128話 一人登校の罠
翌日。
今日からアリアちゃんの迎えはなく、一人でのんびり学園まで歩いています。
こうやって景色を見てると、本当に大正浪漫と中世ヨーロッパが混ざってて変な感じだ。
昭和造りの家がカラフルで、しかも公園があるってどんな世界だよ。
絶対ポーン王妃かロンド陛下もこんな町並み作りたかったわけではないはずだ。
「あれ、ヒカリ様!」
「ん? ルカおはよう!」
そんな風に景色を眺めながら歩いていると、一人で歩いていたルカと遭遇。
「ナツは一緒じゃないの?」
「あいつは彼氏と一緒に向かってる」
「なるほど」
そういえばハイス子爵も関わってこなくなったって言ってたし、いい感じに二人の時間を積み上げているのだろう。
「そういえば見ましたよ? ヒカリ様一組どころか学年一位でしたね?」
「シャイナちゃんと同率だけどね? 二年以降も学力テストってあるの?」
「勿論ありますよ? 僕は今年もギリギリ一組に滑り込めました」
「凄いじゃない!」
アリアちゃんが『昨年のクラスの唯一の平民』って言ってたし、今年も唯一の平民かもしれない。
タロウさんもアリアちゃんに次いで二位って言ってたし、二人は同じクラスなのかも。
まぁタロウは確実に偽名だから名前出しても通じないけど。
「しかし、ヒカリ様のクラスに公爵が二人って、いくら平等の学園でも緊張しません?」
「ううん、しないわよ? スーちゃんもシャイナちゃんも仲良くしてくれてるし、公爵だからって堅くなる方が嫌いそうだもの!」
「え、ヒカリ様ってあの御二方とも知り合い!?」
「あ、言ってなかった?」
アリアちゃんと仲良いことは教えたけど、二人のことは言ってなかったか。
もの凄い目を丸くしてるし。
なんか反応が面白い。
「ヒカリ様すげぇ……公爵じゃん」
「伯爵だが?」
そんなこんなで二人で学園まで話しながら歩いて学園に到着。
「あ! ヒカリちゃんおはよう!」
平和に登校していた中、あまり聞きたくない声が僕の名前を呼ぶ。
「えっと、リョウさん、おはよう」
「?」
「おはようヒカリちゃん!」
駆け足で僕とルカに追いつきてグイと迫る。
(近い近いっ!)
ある程度親しいルカですら肩が当たるほど近づいて来ないのに。
「こちらの人は?」
ルカが若干不愉快そうな声をあげている。
「えっと、同じクラスになった人で」
「リョウ・ミドロ侯爵ですよ」
ルカに対しては若干雑な紹介を一つ。
「えっと、三年のルカ・ナノディアと申します」
戸惑いつつもお辞儀を一つして挨拶を返す。
「ナノディアって確か……区画の名前だから」
「はい、僕は平民です」
「区画?」
「あれ、ヒカリ様知らない?」
「何を?」
そこからルカにざっと説明してもらった。
平民は一部例外を除き、家名を持たない人が殆どなので『区画』という、前世でいう市町村を名乗っているらしい。
仮にルカが名古屋市出身なら『ルカ・ナゴヤ』となってたわけだ。
「全然知らなかった!」
そもそもそんなこと教えて貰ってない。
「……ずいぶんと仲良さそうだね」
そんなことをルカから教えて貰っていたら、露骨に機嫌悪そうにリョウが呟いた。
「いえ、そんなことはーー」
「そうね! 私が五歳の時から知ってるし、大切な友達だわ!」
ルカが急いでリョウにご機嫌取りをする前に、僕が遮って言葉を紡ぐ。
「えっと……ヒカリ様」
相当ルカの顔が真っ青になっているが、こいつにルカとは仲が良くないって思われて、ルカとの関係を蹴られる方が嫌だ。
「不思議なことはないでしょ? 学園は平等なんだから」
「そうだね、流石ヒカリちゃんだね! 俺もそう思うよ!」
むかつくほどカラッとした笑みで笑う。正直本当にそう思ってるのかすら疑問だ。
「私ちょっとルカと相談事あるから、先に行ってて頂戴?」
「………………わかった、また教室でね?」
手を振って別れを告げ、ルカと一緒に校舎から少し離れる。
「ヒカリ様、凄い眉間に皺寄ってる……」
「本当に嫌……」
なんであんなに嫌悪感が湧いてくるんだろう。




