表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
136/147

135話 解ける心


 カルラくんの勉強を見ながらも、僕の視線はコウとダイアくんにも注がれていた。


「これはね『ニシキゴイ』って言うんだって!」

「ニシキ……ゴイ?」

「うん!」


 庭の池を指さして、色々と説明しているのだろう。


 かつてあの池ポチャした身からすると、もう少し池から離れて欲しいけど……。


「コウ、新しい友達出来て嬉しいのかな?」


 いつも誰かに教えて貰っているコウが、ダイアくんに教えている。


 ダイアくんとは心にも、物理的にも距離はあるものの、僕が見たことないような、少しほどけたような顔をしている。


「ねぇカルラくん」

「なんですか?」

「勉強終わったら混ざる?」

「うーん……」


 少し手を止めて二人を見つめる。


「やめておきます。僕はさっき怯えられたばかりで、まだ距離がほしいですね」

「そうなんだ……」


(…………ちょっと、焦ってるな僕)


 純粋にコウに友達が出来たのは嬉しいけど、スーちゃんの弟だから気になってしまう。


 転生前だったら絶対干渉しないのに、ヒカリちゃんの心がどうにかしたいって思ってる。


「難しいね」

「ヒカリちゃん、多分時間が必要なんだよ」

「うん、ありがとうね?」


 十二歳の心は、中々どうして乱れやすい。





「ダイア……!」


 ヒカリちゃんの弟のコウくんと遊んでいるダイアは、笑顔とは言えないものの、緊張感の感じられない、ほどけた笑みをしている。


「外でもあんなに笑えるように……!」


 家で笑う姿は時々見かけるけど、家の外で笑う姿は初めて見た。


 歳の近い友達が出来たからなのか、純粋にコウくんが人も心に敏感で、上手に関われているのか。


 どっちかわからないけど、心を開く足掛かりになってくれそうで嬉しい。



「ダイアくん、笑顔だね?」

「うん、これをきっかけに少しずつ心を開いてくれるといいのだけど……」


 まぁ今考えても仕方ない。ダイア自身が一つ一つのきっかけを大事に出来るかどうかだ。


「コウくん…………あれは、なに?」

「ダイア……!」


 そんなことを考えていたが、ダイアから質問を投げる姿を見て、思わず感動してしまった。


「どれ?」


 コウくんは目を凝らしてダイアの指を指した方角を見つめる。


「あれ…………わわっ!」

「ダイア!?」

「ダイアくん!」


 何を指しているか示そうと歩いた時、足を踏み外して池に転落した。


 私とアリアさん、そしてヒカリちゃんが急いで駆け寄ろうとする。


 丁度そのタイミングで、思わず足を止める出来事が起きた。



「えい!」

「コウ何やってるのぉ!!?」


 コウくんが、池に飛び込んだ。

 特にダイアを助ける様子もなく、ただ飛び込んだ。


 そしてヒカリちゃんが絶叫している。


「おねえさま、おちちゃった!」

「コウは自分から落ちたでしょ! ダイアくんは大丈夫なの!?」

「ダイア大丈夫!?」


 全員止めていた足を再び動かして池に集まる。


 周りにいた執事が慌てた様子で動いており、タオルの用意とお風呂の用意は心配しなくて大丈夫そうだ。


 しかし、ダイアの方は……。


「ダイアくん、おちちゃったね!」


 顔を上げたダイアが全員見回し、最後に隣にいたコウくんを見つめる。


 そしてーー


「っ! アハハハハ!」

「ダ、ダイア……?」


 ダイアが、大笑いし出した。


 家でも聞いたことがない大爆笑だ。


「ダイアくん、ニシキゴイにげちゃったね?」

「うん、にげちゃった」


 池の周りをキョロキョロしている二人は、もう落ちたことなど全く気にしていないようで、年相応よりちょっと幼く見える。


「おねえさま、手!」

「いやよ! 自分から落ちたんだから、自分で上がってきて!」

「けち!」


 コウくんは自力でから這い上がる。


「僕も!」


 そして、ダイアも真似をするように自力で池から這い上がる。


「ダイア、大丈……夫……かしら?」


 普段と様子の違うダイアに上手く声がかけられなかったが、とてもカラッとした表情をしている。


「大丈夫ですお姉様、元気です」

「ダイア……良かったわ!」



 もしかしてダイアに必要だったのは、時間だけじゃなくて、交友関係もだったのかもしれない。


 平民からいきなり公爵家になった心の辛さを、私じゃ理解できなかったところを、コウくんが解いてくれたんだ。


「全く、きょうだいそっくりですねヒカリ様」

「シャル! 私は自分から落ちてないわよ!」

「おねえさまもおちたの?」

「私は『落ちちゃった』の!」



 ヒカリちゃんとコウくんとメイドのやり取りを、ダイアは楽しそうに笑っていた。


「ダイア……!」


 なんだ、私たちが気付けないだけで、心ってすんなり解けるのね?


 とても素敵だわ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ