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124話 侯爵家の襲来


「さて、校内を回るって言ったけど、どこを回るんだい?」

「色々よ?」

「色々?」

「うん!」


 だってこの学園、校舎三つあるんだもん。


 大型デパートを凌駕する大きさの校舎が三つだよ? そりゃ色々見て周りたいでしょ!



「……正直に言ってもいい?」

「ん? 何が? 別にいいけど……」


 何か含みのある前置きをして、少し頬を掻く。


「ヒカリと二人になれて嬉しいなって、思ってる」

「へ!?」


 なんか突然恋愛っぽいこと言い出したけど!?


「前にも言ったでしょ? ヒカリが初めて王城に来た時からずっと好きだって。だから、少し嬉しいんだ」

「あ、そ、そうだね! あはは……! えっと、いい天気だね?」


 上手く反応出来ずに適当に話題を振る。


「勿論スティアとシャイナが好きじゃないってわけじゃないけど、僕が一番恋してるのはヒカリなんだ」

「そ……う、なんだね……」


 天気の話題なんて振ってる場合じゃなかった。この人やっぱり本気でヒカリちゃんが好きだ。


「だから、一緒に居れて嬉しいよ」

「う……うん」


 自分で自分の顔なんて見れないが、絶対に今真っ赤になっている。


「それじゃあ、校舎見て周ろっか」

「い、行きましょう……!」


 スタート前からもうお腹いっぱいだけど、取り敢えず歩き始めた。



 とは言っても変わり映えしない教室だったり、部活動に勤しむ人を見るだけの時間だが、意外とこういう時間が楽しかったりするんだ。


「なんか楽しそうだね?」

「うん。どこにどんな教室があるのか見るのも好きだし、頑張ってる人を見るのも好き!」


 前世では、頑張ってる人を見ても『いいなぁ』って妬むだけだったのに、凄い変わったな。


「あれ、レオン! 今生徒会じゃなかったっけ?」


 不意に後ろから声をかけられ、二人して振り返る。


「お姉様に追い出されてね、今は婚約者候補の一人と校内を見てるんだ」

「なるほどな? その子見たことないし、噂の『ヒカリ・ウィンガート』さん?」

「あ、はい!」


 名前を呼ばれて急いで礼を一つ。


「ウィンガート伯爵家の娘『ヒカリ・ウィンガート』と申します」

「これはご丁寧に。僕はオウ侯爵家の息子の『エイラン・オウ』と申します」

「オウ侯爵……」

「ご存じですか?」

「はい、お父様から何度か耳にしまして」


 オウ侯爵といえば、数少ない『公平主義』の貴族だ。偶々とはいえ、こんなところで出会えるとは。


「しかし、噂通りの可愛らしい子だな? な、レオン」

「うるさいぞエイラン!」

「ふふっ!」


 仲良さそうに突き合っている二人は、年相応の男子で少し微笑ましい。


「それじゃあ俺は部活に戻らないとだし、またどこかでお会いしましょうヒカリさん?」

「はい! またいずれ」

「レオンもまた明日な?」

「じゃあね」


 軽く手を振って別れを告げる。


「あの人って『公平主義』の……」

「そうだよ。侯爵の派閥争い『公平主義』の筆頭の家。まぁ派閥がどうのって言ってるけど、学園では平等だからね」

「だね?」


 いずれ深く関わる可能性もあるけど、今は『同じ派閥の人と知り合えた、ラッキー』程度に思っておこう。



 そんなわけで校内歩きを再開する。


 面白いことに裁縫室や美術室、音楽室が複数あったり、橋のような廊下があったり、本当に迷路のような学校だ。


 それがまだ校舎一つ分。

 そんなのがあと二つもあるんだ……恐ろしいですね。


「なんか、楽しい!」

「歩いているだけなのに?」

「だけでも楽しいのっ!」

「そうか」


 不意にレオンが頭を撫でて、愛しむように僕を見つめる。


「レオン?」

「いや、昨日監禁未遂にあったから、学園が嫌になってないか心配だったけど、そうでなくて安心したよ!」

「それくらいじゃ嫌にならないよ! スーちゃんもシャイナちゃんもいるし、レオンも居てくれる」

「ヒカリ……!」


 それに、前世の特別に憧れるだけの学校生活より、ずっとずっと楽しい。


「「……」」


 不意に会話が途切れ、変な沈黙が僕らを襲う。


 周りは部活動とかで騒がしいけど、辺りに人はいない。


「ヒカリ」

「レオン……?」


(あぁこれ……)


 これが場の空気ってやつか。


 徐々にレオンの顔が近付いてくる。


 徐々に早くなる鼓動に対して、かなり落ち着いている自分がおり、流れに身を任せて目を閉じる。


 がーー


 世の中上手く行かないものでして……。


「あら、そこにいるのはレオン様ではありませんか!」


 あまりに不快で嬉々とした声が僕とレオンを遮る。


「っ!」

「……君は」


 急いで顔を遠ざけ、声の主を見つめる。


「セイナですわレオン様!」


 セイナ・スカラと、取り巻きらしき五人の女子。


「あら、そちらにいるのは?」


 一人の女性が僕を見つめて目を細める。


「チュリー、あなたと同じ『伯爵』の『ヒカリ・ウィンガート』よ?」

「へぇ、これが噂の『伯爵令嬢』ねぇ?」


 どうやら僕を見つめる人も伯爵らしく、値踏みの視線が強く刺さる。

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