117話 担任の講師
スーちゃんが教室の扉を開け少しすると、騒がしかった教室は息を呑むように静かになった。
それもそのはず、公爵二人と幻の人が入って来たんだ。
自分たちの会話よりよっぽどインパクトのある三人だ。
「あ、これ順位がそのまま席順なのね?」
スーちゃんが黒板に書かれた座席表を見つめて軽快に呟く。
「そうみたいだね? 私の後ろはヒカリちゃん!」
「なら私の後ろはスーちゃん!」
「私の前にはシャイナとヒカリちゃんね! いい席じゃない!」
三人がが縦一列に配置されている。
答案の回答で席まで決める時間がなかったのだろうが、結果的に最高の席になってくれた。
しかし、残念なお知らせも一つある。
「あれ、ヒカリちゃん隣の席なんだね!」
「あ……そうみたい、だね?」
リョウ・ミドロ侯爵が隣の席だった。
「俺さ、友達全員下のクラスに行っちゃったから知り合いいなくてどうしようかと思ったけど、ヒカリちゃんがいて良かったわぁ!」
「そ、そうなんだね……?」
(あなたもそっちに行ってくれて良かったんだよ?)
ていうか、六人五列でクラス三十人いるのになんでこいつと隣なの?
あなた同学年で八番目の点数ってマジ?
「ヒカリちゃん、この人誰?」
「えっと……昨日の学力テストで隣だった人……」
「ふーん」
僕が若干嫌そうにしているの察してくれたのかな? すげぇ興味無さそうな返事をしている。
「昨日ヒカリちゃんミカに絡まれてたもんな?」
「あ、あはは……ありがとね……」
押し付けがましい。ウザい。
遠回しに『助けてくれてありがとう』って言わせんな。
「そちらは『スティア・オーラライト公爵』様だね」
「わざわざ公爵って言わなくていいわよ。学園は平等なのだから」
「そうだね、俺もそう思うよ。席近いしよろしくね『オーラライト』さん」
「えぇ、よろしくね『ミドロ』さん」
なんかすげぇバチバチしてるけど、多分僕との会話のせいだよな。
スーちゃんのあんな露骨に嫌がる姿初めて見た。
六歳のお茶会の時は侯爵なんて眼中になかったのに。
そしてリョウさんは平等を謳ってるとはいえ、公爵相手に物応じてなさ過ぎて凄い。
「全員席に着きなさい」
そんな険悪な二人を切り裂くように大人の声が教室に響く。
立っていた生徒もゾロゾロと席に着き、教室が静かになる。
「今日から君たちの担任になる『ジョウ・カンス』だ。子爵の出自だが、身分関係なく学びを求めるもののためなら尽力するつもりだ。今年一年よろしく」
よく張った声で淡々と呟く担任の先生は、長年勤めてきたような威厳のある男性だ。
「早速だが、全員に今年一年使用する教材を配る。前から順に回すようにーー」
そんなこんなで全員に教材が行き渡り、その後講義の説明だったり色々説明している間に、講義時間の四十五分を知らせるチャイムが鳴り響く。
「取り敢えずここまで。この学園では四十五分の講義、十五分の休憩の繰り返しで行うので、時間の把握は行うように。以上!」
そこまで言い切って教室がざわめき始める。
そして僕もスーちゃんに話しかけようと後ろを向いた瞬間ーー
「『ヒカリ・ウィンガート』少しいいか」
「え……え!?」
何故かジョウ先生にご指名を頂き、急いで立ち上がって先生の元へ駆ける。
「覚えていなかったらいいんだが『ハイス子爵』って知っているか?」
「あぁ……覚えていますよ?」
いや寧ろたった一度聞いた名前だけど忘れるはずがない。
最後は反省したけど、ナツに執着して立場に物を言わせた奴。
「あいつは俺の息子でな」
「なるほど…………なるほど!?」
ハイス子爵が、ジョウさんの息子!?
つまり『ハイス・カンス子爵』ってことか!
すげぇ名前だな!?
「俺の息子が貴女とそのご友人に無礼を働いたと聞いてな。申し訳ないことをした」
「いえ! もう解決したことですし、あれからナツやルカから何も聞いてないので、トラブルも起きてなさそうですし……」
自分が勝手にやったことってハイスも言っていたし、これ以上責めるのも居た堪れない。
「そうか。寛大なお言葉をありがとうございます」
「いえいえ全然……」
「すまない、用事は以上だ。俺の自己満足に付き合ってくれてありがとう」
「はい!」
少しだけ逃げるようにして席に戻ってきた。
とても良い人なんだろうけど、初対面であれはびっくりしちゃいましたね。




