137話 揺れるカルラの恋心
「お姉ちゃん……どうしよう」
「カルラ……」
ウィンガート伯爵家から帰り、現在カルラの自室で落ち込むカルラの慰めをしている。
「僕、どうしたらいいの……?」
「それしか言ってないと何を相談したいのかもわからないよ?」
「うん……」
情け無くベッドで丸まるカルラは、九歳そのまんまにしか見えない。
まぁ普段はやけに大人っぽいから、こっちが等身大なんだけど。
「それで、またヒカリちゃんのこと?」
「うん……」
「全く……」
カルラはヒカリちゃんが好きだ。
最初は歳が近い女の子と関わる機会はヒカリちゃんしかなかったし、交友関係が広がれば何か変化があるだろうと思ってた。
しかし、確かに変化はあった。あったのだが……。
「……今日ヒカリちゃんと勉強している時に言われたんだ。『もし私が名前の知らない平民と結婚したら』って」
「そういえば、歴史の勉強してたわね」
貴族の起こした事件なんて歴史の中に山ほどある。
ヒカリちゃんは、その教材として自分を引き合いに出したのだろう。
「僕、わかんないって……言ったんだ」
「わかんない?」
「うん。レオン様なら『諦めるしかない』。でも……」
「カルラ……」
ベッドで俯くカルラは、この世の終わりみたいな深刻な顔をしている。
「ヒカリちゃんが……好きなんだ……」
交友関係が広がり、変化があったのだがーー
ヒカリちゃんみたいに『僕』を見てくれる人がいないと、言ったのだ。
ヒカリちゃんより好きな人がいない。
ヒカリちゃんより可愛い人がいない。
と。
カルラは九歳の身で、私も体験したことない『本気の恋』をしている。
「ヒカリちゃん、可愛いもんね」
「うん」
「明るくてふわふわしてて」
「うん」
「優しくて、立場じゃなくて人を見て」
「うん……」
私も、そんなヒカリちゃんが好きで、それはカルラも同じで。
カルラを狙う令嬢は数多くいる。
自分の弟ながら素直な性格は魅力的だし、身長も高くてヒカリちゃんの真似をして人当たりもいい。
はっきり言って、派閥関係なく奪い合うレベルでカルラは価値がある。
下手したら王族と間違えるレベルだ。
だけどカルラは、カルラを好く全員とちゃんと向き合った上で、ヒカリちゃんを超えられていない。
「本当、ヒカリちゃんってどうしてあんなに輝いて見えるんだろう」
嫉妬心すら湧かないほど澄んでいる。
ただただひたすらに良い子だったら偶像崇拝だっただろうけど、ちょっとお茶目なところや、ちゃんと苦手な人もいるし。
だからこそ、魅力的過ぎる。
だからこそ、隣にいるのに輝いて見える。
「お姉ちゃん、僕ヒカリちゃんが好き」
「うん」
姉として弟の恋は応援したい。婚約者もまだ候補の段階だから、チャンス自体はある。
でも、ヒカリちゃんも学園に入って忙しくなり始めるし、王妃教育ももうすぐ始まるし……。
「あ……」
「お姉ちゃん?」
不意に私は一つ良いことを思いついた。
別に不正ではない。しかし、殆ど利用出来ないに等しい制度がある。
「カルラ、今勉強がどのくらい進んでる?」
「えっと、もう終盤です」
「なるほど」
今からだと、来年に間に合わせるには相当頑張らないといけないけど、カルラは要領良いし、全然不可能じゃない。
「ねぇカルラ」
「何?」
「飛び級入学、してみない?」




