151話 迷子のダンス
あれから一週間が過ぎた。
僕を妬む侯爵と鉢合わせることもなく、リョウさんとは話し合えていないものの、それなりに平和に過ごせていた。
しかし、僕にとって大きな課題が一つ。
「何から手をつければ……」
社交ダンスならともかく、アイドルダンスやポップダンスの踊り方なんてわからない。
そもそも前世でダンスなんて経験したことなかった。
(社交ダンスが出来るだけでイキがってたな……)
頑張りたいけど、頑張り方がわからない。
「マジでどうしよう……」
気付けば一週間過ぎている。
まぁ定めた目標達成出来なかったところで何か罰があるわけでもないけど……不完全燃焼が残るのは嫌だ。
そんな風にウダウダ悩んでいると、不意に『ガラガラ』と扉が開く。
「あれ、タロウさん!?」
「よっ」
「地上にもいるんですね?」
「お前は俺をなんだと……」
お久しぶりに会いました。タロウさんが入ってきた。
以前会った時は地下だったから気付かなかったが、中々綺麗な青い髪をしている。
「なんか唸ってたから見に来たけど、何してんだ?」
「ダンス、どこから手をつけようか迷ってて」
「ダンス? ここ『新・音楽部』だろ? なんでダンスなんだ?」
「タロウさんならわかると思うよ?」
僕がボタンを押して音楽を流すと、驚いたように聞き入っていた。
「懐かしいとすら感じるな…………やっぱヒカリさん、転生者だったのか」
「まぁね? タロウさん初めて会った時、防犯カメラがどうって言ってたし?」
「そんなこと言ってたか?」
「覚えてないんだ!」
多分、お互い気付いていたけど、上手く共有するタイミングがなかったんだ。
まぁ今はそんなことどうでも良くて。
「それで、相談があるんだけど」
「この曲振りだよな。俺多分出来るよ」
「…………本当に?」
「ヒカリさんは知らないと思うけど『新・ダンス部』ってのもあって、俺も部員なんだ」
「新・ダンス……もしかして……」
「ヒップホップからアイドルダンスまでよりどりみどりだ」
「おおぉぉ!」
ポーン王妃とロンド陛下はどれだけ前世の娯楽持ってきたんだ!?
もしかして他にもまだ何か持ち込んでいるのだろうか。
「というか、一人で練習してるんだな」
「うん、私もだけど『新入生が頼るのは先輩だけにしてね』ってトワ様が! おかげでリョウさんともあんまり話さずに済んでるし?」
「リョウさん……リョウ・ミドロだったな」
「うん……………………えっと、なに?」
「…………いや?」
「ちょちょっ!」
謎の沈黙の後、何故か急に頭を撫でてきた。一体なんなんだ。
「それじゃあ、そのアイドルソング仕上げるためにも『新・音楽部』の力借りるか?」
「勿論よ!」
僕は拳を高く振り上げ、タロウさんと共に『新・音楽部』の活動している体育館へ向かった。
*
「こんにちは」
「あらいらっしゃい! 新入部員?」
体育館に入ると体操着を着た人たちが、音楽に合わせてよく知る踊りをしている姿を見つけた。
「いえ、新入部員じゃなくて、少しお力を借りたくて」
「力を?」
「はい、タロウさんに言われて…………っていない!?」
「?」
え、どこ行ったの? いつからいなくなった? 会話しながらここまで来たよね?
「あ…………えっとですね……」
いないものはしょうがない。
とりあえず一人で『新・音楽部』でも最初の活動のこと『歌とダンスを同時にやりたい』ことを話した。
「めっっっっちゃ、面白そう!!」
「あ……あはは……」
すげぇ喰いついてきた。
「なんならその音楽ここのスピーカーで大音量で流そうよ!」
「そこまでは……」
ちょっと勢い任せすぎるけど、絶賛されたのは嬉しい。
「でも気になるのは事実だし、協力は惜しまないよ!」
「ありがとうございます!」
「あ、私部長のアヤメ・ブルームよ?」
「ヒカリ・ウィンガートです、よろしくお願いします!」
なんかタロウさんがいなくても淡々と話が転がり出した。
とはいえ、何すればいいのかわからない状況から脱せそうだ。




