138話 不気味な人
翌日。
今日も歩いて登校しています。
昨日みたいにルカと会えないかな、とか、ナツの顔久々に見たいな、とか思って歩いている。
しかし、残念ながら上手くは行かないようです。
「ヒカリちゃんおはよう!」
後ろから昨日も聞こえた不快な声が近づいてきた。
(明日から馬車使おうかな……)
そんなことを思っていたら、その人物の足音が隣にあった。
「おはよう……リョウさん」
リョウ・ミドロ侯爵子息。本当になんでこの人は僕に執着するんだ。
「昨日も歩きだったよね? 毎日歩いて来てるの?」
「明日からは馬車にしようか考えてます」
特に顔を向けることなく、ただの願望を口に出す。
「えぇそうなの?」
露骨にがっかりしている様子だが、本当にがっかりしてはいなさそう。
「そういえば、ヒカリちゃん部活はもう決めたの?」
「……」
前もその質問したよな? 自分の言ったこと覚えてないのか?
「まだ決めてない」
「ならなら、今日一緒に部活みて回らない?」
「明日……レオンと一緒にみて回る約束してるので……」
「…………」
そもそも部活入っても教えたくない。
少し静かになったリョウを横目で見ると、少しイラついてそうにそっぽ向いている。
「……そっかぁ残念! ヒカリちゃんがどんな部活に興味あるか気になってたから!」
「そう、ですか」
出会ってまだ三日目だし、お互いのことを知るのは大事だけど、一ミリもこいつに脳のリソースを割きたくない。
そんな風にリョウさんの雑談を受け流しながら学園まで歩き、ようやく教室へ。
「はぁ……」
無駄に疲れてしまい、椅子に座ってため息が溢れ落ちる。
「そんなに歩くのって疲れる?」
「……」
そうだった、僕の隣の席もリョウだった。
「大変だったら俺が家まで迎えにーー」
「大丈夫です……自分のことは自分でするので」
「そう?」
無神経にも程があるだろ。なんで知り合って一週間も経ってない人に迎えに来られなきゃいけないんだよ。
スーちゃんとシャイナちゃんは未だ来てないし、こんな朝からタロウさんが地下にいるのかもわからない。
レオンは教室にいるだろうけど、また『あれが噂の……』とざわつくのは避けたい。
アリアちゃんの教室や生徒会室がちょっと遠すぎる。
(早く二人とも来ないかな……)
そんなことを思っていたら、願いが叶ったようにそのタイミングでシャイナちゃんが到着。
「ヒカリちゃんおはよう!」
「シャイナちゃんおはよう!」
思わず声が跳ねて立ち上がり、シャイナちゃんが荷物を置いた途端「ちょっと付いてきて!」と急いで教室を出た。
「ど、どうしたのヒカリちゃん!」
適当な階段前で止まり、おっかなびっくりな様子で僕を見ている。
「無理ぃ……助けてぇ……」
「あぁ……リョウ・ミドロ侯爵さん?」
「うん……」
たった三日間の関わりで、一気に追い詰められてる。
いや貴族の腹の探り合いでもないのに追い詰められるってなんだよ。
いやでも僕は追い詰められてる。
「……確かに、不気味よね」
「シャイナちゃん……」
カルラくん、レオンから好意を持たれているから、なんとなくわかる。
あいつは、僕のことを好きじゃない。仲良くしたいという感じでもない。
それなのに、変に執着してくる。
この違和感が、気味悪い。
「流石に会ったことないタイプの人だから、私も注意しておくけど、無理しないようにね?」
「ありがとうシャイナちゃん……」
少しホッとして、一緒に教室に戻る。
リョウさんは昨日集まっていた人と仲良さそうに会話しており、こうやって外から見る限りは、一男子グループの一人として無難なんだよな。
一体何で、こんなに僕に執着するのだろう……。




