150話 五分で死ぬ音楽
「録音って、音が取れるんですか?」
「うーん、取れるには取れるんだけどね?」
少し渋った顔をしている。まぁでないと廃棄予定なんて風に言わない。
「音を取れても、流すの魔力を使いすぎちゃうのよ。五分も流せば魔力少ない人なんてすっからかんになって死んじゃうわ!」
「おぉ……」
この世界では魔力がなくなる=死だ。
そんな商品、欠陥でしかない。
「でも、ヒカリちゃんって『筒』でしょ? だから扱っても問題ないから」
「た、確かに!」
マジでこの特異体質今日の今日まで忘れてた。僕には魔力なんてない、空気に漂う魔力だけで生命維持が出来ている。
「じゃあ、初日に弾いて下さった曲録音して!」
「えぇ! ヒカリちゃんが納得いくまで出来るわ?」
まさかオタクでもなんでもない元男がアイドルの概念を持ち込むとは思わなかったが、これも何かの縁だろう。
「じゃあ、人数揃ったら前と同じようにやってみよう」
「はい!」
フウさんも乗り気なようで、異性よく立ち上がって肩を動かしている。
因みにフウさんはドラムをやっています。超かっちょいいぜ。
*
それから少し待ち、昨日いたメンバー計九人と、新入生らしき人計五人が集まった。
どうやら他にも部員が十人ほどいるらしいが、掛け持ちやら私用やらで基本この九人でいるらしい。
「さて、それじゃあヒカリちゃんが歌った時みたいにやりましょう!」
「「おー!」」
新入部員は多分『新・音楽』のアイドルソング聴くのは初めてだし、どんな反応が返ってくるのか楽しみだ。
そんなわけで以前通り、指揮付きで音楽を演奏して僕が歌う。
ステップを踏みながら元気よく歌い、時々音を外しながら歌い切り。
新入部員は全員目を輝かせて口をぽかんと開けている。
「凄いねヒカリちゃん!」
「ありがとうございます!」
一方既存部員は全員で拍手してくれて、それなりに自己肯定感を上げてもらった。
そして新入部員たちはーー
「す……凄い!」
「凄く可愛い! 何今の歌!」
「や……か……凄い……!」
全員各々興奮している。
これが前世で流行ったアイドルソングの力か。素晴らしいな。
ただの真似事の歌と適当なステップなのにこんなに魅了出来るんだ。
「凄いよヒカリちゃん!」
「あはは、どうも?」
そしてリョウさんも素直に驚いていた。
初めて見たよそんな表情。普段のわざとらしい顔はどこへ行ったんだ。
「ヒカリちゃんこの音楽どこで知ったの?」
「えっと、王城でレオンと会ったときに、かな?」
「なるほど!」
適当言ったけど、納得してくれたなら別にいいや。
「まぁヒカリちゃんはこんな感じで歌ってたけど、この詩に限らずいろんな種類あるから、先輩巻き込んで良いからそれぞれ形にしてみよう」
「「はーい!」」
フウさんがまとめに一言添え、新入部員各々が歌詞が書いている紙を取り始める。
「ヒカリちゃんはどうする?」
「私は『録音』出来たので、自分のしたいように形にしてきます」
「わかった。隣の教室も『新・音楽部』の部屋だから、人が少ない時は自由に使って良いよ?」
「ありがとうございます!」
気にかけてくれたユウ様が場所の確保をしてくれた。
「あ、なら俺がヒカリちゃんとーー」
「ごめんね、新入生が頼るのは先輩だけにしてほしいな?」
そして僕と一緒になろうとしていたリョウさんの牽制もしてくれた。
マジ感謝。
そんなわけで僕とトワ様はせっせと隣の教室に移動して『録音』した音楽をーー
「どうやって流すんだこれ……」
そもそも録音出来てるのか?
適当に触ったり振ったりしていると、ユウ様がクスクスと笑い出した。
「横のボタン押すと流れるよ?」
「これですか?」
少しでっぱっているポッチを押すと、ちゃんと録音されいたようで、さっきの音楽が流れ出した。
「わわっ、凄い!」
ただ録音した音が流れただけなのに、凄い文明を感じる。
「ボタン離したら最初から再生になっちゃうから気をつけてね?」
「おぉ……」
残念、凄い文明まではまだまだ先みたいだ。




