレンの兄で『新・音楽部』の副部長のフウ・オウレンと遭遇。


「丁度良かったわ? 貴方の妹さんがヒカリちゃんに難癖つけて来たのですけど」

「シャイナちゃん!」

「またか……全くあいつは……」


 シャイナちゃんはフウさんと知り合いのようで、呆れたような表情をする二人を横目に見るしか出来ない。


「ヒカリちゃん、何もされてない?」

「はい、シャイナちゃんが助けてくれたので!」

「申し訳ない、ミカには強く言っておくよ」

「あはは……」


 フウさんもそれなりに大変そうだ。


「それじゃあまたな」

「はい、また!」


 そのままフウさんは急ぐ足で階段を駆け下りていった。


 何か急用でもあるのだろうか。


「そういえば今日、部活の代表者会議があるって私のところの部長さんが言ってた気がするわね?」

「なるほど、じゃあフウさんは……遅刻か……」


 呼び止めちゃったよ……悪いことしたな。


「そっか『新・ダンス部』部長さんもいないなら私は帰ろうかな?」

「そっか、私はそのまま『平民服研究部』行くから、ここでお別れだね?」

「うん、また明後日ね!」

「気をつけてね?」


 僕は手を振って階段を降り、再び下駄箱まで降りて来た。



「ミカさんは……いるし……」


 早く帰りたいけど、ミカ・オウレンと、多分その取り巻きが下駄箱で居座ってる。


 帰りたいけど、絶対遭遇するよなこれ……。


 一旦教室に戻るが無難だろうか。


「あれ、ヒカリさん何やってるの?」

「ん?」


 そんな風に下駄箱でウダウダしていたら、二人の男性に声をかけられた。


「えっと……誰、だっけ」


 見事に見覚えのない二人だ。


「同じ『新・音楽部』なんだけど……」

「まぁヒカリさん最近教室にいないもんね?」

「あはは……えっと、名前、なんて言うの?」


 そもそも新人たちで自己紹介していないから、一方的に知られているだけなんだけどね。



「僕は『シイラギ・ミナモ』です。伯爵なので、気負いせず話してくれると嬉しいです」

「俺は『ソラ・タカノ』だ。俺も伯爵だから、気楽に話してくれ!」

「えっと『ヒカリ・ウィンガート』です。改めてよろしくね?」



 いや呑気に挨拶している場合じゃない! 帰れないんだよ今!


「それでヒカリさん何してるの?」

「えっと……」


 取り敢えず、一人でいても解決策なんてないので、二人にざっと事情を話すことにした。

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