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127話 カンザシ


「ポーン王妃様はなんでこんな…………えっと……可愛らしい服を作ろうと思ったんだろうね」

「あはは」


 すげぇ言葉に迷ったな今。


 扇情的ではない、しかし健全とも違うって感じだろう。


「じゃあもう着替えるね?」

「え!?」

「え?」

「あ、いや……」

「………………えっち」

「なっ! 違っ!」


 ボンと音を立てて顔が真っ赤になる。


「ほらほら、着替えるから!」

「わ、わかったよ!?」


 レオンを部屋から追い出してせっせと制服に戻り、乱雑にカバンに服を詰め込む。


 これはもう二度と着ません。



「レオンごめん、ちょっと揶揄った!」

「本当だよ……」


 再び呼び寄せて入ってきたレオンに開口一番謝罪をする。


「でもレオンって結構ピュアなんだね?」

「好きな子の可愛い姿は誰が見ても動揺すると思うよ?」

「確かに?」


 まぁ王族なんて言われてても、十三歳の男の子だ。


 前世だったら思春期真っ盛りの少年だし、そんなもんだろう。


「というか、ヒカリは慣れた相手には結構お茶目するよね?」

「そう?」

「そうだよ。スティアから聞いたよ? ドーン男爵とのいざこざの次の日、シャイナにお茶目したそうじゃないか」

「あぁ……そういえば」


 そんなことあったなぁ。懐かしい記憶が掘り起こされた。


「ミクロライト家でも、写真というものでイタズラされたってシャイナから聞いたよ?」

「あはは〜、懐かしい!」


 自分でも気付いていない性格だったけど、僕って好きな人にはお茶目なんだ。


 だから妹みたいって言われるのかな?


「僕にも慣れてくれたって事でいいのかな?」

「あんまり意識した事なかったけど、そうなんだと思う」


 まぁ婚約者候補だし、まだ慣れてなかったらそろそろ心開いた方がいい案件だった。



 そんな雑談を終えてポスっとソファに腰掛ける。


 校内歩き回ってセイナに絡まれて、思ったより疲れていたのか、ソファの柔らかさに身体が吸い込まれていく。


「そうだ、ヒカリに渡したいものがあったんだ」

「渡したいもの?」


 ソファに座る前に引き出しから一本のカンザシを取り出す。


「これは僕からの入学祝い」

「嬉しいけど、一昨日入学祝いパーティ開いたでしょ?」

「それとは別だ。僕が贈りたくて贈るもの」

「贈りたくて……」

「本当は入学式に間に合わせたかったけど、昨日の午後届いてね」


 レオンからカンザシを受け取りじっと見つめる。


 特別豪華なカンザシではないが、茶色と白と桃の球が飾られたシンプルなもの。


 スーちゃんと、シャイナちゃんと、僕の髪色だ。


「……ありがとうレオン、とても嬉しいわ!」

「よかった」


 溢れる笑みを抑えることができず、ニヤニヤしながら感謝してしまった。


「折角なら付けさせてくれないか?」

「勿論!」


 正直カンザシの付け方なんてわからないから、鏡越しにつけ方を学びたい。


 重たい身体を持ち上げ、鏡の前の椅子に着席。


 レオンは櫛を使って僕の髪を整える。


 手際の良い手捌きで肩口まで伸びていた髪が丸まり、贈っていただいたカンザシが髪を通る。


「……」

(なんもわかんねぇ〜)


 鏡越しじゃ何も見えないし手際良すぎてやり方わかんないし、どうやってつけるんだこれ!


「出来たよ」


(今度お母様かシャルに付け方聞くか)


 一旦思考を止め、鏡の前の自分をちゃんと見つめる。


「うん、すごく可愛い」


 少し横向いたりしてカンザシの具合を確かめる。


「凄い、全然カンザシ動かない!」

「動いたら落ちちゃうからね……」


 顔を引き攣らせるレオンを無視して、少し横暴に顔を振ってみるが、それでも全然動じていない。


「凄いね! 全然落ちないね!」

「普通カンザシ可愛いって感動するものじゃ……」


 振る頭を止めて、ようやくちゃんと自分の姿をみる。


 自分でも普段見ない纏められた髪は中々新鮮で、普段より大人っぽく見える。



「ありがとうレオン、大切にする!」

「っ!」


 パッと振り返り、カンザシに触れ、少し大人びた笑顔を向けた。

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