129話 食堂での集まり
「ヒカリちゃん、おは……大丈夫?」
教室に入って速攻シャイナちゃんに心配されてしまった。
「なんとか……」
「随分とげっそりしてるわね!」
スーちゃんは椅子に座って机にへばりつく僕の背中を摩る。
「……あの後あいつに何かされたの?」
「される訳ないじゃん」
疲れた元凶のリョウが無神経にもそんなことを呟いてきた。
これが一年続くのか、まだ三日しか経ってないのに。
「スーちゃん撫でてぇ」
「全く、いつからこんな甘えん坊になったのよ!」
そう言いつつちゃんと頭撫でてくれるあたりかなり甘々だ。
そこから他愛もない雑談を三人でして、なぜか時々リョウも混ざってきて、始業の鐘が鳴り響く時間になった。
*
授業は淡々と進み、新しい内容や、家庭教師時代の知識を必要とするものなど、楽しいには楽しけど……。
「…………」
リョウが時々チラッと見てくるのが無性にウザい。
本当にこの人はなんなの! 集中力が途切れるから邪魔しないでほしい!
そんな時間を一限〜四限まで過ごして、ようやく食事休憩の一時間がやってきた。
講義より圧倒的に隣の視線がしんどかったです……。
「シャイナ、ヒカリちゃん、食堂行きましょ!」
モヤついた嫌な気持ちを蹴っ飛ばしてくれるような、スーちゃんのカラッとした声が後ろから聞こえた。
「勿論よ!」
「よし行こう! すぐ行こう!」
僕とシャイナちゃんは立ち上がり、動こうとした時ーー
「スティア、シャイナ、ヒカリ!」
「「ん?」」
教室の外から男性の声が一つ。
そして同時にクラスの女子から歓声が上がる。
「レオン、どうしたの?」
「一緒に食堂に行こうかなって」
キラキラと効果音がなりそうな笑みを浮かべて手を振っている。
「いいじゃない! 早く行きましょ!」
「スーちゃん!?」
「スーちゃん早い早い!」
僕とシャイナちゃんの手を引いてせっせとレオンの下へ向かう。
「やぁ三人とも?」
「げっ! ユアン様」
「……ヒカリちゃんはいつまで俺を見て『げっ』って言うんだい?」
「ユアンが悪いわ!」
「アリアちゃん!」
教室の扉に隠れて見えなかったが、ユアン様とアリアちゃんも来ており、女子だけでなく、男子からの歓声も教室に響いた。
王族二人に、公爵家の一角が来たんだ。そりゃざわつくよな。
「さてそれじゃあ行きましょう!」
「あのーー」
そのままの勢いで全員で食堂に向かう。
リョウが何か言いたそうにしてたけど、聞かなかったことにしました。
そんなわけで六人で食堂に向かって席に向かったわけだが。
「もうあの人無理ぃぃぃ!」
「何があったの?」
席に着くなり僕は駄々をこねるような声を漏らす。
「アリアちゃん聞いてよ!」
そこから愚痴を吐く勢いでリョウのことを話す。
「ヒカリちゃん、面倒なのに目をつけられたわね?」
「まだ入学して三日目なのに……」
頭を撫でて同情してくれている。いやマジで皆んな揃って同情してくれてる。
「ミドロ侯爵か。俺の代の二つ上にリング・ミドロっていう男がいるんだけど、確かエイお姉様に切られて『ブライン』が婚約者に確定してたな」
ユアン様が頭から捻り出すように言葉を紡ぐ。
「エイ様……えっと、第二王女様が…………ブラインさんと!?」
シャイナちゃんのお兄様が、婚約者で確定!?
「シャイナちゃん! おめでとう!」
「え、私じゃなくてお兄様よ!?」
「ヒカリちゃん……」
なんか勢いでおめでとうって言ったけど、確かにシャイナちゃんの祝い事じゃないよな。
スーちゃんも少し呆れてるし。
いやでもめでたいものはめでたい。
「なんだなんだ? 何か面白い話でもしてたのか?」
丁度話題の人物『ブライン・ミクロライト』が一人の女性を連れてやってきた。
「お兄様、丁度今お兄様の婚約は決まったことを話していたのですよ?」
シャイナちゃんは隣にいた女性にも目を配り、嬉しそうに笑う。
(隣にいる人が……)
「なら、そちらの可愛らしいお方が、いつもシャイナの言っていた『ヒカリちゃん』ね!」
「あ、はい!」
急いで立ち上がり、少し呼吸を整えて身体を伸ばし、礼を一つ。
「初めまして。ウィンガート伯爵の娘『ヒカリ・ウィンガート』と申します」
「ご丁寧な対応、ありがとうございます!」
女性もニコリを笑い、姿勢を正して礼を一つ。
「初めまして。私『ポーンロンド王国』の第二王女『エイ・オリスティナ』と申します!」
綺麗な笑みを浮かべる女性は、第一王女のユウ様のようなフレンドリーさはないものの、シャイナちゃんを思わせる可憐さを纏っていた。
きっとシャイナちゃんは、スーちゃんのお母様やエイ様に憧れて今の空気を纏うようになったんだ。




