111話 追放されました
「シャイナちゃん綺麗……!」
「流石ね?」
踊り始めた二人は、スーちゃんの時の熾烈極まるダンスとは違い、可憐や美しさを追求したダンスだ。
言うなれば、高校生がやる現代ダンスのようなスーちゃん、フィギュアスケートのような競技ダンスのシャイナちゃんって感じだ。
「同じ社交ダンスでこんなに差が出るんだね……?」
こっちはこっちで、あまりの美しさに魅入ってしまう。
これが二人の公爵のダンス。
淑女教育でなんとなく習った僕とは大違いでビックリだ。
(マジでこの後に踊りたくねー! なんで最後でいいって言ったんだ! どう考えても僕が前座だろ!)
「ヒカリちゃん? どうしたのくらい顔して」
「なんか……二人とも凄いなって」
「あはは! 本当に急にどうしたのヒカリちゃん!」
スーちゃんは僕の変貌を不思議そうに笑っている。
「あの……!」
「ん?」
「ヒカリ、さん、で、あってますか?」
「そうだけど、あなたは?」
不意に知らない声が僕の名前を呼ぶ。
少しおどおどした様子と消えそうな声をしている女の子だ。
僕より少し背が高いのに小さく見える。
「あの、あちらで『アリアさん』が呼んでまして……」
「アリアちゃんが?」
「はい……」
なんでここから呼ぶんだろう。新入生と二年生と生徒会以外中に入れないのかな?
そんな疑問もあったが、アリアちゃんが呼んでるなら一旦いくしかない。
「ごめんスーちゃんユアン様、ちょっと言ってくるね?」
「わかったわ?」
「了解」
スーちゃんは手を振り、僕は声をかけてきた女の子の後を追い、社交界の重たい扉を開けて外に出る。
「凄い防音だ」
扉を閉めたら中の音や声が全然聞こえなくなった。
そして少し進んで女の子は足を止める。
「あの、アリアちゃんは?」
「ふふっ! あはははは!」
「ん?」
何故かその場で正気を失ったように高笑いを始める。
「やっぱり魔法って便利よね? こんなに簡単に髪色も声音も変えられるもの!」
先ほどとは違って堂々とした様子で振り返る。
「あなた……は……え?」
全く事態が飲み込めない。なにこれどういうこと?
「お久しぶりね『ヒカリ・ウィンガート』さん。まぁあなたは私のこと覚えてないでしょうけど」
カツカツと音を立てて歩いて社交界の扉を塞ぐように立つ。
「あなた……は……?」
思わず後退りをするほどのオーラを放つその女性。
不意に魔法が切れて、水色の髪へと変貌し、青銅のようなオレンジの瞳が僕を見下す。
「改めて自己紹介しますわ? 私、スカラ侯爵家の令嬢『セイナ・スカラ』と申しますわ?」
「セイナ……スカラ侯爵……!」
「レオン様の婚約者候補を名乗る『ひっつき虫』を取り払いに来ましたわ?」
「流石セイナさんね?」
「え……あ……!」
扉の影に隠れていたのか、もう一人セイナの隣に並んだ人がいた。
「お久しぶりね? ヒカリ・ウィンガート『伯爵』?」
「……ルージー、さん」
「まぁ! 覚えててくれて嬉しいわ?」
わざとらしく手を叩いて喜ぶ。
あまりにタチが悪い。そして状況が悪過ぎる。
「ねぇ、ちょっとついて来なさい!」
「っ!」
セイナは高圧的に、そして無理やり手首を掴み、ルージーと共にどんどん階段を降りていく。
今は取り敢えず流れに身を任せるしかない。
どれだけ声を上げたところで社交界には声が届かないし、人っこ一人の気配もないから多分人もいない。
そんなこんなでセイナに連れ去られて来た場所はーー
「地下なんてあるんだ……」
ただただ階段を降りるだけじゃ見つからない、小さな隠し部屋の先にあるような場所だ。
そしてそこに『ドンッ』と放り投げられ、捨て台詞ひとつなく扉を閉められ『ガチャリ』と鍵が閉まる音がした。
「いてて……」
ヒカリちゃん、社交界から追放されました。
良かったね、前世で憧れた追放ものだよ。
ははは……。




