155話 異物
「どうスーちゃん!」
骨組みだけだが、一通り歌とダンスを終えた。
「なんか、不思議な音楽ね? 味気ないっていうか」
「それは主旋律しか打ち込んでないからかしらね?」
アヤメさんがフォローを一つ。
「ダンスは、なんて言うのかしら、不思議ね?」
「『新・ダンス部』のダンスだからね?」
再びアヤメさんがフォローを一つ。
「私から言えるのは、ただただヒカリちゃんが可愛かったわ?」
「それが狙いなんだよ!」
「?」
狙い通りと言わんばかりに大きな声をあげるが、スーちゃんはあまりわかっていなさそう。
アイドルダンスなんて可愛く魅せてなんぼなんだ。
というかいきなりそんなダンス完成させたアヤメさんが凄い。
「私も最初は『新・音楽』と『新・ダンス』でこんなに親和性があるなんて思ってなかったけど、スティアちゃんの反応的に、狙い通りなのよそれが!」
「本当にわからないわ?」
まぁ歌って踊るアイドルが一つのジャンルなわけだし、親和性は抜群だろう。
「向こうで踊ってるダンスも不思議よね? あれも『新・ダンス部』の踊りかしら?」
「そうよ! ロンド陛下の遺産では『ヒップホップ』って書いてあったわね!」
「ふーん……」
スーちゃん的にはヒップホップの方が興味ありそうだ。
「ダイアなら向こうの方が似合いそうね?」
訂正、ダイアくんのことで頭が一杯だ。
まぁダイアくんに女性アイドルは……無理だね。
男性アイドルの振りとかアヤメさんなら作れそうだけど、それはいずれだ。
そんなわけで再び練習に勤しみ、一時間二時間と時間が過ぎていった。
*
「もう無理……!」
「お疲れ様? 今日はもう帰りましょうか!」
「はい……」
ヘロヘロになった僕は、体操着のまま荷物を必死に持ち上げ、子鹿のような足取りで体育館を出ようとする。
「ヒカリちゃんそんな状態じゃ危ないわよ! 送っていくわ!」
「え、いいの?」
「そんな状態で見送るのは怖いわ!」
最後まで見学していったスーちゃんが僕の手を取り、アヤメさんに別れの挨拶を告げて、学園を後にする。
当然どの部活も下校時刻には帰り始めるわけで、ちらほら人がいる。
そして、そんな中で遭遇した一人が。
「あれ、ヒカリちゃんも今帰り?」
「リョウさん……」
しつこく話しかけてくるリョウ・ミドロ。
「丁度良かった、話がある」
「何なに?」
僕は少し真面目なトーンで声を出す。
「スーちゃんも来てくれると嬉しいんだけど……」
「勿論よ! ヒカリちゃんの頼みなら同性婚も厭わないわ!」
「ちょっと落ち着いて?」
なんかあらぬ方向のボケをしてきたけど、一旦置いておき、三人で中庭のベンチに腰掛ける。
「それで話って?」
リョウさんは相変わらず物理的に近い距離感で話してくる。
「まず、距離近いから離れて?」
「え、なんで?」
「距離が近いからだよ!?」
こいつ話が通じない?
どこかでリョウとの関係見直すために話し合い必要だと思ってたけど、初手でこれはちょっと話し合い無理か?
「えっとね、レオンと関わる時もそんな距離近くならないし」
どう話したらいいか変わらないけど、正直この距離感は生理的嫌悪を抱かれてもおかしくない。
「そんなもん?」
「そんなものなの!」
「ふーん……」
「…………」
その「ふーん……」はなんだろうか。
何が気に食わないのだろう。
「じゃあもう話しかけない方がいい?」
「……え?」
「だって、迷惑だったでしょ? だったら話しかけない方がヒカリちゃんのためになるかなって」
「いや……そういうわけじゃーー」
「本当に!」
「っ……だから近いって!」
もう本当に無理! むかつく!
「まぁいいや! 話が済んだなら帰るね! また明後日ね!」
「はぁぁぁぁ……」
「……あいつ一回死んだ方がいいでしょ」
正直スーちゃんの意見には同意。
まぁ話は出来たし、明後日から距離感治ってくれてると嬉しいけど……。




