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147話 自己紹介


「凄い! なんか、今までで一番しっくり来たよ!」


 指揮をしていた男性は興奮を抑えられずに手をとってジャンプする。


「ありがとうございます!」


 格式が高い音楽しかない世界だったが、アイドルソングはちゃんと受けそうだ。

 もしかしたらアニソンやロックも遺産のどこかに潜んでいるのだろうか。


「……」


 なんか、懐かしい気持ちになったな。


 ヒカリちゃんになって気付けば十二年。心も身体も馴染んだけど、やっぱり前世の記憶って大切なものなんだな。


「ヒカリ凄かったね、あんな音楽初めてだよ!」

「どうだったレオン!」

「何だろう、可愛かったって表現でいいのかな?」

「うんいいよ! ありがとう!」


 まぁ歌に合わせてステップ踏んでただけだけど、なんか充実感を凄い感じる。



「私この部活に入部する!」

「本当に!? ちょっと部長呼んでこないと!」


 正直、学校行事でこんなに楽しいって感じたのは初めてだ。


 その心に従うまま入部希望を声に出すと、指揮をしていた男性が大慌てで出て行った。


「副部長バカでしょ、入部届ならここにあるのに」

「今年新入生多いし、嬉しいんでしょ!」

「相変わらずですね?」


 どうやらあの男性は副部長で愛されてキャラらしく、副部長の話題で和やかな空気が流れている。



「それより、今のうちに自己紹介済ませちゃおう!」


 温度をとった女性が全員を手招きで僕らの近くに集める。


「部長も副部長も不在出し、私から!」


 皆んなを集めた女性が陽気に手を挙げ、自己紹介を始める。


「私は三年の『モモ・ナデシコ』よ! 一応三年の侯爵だけど、気軽に『モモ』って呼んでくれると嬉しいわ!」

「よ、よろしくお願いします……!」


(すげぇ、ナデシコって家名なんだ!)


 確実に前世と関係ないだろうけど、なんか感動だ。



「次は僕ですね。七年の『クラン・ナノディア』です」


 モモさんの隣の男性が続けて自己紹介を済ませる。


(区画名だから平民か。でもちゃんと馴染めてる)



「『ハクト・シロ』だ」

「…………」


(あ、侯爵の……)


 こっちは関わっちゃダメな侯爵だ。


「ごめんね! ハクトさんは三つ上ね?」

「よ、よろしくお願いします……」


 確かアリアちゃんとユアン様の婚約者候補で争ってたのって『シロ侯爵』だよな。


 ってことは、そのお兄様なのか。

 大方、アリアちゃんと仲良い僕を目の敵にしているんだろう。


 嫌な立ち位置だ。



「次は私ね! 初めまして『フィア・セン』よ? 二年だけど、気にせず話してくれると嬉しいわ?」

「よろしくお願いします!」


 フィアさんは子爵のようで、数少ない子爵の『公平主義』だ。

 この人とは沢山仲良くしよう。



 そんなこんなで残り三人の自己紹介も終わり、あとは部長と副部長を待つだけ。


「お待たせ! ってあれ、なんで集まってんだ?」


 戻ってきた男性は、おそらく部長である女性を連れており、二人して集合した光景にキョトンとしている。


「なぁっ!?」

「部長! 丁度自己紹介が終わって、あと部長と副部長だけなので、二人とも座って座って!」


 モモさんが元気に立ち上がって椅子を引き寄せ、クランさんが二人の背を押して座らせた。


「なん……で……!」


 一方僕は別のことで目を丸くして。


「ほら、部長から自己紹介!」


 ぱんぱんと手を叩いて急かすモモさん。多分この人がいなかったらこの部はもっと纏まりに欠けていただろう。


「はいはい」


 呆れつつも背筋を伸ばし、親しさから一変して凛々しい雰囲気を醸し出す。


「私は『新・音楽部』部長の『ユウ・オリスティナ』です!」

「だ……第一王妃様……」

「久しぶりねヒカリちゃん!」

「こ……こんにちは……」


 まさか第一王妃様が部長を。


 いや、レオンが入室した時に、誰も騒がなかったり、全ての興味が僕に移った時点で気付けたかも。


(いや、僕の観察眼のじゃ絶対無理だな)


「次は副部長ね!」

「全く、王妃様の後だと荷が重いですよ」


 胃を抑えて苦笑いしている男性も背筋を伸ばす。


「僕は『フウ・オウレン』五年だ。僕も侯爵だけど、あんまり身分気にせず関わってくれると嬉しいよ」

「オウレン……あっ……」


 学力テスト前にミカって人が絡んできたけど、その人も『オウレン侯爵』だった。


「……その様子だと、妹がとんだ迷惑をかけたみたいだね」

「あ……その……」

「ごめんね、ミカには強く言って聞かせるよ」

「あの……ありがとうございます」


 流石に『公平主義』のみの部活ではなかったが、それなりに楽しくやれそうだ。


 まだ新入部員には一人も会ってないけど、少し楽しみだ。

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