110話 社交界
現在、スーちゃんとレオンが音楽に合わせて踊っています。
皆んなが想像するあれを踊ってます。
「スーちゃん凄く綺麗!」
「ね?」
他にもたくさん踊っている人はいるけど、確実に目を惹くのはスーちゃんとレオンだ。
ダイナミックに踊るスーちゃんは、可憐とは程遠い、まるでレオンとダンスで熾烈な争いをしているようで、その勢いに目が離せない。
スポーツかな? って思うけど、完全にスポーツだよ。
「あ、ヒカリちゃんみっけ!」
そんな風に三人で魅入っている中、不意に声をかけられて声の主を見る。
「あ……えっと、リョウさん、でしたね?」
学力テストの時グイグイ声をかけてきた人だ。
まぁ新入生のための社交界だし、いるのは当然だし遭遇だってするけど、向こうから声をかけてくるとは。
「リョウ、この子が噂の?」
「そうだよ『ヒカリ・ウィンガート伯爵令嬢』だ」
「超可愛いじゃん!」
他にも男子を二人連れており、それぞれから値踏みのような視線を感じる。
隣にシャイナちゃんとユアン様いるのに声かけるの度胸すごいな。
「ねぇ、もうダンスは踊ったの?」
「まだこれからで、今少し待ってるの」
正直この人と会話するの変に圧強くて嫌なんだよな。
「そっか。レオン様の婚約者候補だもんね? でもーー」
「?」
少し含みを感じる間をおく。
「ヒカリちゃんが最初じゃないんだね? 本当に好きなら最初に踊らない?」
「私が譲ったの。一緒に踊ってくれるなら最後でも良いって」
少しムッとしてしまい、思わず声が跳ねる。
「そっか、余計なお節介だったね? ごめんね」
「…………まぁ良いですけど」
なんだろう、元男の魂が『こいつイカれてる』って叫んでる。
前世にいても関わりたくないタイプだ。
「ならレオン様のダンスが来るまで俺たちと一緒に周らない?」
リョウが連れてきた男の一人が嬉々と声を上げる。
「あらごめんなさい。ヒカリちゃんこの後私とスーちゃんの三人で周る予定なの!」
徐々に応えるのが面倒臭くなってきたところで、シャイナちゃんの助け舟が突撃してきた。
「……君は一体?」
ようやくシャイナちゃんの存在に気付いたのか、少し不愉快そうな声を上げる。
「シャイナ・ミクロライトですわ」
「……公爵家」
「えぇ! まぁ学園では公爵なんて肩書にもなりませんけど。ここは平等で公平な場所ですから」
自らお互いの肩書なんて関係ないと同じ土俵に降りてきた。
「そうだね、俺も同意見だ」
その割には声に緊張が走っている。
「……えっと、ごめんね! シャイナちゃんも言ってたけど、この後一緒に周るから!」
「そっか、それは残念」
ため息を一つ吐き「またいつかね?」と手を振って三人とも去っていった。
「クソ野郎ですわね?」
「正直……同感」
シャイナちゃんから汚い言葉が吐かれたから、よっぽどやばい人なんだろう。
「変な奴に目つけられたな?」
「ユアン様も助けてくれて良かったんですよ?」
「そうしたかったけど、別に誘うのはダメじゃないし、あそこで入ると『私情で介入した』って言われる可能性があってな」
「なるほど、生徒会って大変ですね?」
こればかりは僕が納得するしかない。シャイナちゃんが介入してくれたから事なきを得たし。
まだダンスは踊っている最中。
スーちゃんやレオンに見られて二人の時間邪魔しなくて良かった。
そこから先は大きなトラブルなく、スーちゃんとレオンのダンスに魅入るだけ魅入り、心地よい時間を過ごせた。
そして二人のダンスは終わり、一礼して僕たちの下へ戻ってきた。
「スーちゃんすごかった!」
「当たり前よ!」
髪をファサっと靡かせ、誇らしげな笑みを浮かべる。
「レオンもお上手でしたよ?」
「ありがとう。正直スティアが上手過ぎて気後れしてたけど、なんとかついていけたよ」
苦笑いしているものの、確実にレオンも相当上積みだ。
「さて、お次は私がお隣頂きますね?」
シャイナちゃんが僕らに一礼してレオンの手を取る。
「楽しんできてねシャイナちゃん!」
「ふふっ! ありがとうヒカリちゃん!」
音楽のインターバルも束の間で、再び流れ出した曲に合わせて踊り始める。




