153話 アイドルダンス
「はぁ……はぁ……」
「ヒカリちゃん頑張るね?」
「はい……」
アヤメさんの好奇心に火がついて『録音』を流しながらマンツーマンでダンスを創作している。
しかし……。
「つ……つかれた…………」
体幹重視の社交ダンスとあまりに勝手が違いすぎる。
ポップダンスの機敏な動きについていけない。
「ヒカリちゃん、少し休憩しよっか!」
「は……はぃ……」
まだ三十分しか動いてないのに、もうへとへとだ。
因みに、制服から体操着に着替えています。
流石に制服で踊るのはね……嫌、だよね……乙女ですから。
「きつい…………はぁ……はぁ……」
子鹿のような足取りで体育館の隅に避け、寝転んで必死に呼吸を整える。
「不思議なダンスだよね? ロンド陛下の遺品では『ふりーすたいるダンス』って書いてあったけど、ふりーすたいるってなんだろうね?」
「はぁ……はぁ……なん、ですかね?」
整わない息で、満身創痍気味に相槌を打つ。
「というか……凄い元気……ですね?」
「まぁ五年も続けていればね?」
「なるほど……」
この人五年生の大先輩か。新人とは思っていなかったけど、さすが部長さんだ。
「というか、さっきの話聞く限り、踊りながら歌うんでしょ? 出来るの?」
「うっ……」
音楽流しながら創作手伝ってもらっているが、ダンスはチュートリアルでしかないんだ。
「無理かも……」
マジで舐めてた。踊りですらこんなままならないのに、歌もこなすなんて、前世のアイドルどうなってんだ。
「それなら、踊りを減らそうか」
「えっと……ん?」
「この部活は踊りのための部活だから、激しい動きが多いんだ。多分ヒカリちゃんの求めるダンスじゃないと思うんだよね?」
「はい……多分……」
そもそもダンスに詳しくないから、なんでもしっくりきてしまいそうだが。
「ちょっとその音楽一通り聴かせて?」
「わかりました……」
よく意味がわからないままボタンを押して音楽を流す。
「…………なるほどね?」
アヤメさんは納得したように何度も頷く。
そして大きなスピーカーをいじること三十分。
「ヒカリちゃん、音楽流すね?」
「はい……?」
すると、大きなスピーカーから、自分が録音した音楽が流れ出した。
いや、音楽の大事な主旋律だけが流れ出した!
「この魔道具便利だよね? 凄く大きいけど、演奏すれば少ない魔力で何度でも再生出来るんだ?」
「そんなものあるんだ……」
スピーカーっぽい見た目だけど、魔道具の中で音楽を作る『作曲』なんだ。
「これでしっかり練習出来るね? 途中再生も出来るし、一緒に頑張ろうか!」
「はい、お願いします!」
休憩も済み、アヤメさんとのダンス創作を再開。
とは言っても、僕はアヤメさんの動きを真似するだけでなんだけどね?
*
「こんな感じ?」
「す……凄い……!」
最初に行っていた激しいダンスと打って変わり、緩やかで可愛いダンスになった。
正直めちゃくちゃ魅入ってしまった。
「こんな感じで踊るの初めてだけど、これでいいのかな?」
「凄くいいと思います!」
寧ろダンスのバリエーションが殆どない世界で、こんなにアイドルダンスっぽくできるアヤメさんが凄い。
まぁアヤメさん的には物足りないダンスだろうけど。
「じゃあ今のをベースに……あと三週間だっけ? 一緒に頑張ろう!」
「おー!」
そんなわけでヒカリちゃん、この世界に『アイドル』の概念を持ち込めそう……かもしれません。




