140話 寄り道
「それじゃあ、今日は私の番ね!」
「スーちゃん行ってらっしゃい!」
「楽しんできてね!」
今日の講義も終わり、スーちゃんがレオンと部活見学する時間。
「シャイナちゃんは昨日どうだったの?」
「私? 私はレオンとずっと平民服研究部で部活動してたわ?」
「あれ? 一緒に回ったんじゃ……」
「うふふ! もう入部届も出しちゃったわ!」
「早っ!?」
こりゃ初日のうちに入る部活決めてたな。
「本当は『写真部』創りたかったけど、試作品すら置いてなかったから、いつか自分で作るわ」
「写真部かぁ……」
写真というもの自体が世に広がってない世界だから、難易度はかなり高そうだ。
飲食店類は充実してるけど、機械が絡むものの発展は全然だし、写真をきっかけに科学が発展してほしい。
まぁなんで冷蔵庫は普通にあるんだってツッコミはしたいけど、大昔急ピッチで知恵を絞って作ったんだろうな……。
「いつか三種の神器揃うのかな……」
「ん?」
「ごめん独り言! それより、帰りどこか寄る?」
学校帰りどこかに寄ることなんて前世でやったことなかったし、もし出来るならやってみたい。
「私、行ってみたい場所があるんだけど……」
「シャイナちゃんの行ってみたい場所?」
*
「まさか、シャイナちゃんカフェに行ったことなかったなんて……」
「だ、だって、学園入学するまで下町も殆ど行ってないし、誰かと一緒じゃないと勇気が……」
「シャイナちゃんかっわいい!」
「揶揄わないで!」
これだけキラキラしてる高嶺の花のシャイナちゃんが、カフェに入るだけで緊張している。
そんなわけで二人で一緒に入店。
「いらっしゃいま……あれ! ヒイカちゃん……ヒカリ様? 今日はどっちかしら」
ハネットさんは僕を見るなり目をぱちくりして首を傾げる。
「いらっしゃい」
ロアさんは相変わらず貴族が苦手なようで、僕から少し距離をとっている。
しかしもう一人の人物に目が入ったようで。
「ミクロライト、公爵様……」
目を見開いて絶句している。
「え、ミクロライトって、あの……!」
「今日は身分関係なく訪れたので『公爵』だからと身構えなくて大丈夫ですよ?」
色々と察したシャイナちゃんが先打ちして一言添える。
「なら、今日はヒイカとして来たことにしよう! シャイナちゃん、下町では身分を隠すために『偽名』を使うんだよ?」
「偽名?」
シャイナちゃんは首を傾げている。というか、僕がシャイナちゃんに教える日が来るとは。
「ヒカリちゃんは?」
「私は『ヒイカ』よ! アリアちゃんは『アリィ』って言ってた!」
「なら……私は……『シイナ』かしら?」
「はい! ハネットさん、こちらシイナちゃんです!」
僕は満面の笑みで隣にいる『シイナ』ちゃんを紹介する。
「ヒイカちゃん……全部聞こえてたけど、とりあえずわかったわ!」
順応が早いハネットさんは、若干顔を引き攣りつつも、ちゃんと平民の娘二人として扱ってくれそうだ。
「ハネット……これは……」
「ロア、この子は『シイナ』ちゃんだって!」
「しかし、流石に公爵の方をーー」
「シ・イ・ナちゃんね!」
「…………シイナさんですね」
すげぇ胃が痛そう。
「はい、初めまして『シイナ』と申します!」
シャイナちゃん、もとい、シイナちゃんは平民とは思えない綺麗な礼を一つ。
「ハネットさんは順応早いですね?」
「まぁね! ヒイカちゃんの時もそうだけど、あの日以降ユアン様も時折身分を隠されて訪れるようになったので」
「なるほど」
なんというか、身分を隠した貴族の溜まり場みたいにならないといいけど……ロアさんの胃がもたなくなってしまう。
「それより、二人用の席空いてるから案内するわね!」
「ありがとうございます!」
ハネットさんに案内されて、ごく普通の、貴族用の別室でもなんでも無い一角に案内された。
「なんか、楽しみ!」
「シャイナちゃん、ウズウズしてる!」
いつもの可憐な姿と違い、十二歳より幼く見えるシャイナちゃんでも、隠せてないお淑やかさのおかげで、どう頑張っても平民には見えなさそうだ。




