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154話 アヤメ・ブルーム元侯爵


 あれから一週間。


 毎日講義があって、部活動に勤しんで、それなりに充実している学園生活。



「ヒカリさんって統計学基礎ついて行けてる?」

「…………ギリギリ」


 スーちゃんやシャイナちゃん以外にも話せる人が増えてきて楽しい日々が続いています。



 そして王妃教育開始まで一週間。部活動で自分が定めた目標の時間まで二週間。


「充実してますねぇ?」

「ヒカリちゃん、どうしたの急に?」

「なんかちょっと楽しくて!」

「?」


 前の席のシャイナちゃんが不思議な子を見る目で首を傾げる。


「ヒカリちゃんの気持ちもわかるわ? 家で勉強するよりよっぽど楽しいもの!」

「だよね!」


 スーちゃんも充実感が顔に出ており、いつもよりニヤニヤしている。

 まぁ純粋に友達と毎日会えるのが楽しっていうのもある。


「でも明日学園休みだから、少し寂しいわ?」

「あ、そっか、スーちゃん部活入ってないから」

「私とヒカリちゃんは、午前だけ活動あるのよね?」


 休日は流石に自主参加だが、僕には時間がないので、練習できる時間は練習したい。


「待ってなにそれ聞いてないわ! 私も行く!」

「何部に……?」


 そしてスーちゃんは仲間外れが嫌なようで、一体何部に行くのかわからないが明日も学園に行くらしい。



 そんなわけで今日の講義も終わり、僕とシャイナちゃんはそれぞれ部活動に向かうわけだが。


「こんにちは」

「ヒカリちゃんこんにちは? あら、スーちゃんも一緒なのね?」

「何々? 新入部員?」


 既に教室にいたユウ様とフウさんがスーちゃんに視線を送る。


「ヒカリちゃんの部活ってユウ様いたんだね?」

「うん、部長さんだよ?」

「そっちの男性は?」

「フウ・オウレンさん、副部長だよ?」


 一方スーちゃんは二人に交互に視線を送り、その後教室を見回す。


「知らないものが沢山あるわね?」

「うん、全部楽器だよ?」

「全部楽器なの? どうやって演奏するの?」


 知らないことに興味深々なスーちゃん。


「……触ってもいい?」

「勿論よ?」


 トワ様の許可も取り、徐にギターを手に持つ。


「この細い糸で音を鳴らすのね?」

「そうだよ? これ『弦』って言うの!」

「弦?」


 適当に手で弦を弾き、不協和音が教室を響かせる。


「…………難しいわね?」

「だよね?」

「どうやって演奏するのかしら?」

「うーん、皆んなで?」

「皆んな? 連弾みたいな感じかしら?」

「うーん……」


 そもそも一人で完結するピアノと、複数人で音楽を完成させるギターじゃ勝手が違いすぎる。


『バンド』という言葉が存在しない以上、見てもらうが一番早い。



 そんなことを思っていたら、丁度他の部員も扉を開けて入室。


「ヤッホーって、あれあれ、知らない顔がいる!」

「本当だ、新入部員?」


 モモ・ナデシコ侯爵さんとフィア・セン子爵さん。


「丁度いいわ! 今から皆んなでスーちゃんに部活動見てもらいましょ?」

「え、私入らないわよ?」

「入らなくて良いわよ? ただ勝手に見せるだけだから!」


 トワ様はスーちゃんが入らないのを想定済みのようで、入部拒否を軽く流す。


「ヒカリちゃんはどうする?」

「私は良いかな? アヤメさんも待たせてるし」

「わかったわ? それじゃあスーちゃんーー」

「あ、私ヒカリちゃんについて行くから今度聞くわね!」


 トワ様の声を遮って、僕とスーちゃんは教室を後にする。


「スーちゃんの人でなしぃぃ!!」


 そんな声が廊下まで響いたが、お構いなしで去っていった。



「それで、ヒカリちゃんどこ行くの?」

「『新・ダンス部』の体育館」

「え、掛け持ち?」





「いらっしゃい! あれ、新入部員でも連れてきてくれ……ってスティアちゃんじゃない!」

「スーちゃんって呼んで! ってか、アヤメちゃんって『新・ダンス部』なんだね?」

「あれ、知り合いだったんだね?」


 なんとなくついて来たスーちゃんだったが、どうやら『新・ダンス部』の部長さんと知り合いだったそうで。


「寧ろヒカリちゃん知らないんだね? アヤメ・クリアライト公爵よ?」

「公爵…………公爵!?」


 四大貴族以外にも公爵がいたの!?


「私そんな器じゃないんだけどな?」

「でももう公爵よ?」

「え……どういうこと……?」


 一人混乱している僕だが、説明してくれないだろうか。


「えっと、去年から公爵の爵位を賜ってね?」

「な……なるほど……」

「ヒカリちゃんはもっと社会を知った方がいいわね?」

「うっ……」


 以前シャイナちゃんにも言われたな……それ。


「だから本当は『ブルーム』じゃなくて、陛下から賜った『クリアライト』って名乗るべきなんだけど……慣れないわね?」

「……」


 なんか、凄い会話だな……。


「それはともかく! ヒカリちゃんの練習よね!」

「あ、そ、そうです!」


 無理やり話が戻されたが、定めた期間まで二週間。意外と時間が足りてない。


「折角ならスティアちゃんもヒカリちゃんが何やるか見ていったら?」

「そうするわ!」

「な……なんか恥ずかしい……」


 そんなわけで、今日も『新・音楽部』のために『新・ダンス部』で練習をするのだった。

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