156話 恋愛観
「……上手くいかねーな」
俺『リョウ・ミドロ』は変な違和感を覚えていた。
そりゃ、王族に比べたら侯爵なんてちっぽけな存在だが、伯爵から見たら侯爵は大きな存在だ。
「本当になんでだ?」
男爵や子爵、ヒカリちゃんと同じ伯爵の人間と同じように接したことがあるが、誰も嫌な顔一つしていなかった。
「今までの人も……『侯爵』だから我慢してたのか?」
いや、ルージーとの婚約を破棄したいことばかり考えて、いろんな異性と接して来たからわかる。
本当に嫌なら、今日のヒカリちゃんみたいに拒絶する。
ミドロ侯爵家は『公平主義』だから言いやすい。
「本当に嫌なら、ヒカリちゃんみたいな反応を…………ん?」
ヒカリちゃんみたいな……反応?
俺は、ヒカリちゃんが嫌がってるって察して強引に迫ってた?
「いや……まさか……いや……」
ならなんでさっきヒカリちゃんとオーラライト公爵から逃げたんだ?
「……俺、焦り過ぎか?」
ルージーとの婚約が嫌過ぎて、格の近い相手と関わるのに必死になり過ぎていたのか。
いや、そうだとしてもヒカリちゃんの存在は手放したくないほど大きい。
元々貴族なんて恋愛結婚出来るものじゃないし、どうせヒカリちゃんは伯爵だからレオン様に切られる。
その時に俺が上手く取り込めばいい。
「そうだよ、わざわざ恋愛感情を考える必要ないんだ」
俺は自分に言い聞かせ、再び前を向いて帰路を歩く。
リョウ・ミドロは気付いていない。
レオン第三王子は身分など関係なく、人柄で婚約者候補を三人残していることに。
*
「ただいま!」
「お姉様、おかえりなさいませ!」
ヒカリちゃんを家まで送り届けた後、私も帰宅してそのままダイアの部屋に直行した。
ウィンガート家で絆されてから、ダイアは張り詰めた緊張が解けたようによく笑うようになった。
「ダイア、勉強は順調?」
「もちろんですお姉様! はやく『おんがくきょういく』もならいたいです!」
そして、驚くほど勉学の成長が早い。
養子縁を組んだばかりの虚な表情は完全に見せなくなり、オーラライト公爵の息子として、誰にでも胸を張って紹介出来る。
「そして……お姉様とピアノがひきたいです……!」
「えぇ、習い始めたら一緒に頑張りましょ!」
「あ……はい!」
そしてメイド長のレイナからこっそり聞いた話だと、どうやら私のことが好きらしい。
執事長のハンリも「良き養子縁組を行った人は、義理の兄、姉に好意を抱きやすい」と言っていたし、今がまさにそれなのだろう。
「全く、リョウ・ミドロもダイアみたいに純情なら少しは違ってたのかな?」
「お姉様?」
「あぁごめん、学園の話よ? それより、今日もコウくんのところに行ったの?」
一瞬走った嫌な記憶を振り払うように話題を振る。
「はい! コウくん、すごく物知りで、たくさんおしえてくれます! 『おんがくきょういく』も始めて、コウくんとも一緒にピアノひきたいなって!」
「あらいいじゃない! 弾けるようになったら私にも聞かせてね?」
「勿論ですお姉様!」
ダイアの頭を撫でると、ねにゃりと笑みを浮かべる。
やっぱり、生徒会に入りたいのもそうだけど、私は部活動に入れそうにないな。




